2002年から厚生労働省は母子手帳に「葉酸摂取について」を任意記載事項として追加をしましたが、母子手帳に葉酸の必要性について書かれていることを知っていましたか。
妊娠中は症状から全てを読むほど余裕がないなどの理由から、書かれていることについて知らない人もたくさんいると思います。
そこで、今回は母子手帳に書いてある葉酸について解説していきます。
妊活・妊娠中に
必要な「葉酸」を安心・安全に
※JNFは日本ニュートリション協会のことです。
妊娠前後に摂取すべき葉酸は、ママにも赤ちゃんのためにも欠かせない栄養素。妊娠時は葉酸の他にもビタミンやミネラルが必要になり、厚労省も葉酸サプリを推奨。そんな葉酸サプリを専門家が評価!あなたに合ったものをチョイスしましょう。
母子手帳の様式とは?どこに葉酸の重要性が書かれている?
妊娠してから貰う母子手帳は「省令様式」と「任意様式」の2つの様式で構成されています。それぞれ妊娠中の記録や注意点など大事なことが書かれているので把握しておくことが大切です。
また、母子手帳には葉酸の摂取を推奨していることが書かれていることをご存知ですか。書かれていることは知っているけど、実際にどのように書かれているのかは知らないという人も多いのではないでしょうか。
葉酸について書かれていることは知っていたけど、確かに内容は知らないな。
それじゃあ、母子手帳の2つの様式と、葉酸の推奨はどこに書かれていて、どのような内容か、なぜ必要なのか解説していくぞ。
省令様式
省令様式とは厚生労働省が定めた全国共通の様式になっています。書いている内容は妊婦さんの健康状態や職業や環境など、妊婦さんの状況についてです。
その他にも妊娠中のお腹の中の赤ちゃんの経過状況や検査、出産後の状況、赤ちゃんの健康などについて「記録」をする内容になっています。
担当の医師が記録する以外にも自分で記入するところがいくつかあります。自分と赤ちゃんの健康のためにも記入できるところはしておきましょう。分からないところがあれば医師に聞くといいでしょう。
任意様式
任意様式とは各自治体によって文字通り任意で作成することができます。各自治体によって自由に作られるのですが、厚生労働省が出している作成例があるので大まかな流れは一緒です。
大まかな流れは一緒ですが、一応自治体のお問い合わせ先など、気になることや違いなどが書かれているかチェックしておくといいでしょう。
任意様式に書かれているのは妊娠中から産後までの食事や病気、健康での注意点。その他にも6歳までの子供の注意点、育児や生活面の不安などを相談する電話先などがあります。
小児救急電話相談事業はメモしておこう
任意様式の中に書かれている「小児救急電話相談事業」は大切です。
夜間や休日に子供が急に病気になってどう対処すれば良いのか分からない、救急車を呼ぶべきなのか分からないと迷ったときに電話すると、医師や看護師から症状に応じた対処法と対応の仕方をアドバイスしてもらえます。
電話番号は「#8000」です。全国同一の短縮ダイヤルとなっています。母子手帳を貰ったら何かあったときのために付箋を貼っておくか、メモをして分かりやすくしておくといいでしょう。
葉酸摂取が書かれているのは「任意様式」
厚生労働省の「母子手帳(任意様式)」の作成例の中に「妊娠中と産後の食事」というページがあります。その中の項目は以下のようになっています。
- 妊娠中の体重増加について
- 貧血の予防
- 妊娠高血圧症候群の予防
- 丈夫な歯や骨を作る
- 妊娠中の葉酸摂取について
- 魚介類に含まれる水銀
- 妊娠中の食中毒の予防
上記の項目は病気の予防や体の健康についてがほとんどでですが、唯一栄養素「葉酸」の摂取が記載されています。
母子手帳に書かれているものはどれも大切なものです。健康のために必要な栄養素はたくさんありますが、その中で葉酸だけが書かれています。つまり葉酸がどれだけ重要か分かりますよね。
葉酸摂取について書かれた中身
「妊娠中の葉酸摂取について」でどのようなことが書かれているのか気になる方もいると思います。内容は以下になります。
二分脊椎などの神経管閉鎖障害の発生を減らすためには、妊娠前から妊娠初期の葉酸の摂取が重要であることが知られています。
葉酸は、ほうれん草、ブロッコリーなどの緑黄色野菜や、いちご、納豆など、身近な食品に多く含まれています。日頃からこうした食品を多くとるように心がけましょう。葉酸の添加された食品やサプリメントもありますが、とりすぎには注意が必要です。
※神経管閉鎖障害とは、妊娠初期に脳や脊髄のもととなる神経管と呼ばれる部分がうまく形成されないことによって起こる神経の障害です。葉酸不足の他、遺伝などを含めた多くの要因が複合して発症するものです。
このように「神経管閉鎖障害」と呼ばれる、妊娠初期に起きる障害のリスクを低減するために摂取することを推奨しています。
ここで注意して欲しいのが”完全には予防できない”ということです。引用文を見てもらうと分かるとおり「発生を減らす」と書かれています。あくまでも可能性を減らすだけで0%になるわけではないことを覚えておいてください。
葉酸を摂取しても完全に予防できないんだね!
そのため健康的な赤ちゃんを生むためには葉酸だけではなく、食事バランスや生活リズムなども重要になってくるのじゃ。
なぜ「神経管閉鎖障害のリスク低減」と記載しないのか?
項目を見てもらうと葉酸以外は「貧血の予防」や「食中毒の予防」と病気の予防が書かれています。
しかし、なぜか葉酸のところだけ「神経管閉鎖障害のリスク低減」とは書かずに「妊娠中の葉酸摂取について」と書かれています。
内容を見るかぎり「神経管閉鎖障害のリスク低減」でも良いはずです。これに対しての答えはないので、ここからはあくまで私の考えです。
なぜ、このような書き方をしているのかですが恐らく「葉酸の認知度の低さ」が原因だと思います。
葉酸と母子の健康を考える会が2007年に行った「20代~40代女性および医療関係従事者における『葉酸』認知度調査」によると妊娠予備軍の未婚女性は40%、既婚女性でも54%しか認知されていませんでした。
さらに、この調査によると低い摂取意向と医療現場での推奨不十分によって出産経験者の内25%ほどしか葉酸を意識的に摂取していなかったことが分かりました。
そのため、認知度を広めて意識的に摂取してもらえるように、あえて「葉酸」という栄養素の名前を使っているのだと思います。
葉酸の認知度はかなり低いんだね…
そうじゃ。徐々に認知度は上がってきているがまだまだ低いのじゃ。
葉酸は母子手帳を貰う前から摂ろう
母子手帳の葉酸摂取についての内容で気づいている方もいると思います。母子手帳は「妊娠してから貰うもの」です。
しかし、内容は「妊娠前から」摂ることを推奨しています。つまり、妊娠してから貰うものに妊娠前から葉酸を摂取しろと時系列がおかしくなっています。
これだと母子手帳を貰ってからでは遅く、妊娠前に葉酸の摂取が大切なことに気づけた人しか意味がないようにも思えます。
しかし、厚生労働省が発表した「神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について」によると「妊娠が判明してからの摂取でも効果がみられたとする報告もある」と記載されています。
理想は妊娠前からの摂取ですが、上記のように発表しているので妊娠が判明してからの摂取でも遅くはありません。
良かった!妊娠してからでも遅くないんだね!
妊娠してからも効果が見られたと報告されているから安心するのじゃぞ。
なぜ、妊娠前から葉酸を摂取することが大切なの?
母子手帳を貰う頃からでも葉酸の摂取は遅くはないといいましたが、なぜ妊娠してからでも遅くはないのに、妊娠前から葉酸の摂取が推奨されているのでしょうか。
実は神経管閉鎖障害などの先天異常の多くは”妊娠直後”から妊娠10週目までに発生するといわれています。特に中枢神経系になると妊娠7週目までとかなり早い段階で発生します。
最も早いと妊娠直後から先天異常は発生する可能性があるので妊娠前から摂ることを推奨しているのです。
妊娠中期以降の葉酸摂取の必要性
母子手帳の内容は妊娠3ヶ月の妊娠初期まで葉酸の摂取を推奨しています。それ以降は葉酸を摂る必要がないように思えますが、中期以降も必要です。
厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準(2015年版)の概要」には妊娠初期以降の中期、後期、産後も通常の推奨量にプラスして葉酸を摂ること推奨しています。
そのため、妊娠中期以降も葉酸を摂取することが大切です。では、なぜ妊娠3ヶ月までと書かれているのかというと、目的が妊娠初期に起きる「神経管閉鎖障害のリスク低減」だからです。
妊娠中期になると赤ちゃんの成長のために葉酸が必要です。勘違いしやすいのですが「初期までは神経管閉鎖障害のリスク低減のため」、「中期以降は赤ちゃんの成長のため」と目的が変わるからです。
中期以降も摂り続けたほうが良いってこと?
そうじゃ。葉酸自体は妊娠前から産後まで必要ということになるのじゃ。
食事から葉酸摂取は難しい
母子手帳にも書いてある通り、葉酸の摂取はブロッコリーなどの緑黄色野菜や、イチゴ、納豆から摂ることができます。
しかし、葉酸について調べてみると多くの人がサプリから摂取することを推奨しています。それはなぜかというと葉酸の「吸収率が悪い」からです。
葉酸は水溶性ビタミンの1種で、水に溶けやすく熱や光に弱い性質をもっています。そのため、調理の段階で半分近くが失われるといわれています。
さらに葉酸は体内に入ったとしても、一度吸収しやすいように変換をしなければいけません。そのときに、また半分近くが失ってしまいます。
結果、葉酸を多く含んだ食品を食べたとしても、吸収できるのは1/4ほどになっているのです。つまり、必要量を満たそうとすると4倍近くは食べないといけないことになります。
効率的な葉酸摂取のためにサプリを活用
では、葉酸を摂取するためにはどうすればいいのかというと、サプリなどの健康食品を利用することです。
サプリなどの健康食品の葉酸は調理をする必要がなく、体内に吸収されやすいように既に変換した葉酸が使われているので、手軽に必要な摂取量を満たすことができます。
実際に厚生労働省も神経管閉鎖障害のリスク低減のために葉酸をサプリなどの健康食品から摂取することを推奨しています。
ただ、厚生労働省が勧めているのは妊娠初期までです。それ以降は葉酸の摂取は推奨していますが、サプリからとは言っていないので注意してください。
ただ、妊娠中期以降は安全性を考えると食品から摂取することですが、私としては妊娠による症状や摂取量の満たす難しさから葉酸サプリをおすすめします。
もし、どうしても妊娠中期以降に摂取するのを不安などで迷っているのであれば、飲む量を半分にしてはいかがでしょうか。
1日2粒であれば1粒にしたり、1日1粒なら2日に1粒にしても良いと思います。そうすれば不安も軽減されるでしょう。
厚生労働省が推奨しているのは妊娠初期までってこと?
サプリから摂取するのは妊娠初期までで、それ以降もプラスして摂取することを推奨しているのじゃ。
葉酸の過剰摂取に要注意
母子手帳にも書いてある通り、葉酸を摂取するときサプリなどの健康食品から摂取するときは過剰摂取に注意しなければいけません。
葉酸は食品から摂る分には過剰摂取になることはありません。水溶性ビタミンのため、過剰に摂りすぎても尿に溶けて一緒に排出されます。
しかし、サプリから摂取するとなると簡単に多量の吸収をすることができるため、過剰摂取になる可能性があります。
葉酸サプリの用法用量を守っていれば過剰摂取になることはほとんどありません。そのため、用法用量を守って飲むようにしましょう。
まとめ
以上、母子手帳の葉酸摂取について解説しました。母子手帳の中には葉酸の摂取が書かれているのですが、調査によると葉酸の認知度はまだまだ低いようです。
母子手帳では神経管閉鎖障害のリスク低減のために妊娠前から妊娠3ヶ月まで葉酸を摂取することを推奨しています。
葉酸の摂取は食品からだととても難しいためサプリから摂ることをおすすめします。厚生労働省も妊娠初期まではサプリなどの健康食品から摂取することを推奨しています。
妊娠中期以降になると葉酸の摂取は食品、サプリどちらでも構いません。私としてはサプリがおすすめです。ただし、サプリから摂取するとなると過剰摂取の恐れがあるので、用法用量を守って飲むようにしましょう。
母子手帳には葉酸以外にも妊娠中から産後まで大切な情報がたくさん載っていますので、母子手帳を貰ったら一度確認しておくことをおすすめします。
母子手帳で何かわからないことがあれば、自治体もしくは担当の医師に聞いてみるといいでしょう。
- 葉酸摂取について書かれているのは「任意様式」
- 神経管閉鎖障害のリスク低減のために葉酸摂取推奨と書かれている
- 神経管閉鎖障害は完全に予防することはできない
- 厚生労働省は妊娠1ヶ月前から妊娠3ヶ月まで摂取することを推奨している
- 妊娠初期まではサプリなどの健康食品から摂取することが推奨されている
- 中期以降も葉酸は必要だがサプリで摂取することは推奨されていない
- 葉酸サプリは過剰摂取に注意する