子供の病気として有名だった「風疹」ですが、近年大人の発症率も高くなってきていることをご存知でしたか。
妊娠していないときに風疹を発症しても問題はありませんが、妊娠中に風疹を発症すると「先天性風疹症候群」という恐ろしい病気が赤ちゃんに発症する可能性があるのです。
先天性風疹症候群は妊娠20週までの発症率が高く、注意が必要です。そこで今回は風疹を発症する原因から予防法まで解説していきます。
風疹(ふうしん)とは?
風疹(ふうしん)とは「3日麻疹(はしか)」とも呼ばれるウイルス性の発疹症です。感染すると高熱や発疹、リンパ節が腫れるなどの症状が現れます。
症状は様々で、感染しているにも関わらず健康に見える「不顕性感染」から、病状が非常に重たい合併症を併発するまで幅広くなっています。
症状が幅広いため、実際に患者に現れている症状だけでは風疹だと診断することは難しい病気です。
妊娠中期の20週ごろまでの妊婦が風疹に感染すると赤ちゃんに「先天性風疹症候群」を発症する可能性があります。
妊娠中に風疹に発症すると赤ちゃんにまで影響するんだね。
そうじゃ。先天性風疹症候群はとても危険な病気じゃから気をつけるのじゃぞ。
患者数が激増している風疹(ふうしん)
元々、風疹は1990年代前半までは5~6年ごとに全国で流行していた病気でした。
その後、男女の幼児へ定期的に風疹ワクチンを接種することによって1997年から全国的な流行は抑えられました。
しかし、2003年~2004年にかけてまたも流行し、およそ患者数は4万人にまで及んだといわれています。
2011年にはアジアで大規模な流行が発生し、そのときに感染を受けて帰国した後に風疹を発症する成人男性と職場での集団発生が各地で報告されるようになりました。
それから急速に全国に広がっていき、2013年には患者数が2012年の2倍以上増えたと報告されています。
風疹と聞くと子供がかかる病気のイメージですが報告された患者の90%が成人と、子供の病気ではなく、今では大人もかかる病気になってきているのです。
風疹(ふうしん)の7つの症状
大人が風疹を発症すると以下の症状があらわれます。
- 発熱
- 発疹
- リンパ節の腫れ
- 目の充血
- 頭痛
- 咽頭痛(のどの痛み)
- 関節痛
この中でもとくに発熱の症状が現れる確率が高く、感染した人の96.3%に症状が見られました。次に多いのがリンパ節の腫れ「92.6%」、発疹は「85.2%」でした。
リンパ節が腫れる場所でもっとも多いのが「後頚部(首の後ろ側)」で、リンパ節の腫れがあった人の77.8%に見られました。
子供が風疹にかかっても持ち前の免疫力などから感染したとしても症状は軽めです。しかし、大人が風疹にかかると子供よりも発熱や発疹の期間が長く、人によっては関節痛がひどくなります。
赤ちゃんが発症する「先天性風疹症候群」とは?
風疹(ふうしん)に対する免疫力がないまま妊娠し、途中で風疹ウイルスに感染すると、お腹の中の赤ちゃんに先天性風疹症候群が発症することがあります。
先天性風疹症候群を発症すると眼や心臓、耳などに障害を持った赤ちゃんが生まれるかもしれません。症状には一過性のものから永久的、遅発性の3種類があります。
主に現れやすい症状は以下になります。(参照:先天性風疹症候群(CRS)診療マニュアル)
- 白内障
- 網膜症
- 難聴
- 先天性の心疾患
上記の症状以外に一過性のものなら「低出生体重や肝脾腫、骨病変」などがみられます。出生時にあらわれる一過性のものだと「肝炎や肺炎、溶血性貧血」などがみられます。
永久的な障害だと上記の症状が現れやすいです。出生時だと高度な近視、心筋障害、緑内障などの障害があります。
遅発性だと精神の発達が遅れたり、言語障害、糖尿病などの症状がみられます。出生時に見られるのは成長ホルモン欠損症、肺炎、慢性発疹などがみられます。
赤ちゃんの症状のほうが重症なんだね…
そうじゃ。風疹は大人が感染するよりも妊娠中に感染し、お腹の赤ちゃんに発症するほうが症状が重く大変なのじゃ。
先天性風疹症候群の発生頻度
妊娠中に風疹に感染すると、先天性風疹症候群の発生頻度は以下になります。(参照:NIID国立感染症研究所「先天性風疹症候群」)
- 妊娠1ヶ月:50%以上
- 妊娠2ヶ月:35%
- 妊娠3ヶ月:18%
- 妊娠4ヶ月:8%
妊娠1ヶ月以内だと赤ちゃんが先天性風疹症候群になる確率は50%以上になります。つまり妊娠期間が短ければ短いほど発病する確率が高くなってしまうのです。
赤ちゃんにみられる症状と妊娠週数は関係しているとされ、妊娠2ヶ月ごろまでだと眼や心臓、耳など全てにリスクがありますが、妊娠2ヶ月を過ぎると難聴や網膜症のみ持つことが多くなります。
感染していても症状がない不顕性感染は成人の15%~30%程度だといわれているので、妊婦さんに症状がなくとも発病することがあるのです。
風疹(ふうしん)が感染する原因
風疹が感染する経路は飛沫感染のため、感染した人のくしゃみや咳、会話などを吸い込むことで人から人へと感染して広がっていきます。
感染してもすぐに症状はあらわれず、約2~3週間潜伏期間を経てから症状があらわれます。
風疹ウイルスは感染力は強く、インフルエンザの数倍の強さだといわれているのです。感染しても発症しないことによって気づかないまま他の人にうつしてしまうこともあります。
先天性風疹症候群の検査方法と診断された場合の対処法
先天性風疹症候群かどうか検査する方法は3つあります。検査方法は以下の3つになります。(参照:NIID国立感染症研究所「先天性風疹症候群に関するQ&A」)
- 風疹ウイルスを直接検出
- 風疹ウイルスの遺伝子を検出
- 風疹ウイルスに対する抗体を検査
1.風疹ウイルスを直接検出
先天性症候群の赤ちゃんの咽頭ぬぐい液、唾液、尿から直接風疹ウイルスを分離して検出する方法です。
この方法はどこでもできるわけではなく、保健所を通して地方もしくは国立の研究所で検査を行わないといけません。
2.風疹ウイルスの遺伝子を検出
PCR法というDNAを増幅させて目的のものを検出する方法を使って風疹ウイルスではなく、遺伝子を検出します。
遺伝子から検出するため、非常に感度が高く微量のウイルス遺伝子でも検出することができます。
しかし、この方法もどこでもできるのではなく、感染症を研究している機関もしくは一部の医療機関でのみ検査することができます。
3.風疹ウイルスに対する抗体を検査
風疹ウイルスに対する抗体には2種類あり、それらを使って陰性か陽性か検査をします。この方法はどこの医療機関でも受けることができます。
検査は病院もしくは民間の検査センターで行います。この方法は健康保険が適用されるので、最も一般的な方法でしょう。
風疹の治療法とは?胎児に影響しないの?
残念ながら風疹に対しての治療法というものはなく、発熱や関節炎なら解熱鎮痛剤など特定の症状を和らげる治療のみが行われます。
妊娠中に風疹になった場合は発熱や関節炎があったとしても解熱鎮痛剤などの投薬を行うことはほとんどありません。
妊娠中に薬を飲むと副作用や成分が赤ちゃんに影響することが考えられるためだからです。そのため、発症してもできるかぎり安静にしておくことが一番です。
かかる前に風疹を予防する方法
風疹を予防するためには一番効果的なのがワクチンを接種することです。風疹のワクチンを接種することによって95%以上の人が免疫を獲得することができます。
また、1回目の接種で免疫がつかなくても2回目の接種で多くの人が免疫を獲得することができています。
一度、”確実”に風疹にかかったことのある方は自然免疫をもっていることが考えられるので予防接種する必要はありません。
一度目の予防接種から長い年月が経っている場合、免疫が低下してきている可能性があるので追加でワクチンを受けて免疫を増強することもできます。
ワクチンを接種すると最も多く見られるのが発熱です。接種してから2週間以内に発熱、1週間ごろに発疹、アレルギー反応などの症状がでることもあるため、接種するときは計画的にしましょう。
妊娠するとワクチンを接種することができなくなるので、妊活をしている方は必ず妊娠前に予防接種を受けるようにしましょう。
接種してからは2ヶ月ほどは避妊をする必要があるので、不妊症などで病院に通っている方は担当の医師に相談をしましょう。
現在、多くの自治体で先天性風疹症候群の予防のために、妊娠を希望している女性を対象とした風疹の抗体検査を無料で実施しています。
抗体検査の実施状況はお住まいの地域の保健所で確認することができます。抗体検査をして抗体値が低い場合は予防接種を考えたほうがいいでしょう。
妊娠中は予防接種することができないんだね。
そうじゃ。赤ちゃんへの影響のことを考えると予防接種はできないようになっているのじゃ。
妊婦の場合はどんな予防法に注意すればいい?
妊娠中は風疹の予防接種ができないので妊娠20週ごろまで、できるかぎり自分でリスクを下げるしかありません。
風疹は唾液などによる飛沫感染のため、できるかぎり人混みや子供の多い場所には行かないようにしましょう。
妊婦さんと同居している家族が持って帰ってきて風疹に感染することも考えられるので、旦那さん、お子さんがいればお子さんも全員予防接種してもらうようにしましょう。
特に20代~30代の男性は発症率が高いので、旦那さんの年齢が20代~30代なら予防接種してもらいましょう。
まとめ
風疹(ふうしん)は元々子供に多く発症する病気でしたが、最近では大人のほうが発症することが多くなってきました。
風疹は妊娠していないときに発症してもあまり問題はありませんが、妊娠しているときに発症すると赤ちゃんに「先天性風疹症候群」をもつ可能性があります。
先天性風疹症候群になると眼や心臓、耳に障害が残る可能性があり、成長障害になってしまうかもしれません。
妊娠中は風疹の予防接種をすることができないので、できるかぎり人混みや子供の多い場所は避けるようにしましょう。
妊娠前で一度も風疹にかかったことがない方は、一度抗体検査を受けてから予防接種を受けてください。
- 風疹の発症率が増えてきている
- 男性は20代~30代、女性は20代に発症しやすい
- 妊娠中に発症すると「先天性風疹症候群」が赤ちゃんにかかる可能性がある
- 妊娠20週頃まで先天性風疹症候群を発症する可能性がある
- 妊娠中は予防接種を打てないので人混みを避けるようにする