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鉄不足が早産の原因に!?妊娠中の鉄分補給のコツ&鉄が多い食材一覧

鉄不足が早産の原因に!?妊娠中の鉄分補給のコツ&鉄が多い食材一覧

妊娠前、妊娠中は葉酸の摂取を勧められますが、健康のためにもう一つ摂取してほしいのが『鉄分』です。

妊娠中は葉酸のことに注目されがちですが、鉄分も葉酸と同じように妊娠前から産後まで欠かすことのできない大切な栄養素です。

そこで、今回なぜ鉄分は妊娠前から産後まで必要なのか、理由や不足したときにでる鉄欠乏症貧血、鉄分の必要量などについて徹底解説していきます。

鉄分を勧める理由

鉄分とは私たち人間が健康に生きていくには欠かせない栄養素の一つです。鉄分は体内で働く分(約70%)と貯蔵用(約30%)に分かれ、働く鉄分はヘモグロビンとなって赤血球を作る働きがあります。

貯蔵されている鉄分は体内で鉄分が不足したときに出てきます。そのため、一時的に鉄分を不足しても気づくことはほとんどありません。

ここでワンポイントしかし、貯蔵用の鉄分も補給しなければ失っていくので、不足した状態が続くとさまざまな症状がでてきます。

働く鉄分はヘモグロビンとなって体内の酸素を、体中に運搬する役割をもっています。また、それ以外にも筋肉を動かしたり、体内で様々なエネルギーに変換するなど、色々な働きがあるのです。

鉄分は健康に生きていくには欠かせない栄養素なんですが、残念なことに近年、日本では妊娠している・していないに関係なく鉄分を不足している女性がどんどん増加してきています。

戦後から男性はメタボになる人が増えてきているのに対して、今の女性は終戦直後の人よりも痩せているのじゃ。とくに20代の女性にこの傾向が多くみられるのじゃ。

徳島大学機関リポジトリ「わが国における鉄欠乏,鉄欠乏性貧血女性の増加と栄養」によると痩せすぎか肥満か体型がわかる「BMI」からみると痩せすぎの女性は日本だと12.2%、アメリカは3.3%、イギリスは3%、オーストラリアは1.5%と、日本の女性がかなり高くなっています。

理由としては痩せることへの願望が強い女性が増えてきているからだと考えられています。その結果、「1.日本の現状と病態 鉄代謝の臨床 鉄欠乏と鉄過剰:診断と治療の進歩」によれば、過去から今現在まで鉄不足を改善している傾向はなく、「症状はないが鉄分を不足している女性は約半数以上いる」と言われているのです。

妊娠すると鉄分は赤ちゃんに優先的に運ばれていくので、さらに不足することになってしまいます。不足すると母体への負担は大きくなってしまうので注意してください。

妊娠前からしっかりと鉄分を摂るように心がけることが大切なのね!

つわりや味覚の変化などの妊娠による症状で大変だと思うが、できるかぎり意識して摂るようにするのじゃぞ。

鉄欠乏症貧血の兆候について

上記でも説明をしていますが、妊娠していなくても鉄分を不足している女性は増えてきています。

妊娠中はとくに鉄分が必要で、摂取した多くが赤ちゃんに送られていくのじゃ。そのため、妊娠していないときよりも倍近く必要じゃ。

鉄分を不足すると『鉄欠乏症貧血』になってしまいます。世界保健機関(WHO)は鉄欠乏症貧血になる人は世界的に見ても多く、全人口のおよそ30%が鉄欠乏症貧血だと考えられているのです。

それほど世界中で多い鉄欠乏症貧血になると以下の兆候がでてきます。兆候については厚生労働省「総合医療」情報発信サイト「鉄」についてを参考にしています。

  • 疲労感または無力感(やる気がでない)
  • 集中力の低下
  • 体温の維持能力が低下(冷え性など)
  • 免疫力の低下
  • 舌炎(舌が真っ赤に腫れる)

ちなみに上記全ての兆候がでてくるわけではありません。いくつかの症状が当てはまっているなら鉄欠乏症貧血を疑ったほうがいいでしょう。健診のときに担当の医師に相談してみましょう。

注意してね!免疫力が低下すると、風邪やインフルエンザなどの病気にもなりやすくなります。妊娠中に病気になって、体力を奪われるのは避けたいので、鉄分を摂取するようにしましょう。

鉄欠乏症貧血による赤ちゃんへの影響

妊娠中に鉄欠乏症貧血になると『早産』『低出生体重児』の原因となります。

妊娠中に鉄分が不足すると赤ちゃんへ十分な栄養と酸素が行かなくなってしまう可能性があります。

その結果、予定よりも早く出産をする”早産”か2500g未満で生まれてくる”低出生体重児”のリスクが上がってしまうのです。

ちなみに低出生体重児とは2500g未満の赤ちゃんのことを言い、低出産体重児の数が毎年増加してきています。

体重の軽い子供が増加してきているんだね…

そうじゃ。鉄分を不足している女性は日本が多いのじゃが、そのせいか世界と比べても日本は低出生体重児の数がかなり多いのじゃ。

鉄分の必要量

鉄分の必要量は女性だと月経の有無や妊娠・授乳期にあるかどうかによって大きく変わってくるので、厚生労働省「鉄の食事摂取基準」を参考にしっかりと確認しておきましょう。

  • 18歳~29歳 月経なし6mg 月経あり10.5mg
  • 30歳~49歳 月経なし6.5mg 月経あり10.5mg
  • 妊娠初期 +2.5mg
  • 妊娠中期・後期 +15mg
  • 授乳婦 +2.5mg

妊娠中の方もしくは産後の方は年齢に応じた必要量にプラスして鉄分を摂るようにしましょう。

見てもらえば分かるとおり、妊娠中期・後期に入ると鉄分が倍近く必要になってきます。この時期は赤ちゃんも大きくなり、母子ともに鉄分を含めた栄養の必要量が増加します。

また、後期に入ると出産も近くなってくる時期です。出産時には血液が大量になくなるので、とくに鉄分が必要になってきます。

ただ、「これだけ必要です」「倍近く必要です」といっても、今どれほど摂れているのかわかりづらいですよね。そこで厚生労働省の「平成28年国民健康・栄養調査結果の概要」を参考にしてみましょう。

  • 15歳~19歳 6.5mg
  • 20歳~29歳 6.7mg
  • 30歳~39歳 6.5mg
  • 40歳~49歳 7.4mg

平均ではありますが全年齢で「月経なし」だと必要量はクリアできています。しかし、月経あり、妊娠中だとまったく足りていません。そのため今よりも鉄分を多く摂る必要があります。

ここでワンポイント妊娠中、授乳婦の方は、赤ちゃんの分のことも考えて摂取しましょう。

鉄分を多く含んだ食材

鉄分を多く含む食材を紹介する前に知っておいてほしいことがあります。それは鉄分には「ヘム鉄」「非ヘム鉄」の2種類があることです。

ヘム鉄は肉や魚に含まれているもので、非ヘム鉄は野菜に含まれているのじゃ。非ヘム鉄よりもヘム鉄のほうが吸収力が優れている。

「ヘム鉄だけでいいじゃん」と思うかもしれませんが、ヘム鉄を含む肉や魚ばかり食べていると別の栄養バランスが傾いてしまいます。

そのため、これから紹介する鉄分を多く含んだ食材ばかり食べるのではなく、栄養バランスを考えて食べるようにしてください。

ここでワンポイントマイナーな食材はできるかぎり省略しているのでご了承ください。また、鉄分の量は全て100gあたりの数字となっています。

これから紹介していく食材は文部科学省「食品成分データベーズ」を参考にしています。

肉類

  • 豚の肝臓(レバー) 13mg
  • 鶏の肝臓(レバー) 9mg
  • 牛の第三胃(センマイ) 6.8mg
  • いなごの佃煮 4.7mg
  • かも 4.3mg

肉類は主に動物のレバーに鉄分が多く含まれています。しかし、レバーにはビタミンAが豊富で過剰摂取すると頭痛や肝臓に障害、赤ちゃんに奇形などの症状がでてくる可能性があります。

そのため、レバーはたまに食べるのがいいでしょう。食べるのであれば、全体的に牛は鉄分を多く含んでいるので『牛』がおすすめです。

魚介類

  • アユ(天然) 63.2mg
  • アワビ 33.9mg
  • アサリ 29.7mg
  • イワシ(煮干し) 18mg
  • エビ(干しエビ) 15.1mg

魚介類では天然のアユが圧倒的に多く含まれています。天然ではなく養殖のアユになると鉄分は19mgになってしまいます。

アサリに鉄分が多く含まれているので、お味噌汁やお吸い物にアサリを足すのがおすすめです。比較的簡単で食べやすいと思います。

野菜類

  • パセリ 7.5mg
  • トウガラシ 6.8mg
  • ヨモギ 4.3mg
  • トマト 4.2mg
  • ダイコン 3.1mg

パセリはビタミンCやビタミンB2などのビタミン類や、カルシウムや鉄分などのミネラルを豊富に含んでいるのですが『アピオール』が多く含まれています。

アピオールとは堕胎効果を持っており、中世では堕胎薬としても使われていました。通常の摂取量では問題ありませんが、鉄分のことを考えて食べ過ぎると危険なので注意してください。

果物類

  • 梅 7mg
  • ブドウジャム 3.3mg
  • あんず 2.3mg
  • いちじく 1.7mg
  • ブルーベリー 1.2mg

果物類は梅以外鉄分の量が少ないので、果物から摂ることはあまり考えないでいいでしょう。

一番多く含まれている梅は「梅びしお」というもので、梅をペースト状にしたものです。珍しいかもしれませんが、美味しいので梅が好きな方は食べてみてください。

鉄サプリには注意

鉄分を多く含む食材でアユの天然だと63.2mgと豊富に含まれています。ただ、「食べたら過剰摂取になるんじゃないの?」と疑問に思う方もいるでしょう。

鉄分は通常の食事を行っていれば過剰摂取になることはほとんどありません。全て鉄分を豊富に含んだ料理だと過剰摂取になるかもしれませんが、それは栄養バランスのことを考えると現実的ではありません。

過剰摂取に気をつけるのは『鉄分のサプリ』です。貧血になったりして病院へ行くと、鉄分のサプリを処方されることがあります。この場合は医師が患者の状況を考えて処方しているので問題はありません。

ただ、自分で購入したサプリだと用法用量を守らずに飲みすぎてしまう人がいるじゃろう。鉄分を過剰摂取すると血液の中に異常に鉄がみられ、肝臓や心臓などに貯まっていくから注意が必要じゃ。

その結果、肝硬変や心不全などの臓器障害が発生する可能性が高まります。また、鉄は体外に排泄されることがほとんどないので鉄中毒になることもあります。

鉄中毒になると体の臓器や組織全てに鉄が貯まることになります。実際に鉄分のサプリメントによって子供の死亡事故が起きているので注意してください。

用法用量さえ守れば鉄分のサプリを飲んでも問題はありません。ただ、飲むときはこういう症状や危険性があることを知って、飲みすぎないようにしましょう。

鉄分を摂りすぎると、命にも関わってくるんだね…

そうじゃ、子供の死亡事故も起きているからサプリメントを飲むときは、子供の手の届かないところにちゃんと保管しておくのじゃぞ。

まとめ

鉄分は私たち人間が健康に生きていくためには欠かすことのできない栄養素の一つです。妊娠すると赤ちゃんも鉄分を必要とするため、たくさんの量が必要になってきます。

不足しても貯蔵されている鉄分を使うため不足していることに気づきにくいのですが、鉄欠乏症貧血になってしまうと「早産」の原因にもなってしまいます。

出産が近い妊娠中期・後期になると最も鉄分が必要です。しかし、妊娠中期・後期になると味覚が過敏になって、鉄分を摂取することは難しいかもしれません。

それでも赤ちゃんのことを思って少しでも料理に鉄分を含んだ食材を足すなどの工夫をして積極的に摂取しましょう。