妊娠前から摂取することを推奨している葉酸ですが、実は葉酸をサプリで摂取すると「小児喘息」のリスクが増加するといわれているのです。
赤ちゃんのために必要だといわれている葉酸サプリにそのようなリスクがあると不安ですよね。そこで今回は葉酸サプリと小児喘息について解説していきます。
小児喘息とは?これは命に関わる病気
小児喘息とは呼吸をしたときの空気の通り道、気管支が急激に狭くなることで空気が通りにくくなり、呼吸困難になる病気です。
喘息は常に呼吸をするのが難しいわけではなく、突然発作が起きて息を吸うだけで吐くことができなくなります。
発作が起きていなければ元気そうに見えますが、実際は気管支が炎症していて運動などのちょっとした刺激でいつ発作が起きてもおかしくない状態です。
喘息には風邪と似た「喘鳴(ぜんめい)」という症状があります。喘鳴とは呼吸をしたときにゼーゼー、ヒューヒューと音がするようになることです。
このときに子供が咳き込んだりしていると、風邪だと思って気づかない方もいます。日中は元気だったとしても夜中や朝になると咳き込んだり、喘鳴が聞こえるなら、喘息を発症しているかもしれません。
喘息の発作には強さがあって、小さい発作から大きい発作までは喘鳴があるのですが、喘鳴が弱くなる、もしくは聞こえなくなると呼吸不全といって危険な状態になります。
(参照:家族と専門医が一緒に作った小児喘息ハンドブック 2008 ハンドブック)
喘息の発作に小さいから大きいまであるんだね。
そうじゃ。風邪の症状と勘違いすることもあるから気をつけるのじゃぞ。
葉酸ってなに?必要性について
次に葉酸について解説しますす。葉酸とは水溶性ビタミンのB群の一つです。妊娠初期は細胞分裂をくり返しながら健康な赤ちゃんへと成長していきます。
葉酸は細胞分裂を促進させる働きがあり、赤ちゃんの成長をサポートします。神経管閉鎖障害などの先天異常の多くは妊娠10週までにはなっていることがほとんどです。
それら先天異常のリスクを低減するためにも葉酸を摂取することが大切なんです。実際に厚生労働省からも増加中にある神経管閉鎖障害のリスクを低減するために、「妊娠前から葉酸をサプリメント及び栄養補助食品から摂取してください」と発表しています。(参照:厚生労働省「神経管閉鎖障害の発症リスク低減」)
また、それ以外にも葉酸は赤血球などを作る働きがあり、血液の量を増やすことができます。血液と妊娠はあまり関係がなさそうにも思えますが、大きく関係しているので注意しましょう。
最近、標準体型であってもダイエットをする女性がどんどん増えてきています。その結果、栄養が足りていない方や、血液が不足している方がたくさんいます。
妊娠すると血液は赤ちゃんへ栄養を送ったり、出産時などたくさん必要です。そのときに血液が不足してしまうと赤ちゃんへ栄養が送られなくなり、早産や未熟児の原因にもなりえますので気をつけてください。
葉酸摂取で小児喘息のリスクが上がる!?
赤ちゃんの健康のために必要な葉酸でしたが、とある研究結果で「葉酸を摂取すると、小児喘息になるリスクが高い」と発表されたされたのです。(参照:STUDY LINKS FOLIC ACID SUPPLEMENTS TO ASTHMA)
その研究を行ったのは、オーストラリアの歴史あるアデレード大学で准教授の「マイケル・デイヴィスさん」という方です。
デイヴィスさんはオーストラリアで500人以上を対象として、「妊娠初期と妊娠後期における食品またはサプリによる葉酸の摂取状況と、生まれて3歳半と5歳半の子供に喘息を発症した割合」を調査しました。
その結果、喘息は「3歳半の子供は11.6%」「5歳半の子供は11.8%」と報告されています。およそ10人に1人の割合で喘息になっているのです。
さらに研究では妊娠初期と妊娠後期で葉酸を摂取したときの喘息のリスクを調べたところ、「妊娠後期に葉酸を摂取すると小児喘息のリスクが26%増加する」と報告されました。
妊娠初期の摂取については「妊娠後期は葉酸の摂取が喘息のリスク増加と関連しているが、妊娠初期に摂取しても喘息のリスク増加とは関連している証拠はなかった」と報告しています。
この研究結果からデイヴィスさんは「妊娠初期に葉酸サプリを摂取しても、喘息のリスクが増加しないことがわかったので、私たちの研究はこれらのガイドラインを支持しています」と答えています。
ちなみにこれらのガイドラインの内容は「神経管閉鎖障害のリスクを低減するために妊娠前から妊娠初期まで、葉酸を1日400μg摂取することを推奨」などのことが書かれているので、機会があれば読んで見てください。
厚生労働省が推奨している摂取量も、このガイドラインと同じように1日400μgとなっています。
- 3歳半の子供は11.6%、5歳半の子供は11.8%喘息がみられた
- 妊娠後期に摂取すると喘息のリスクは26%増加する
- 妊娠初期に葉酸を摂取しても小児喘息のリスク増加には影響しない
- 妊娠前から妊娠初期、1日葉酸400μg摂取することを推奨している
小児喘息の原因は葉酸の過剰摂取orタイミング?
「葉酸を過剰摂取することで小児喘息のリスクが上がる」と様々なサイトで解説されています。とくに多いのが「1mg(1000μg)摂取したときの研究のため”過剰摂取”が問題」です。
しかし、研究を発表したアデレード大学のサイトを確認してみると摂取量ではなく「葉酸を摂取する”タイミング”が重要」だと書いています。
どちらも葉酸の摂取による小児喘息について言っている内容はほとんど同じですが、よく読むとそれぞれ噛みあっていません。
さまざまなサイトでは「過剰摂取しなければ妊娠中摂取しても問題なし」という意見が多く見かけられますが、アデレード大学の研究は「妊娠初期ならリスクはない、後期に摂取するとリスクが増加するよ」とタイミングの重要性について書いています。
アデレード大学のサイトをもう一度貼っておくので、気になる方は自分の目で確認してみてください。「STUDY LINKS FOLIC ACID SUPPLEMENTS TO ASTHMA」
もちろん正しいのはアデレード大学の情報です。では、なぜ過剰摂取が広がったのか調べてみたところ「IME医療教育研究所」というサイトが見つかりました。
こちらのサイトでは小児喘息と葉酸サプリについて「小児喘息増加の原因は母親に?妊娠中に過剰摂取した葉酸サプリが原因か!?」というタイトルで記事が書かれています。
こちらは権威あるサイトのため基本的に情報に信憑性があります。そのせいで、タイトルから誤解を招いてしまったのかもしれません。記事の内容は過剰摂取について触れていません。
最後に「!?」を使って断定をしているわけではないので間違ってはいませんが、こういったことがあるので情報を誤解しないように気をつけてください。
過剰摂取が原因じゃないのね!
そうじゃ。この研究結果は妊娠初期か妊娠後期に摂取するのが問題なんじゃ。
なぜそんな情報が?1mg(1000μg)の信憑性
上記で葉酸を摂取する問題は過剰摂取ではなく、タイミングだということがわかって頂けたかと思います。
タイミングではなく、過剰摂取が広がったのは権威あるサイトも使っているため仕方ありませんが、なぜか過剰摂取以外にもさまざまなサイトで「この調査は1mg(1000μg)摂取した人の調査だから葉酸を摂取しても心配ない」と広まっています。
この「1mg(1000μg)」はアデレード大学はもちろん、先ほどのサイト「IME医療教育研究所」でも一度も出てきていません。
これは、恐らく葉酸サプリを買ってもらうために誰かが情報を捏造したんだと考えられます。第一おかしいですよね、この調査は「オーストラリアで500人以上」を対象としています。
1mg(1000μg)も過剰摂取している人を500人以上も集めるのは難しいでしょう。実際に考えてみてください、サプリや薬を買ったときに用法用量などしっかりと確認しますよね。
そんななかで過剰摂取している人はごく少数だと思います。もし、仮に調査のためとして「500人以上の人に摂取してもらっているんだととしても、そんな危険なことをする人は少ないでしょう。
そもそも、過剰摂取が間違っているので「1mg(1000μg)」という情報も間違っているということになります。このことから、過剰摂取ではなく、タイミングで小児喘息になるリスクが増加するのです。
妊婦さんは葉酸サプリを摂取すべき期間
上記の研究結果からすると、妊娠中全期間に渡って葉酸を摂取すると喘息のリスクが増加することがわかります。
また、妊娠前から妊娠初期だけの摂取ならリスクは増加しないこともわかりました。じゃあ、いつまで葉酸を摂取すべきかというと小児喘息が不安であれば「妊娠初期を過ぎたら」やめればいいと思います。
私として全期間葉酸を摂取することを推奨しますが、不安が大きいのであれば無理して摂り続ける必要はありません。むしろ、そのまま摂取するとストレスなどで体に悪影響です。
喘息のリスクはあるなかで、なぜ私は葉酸の摂取を推奨しているのかというと「葉酸のメリットがそれ以上に大きいと感じている」からです。
神経管閉鎖障害のリスク低減と喘息のリスクだけを考えるなら、妊娠初期でやめればいいと思います。
しかし、妊娠中はそれら以外にも貧血や胎盤早期剥離、流産など色々なリスクがあります。病気などすべてではありませんが、いくつかのものに対しても葉酸の働きに期待することができるので、おすすめです。
そのため、私としては妊娠前から産後まで葉酸の摂取を推奨しています。実際に厚生労働省も妊娠前から産後まで、葉酸を普段の食事にプラスして摂るように食事摂取基準を設けています。
妊娠前から妊娠初期だけでいいならプラスして摂る必要はないはずですよね。具体的な理由はわかりませんが、必要だからこそプラスしているんだと思います。
不安であれば妊娠初期にやめてもいいですし、そのまま厚生労働省の摂取基準を守って摂取し続けてもいいと思います。
葉酸の必要性もわかるけど、小児喘息も怖いなー。
そうじゃな。たしかに小児喘息も怖いと思うから葉酸のメリットを見てから考えるといいぞ。
まとめ
以上、葉酸サプリの過剰摂取による小児喘息のリスクについて書きました。小児喘息は重症度にもよりますが突然の発作によって呼吸が苦しくなる病気です。
風邪の症状に似ているので気づきにくいので、注意が必要です。熱が下がっても咳が続いたり、引いた風邪がなかなか治らないなどから気づくことが多いので、喘息と思ったら一度病院で診てもらいましょう。
葉酸サプリは妊娠前から摂ることが大切なものですが、妊娠後期に摂取していると小児喘息のリスクが増加します。
過剰摂取が原因で小児喘息になるリスクが増加するという情報もありますが、実際は初期と後期に摂取するタイミングです。
私としては妊娠前から産後まで摂取するメリットが大きいですし、厚生労働省の食事摂取基準でも妊娠前から産後までプラスして摂る必要があるとしています。
ただ、小児喘息のリスクがあることも事実もです。そのため、不安でストレスを感じるなら妊娠初期でやめましょう。妊娠初期でも神経管閉鎖障害のリスク低減はできます。
もし、どちらとも迷っているのであればサプリの摂取量を減らしてみてはいかがでしょうか。サプリの量を減らせば、多少のリスクは低減できますし、働きもないよりはマシといえます。
小児喘息のリスクが怖ければ無理に葉酸を摂取する必要はありません。ただ、妊娠前から妊娠初期は葉酸を摂取してもリスクの増加はないので、神経管閉鎖障害のリスク低減のためにも葉酸の摂取をおすすめします。