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自然には治らない?視床下部性排卵障害の原因や改善法【徹底解説】

自然には治らない?視床下部性排卵障害の原因や改善法を解説!

結婚して普通に生活してさえいれば、自然に赤ちゃんができるだろうと考えているカップルは多いものです。でも、数年経っても一向に妊娠の兆候が見られず、いつの間にか不妊という悩みを抱えてしまうカップルが大勢いるのもまた現状です。

不妊の原因はさまざまなものが挙げられ、女性男性ともに原因を抱えていることも珍しくはありません。その中で、女性の原因となっているものとしては、卵管障害に次いで多いのが排卵障害です。

排卵障害とは、排卵するためのホルモンが正常に分泌されないために妊娠に至らないことです。そして、排卵障害と一口にいっても、視床下部性、下垂体性、卵巣性、また、甲状腺ホルモンの異常など、原因によっていくつもの種類があります。

妊娠に至るまでのプロセスは非常に繊細にできているので、どれか一つにでも働きが悪くなるようなことが生じれば妊娠にこぎつけることはできません。

ここでは、排卵障害の中でもかなりの割合を占める視床下部性に焦点を絞って原因や治療法を徹底解説していきます。

視床下部性排卵障害とは?

妊娠するには卵子と精子の受精が行われなければなりませんが、実は受精に至るまでにはさまざまな難関があり決して簡単なこととはいえません。しかも、その中でも極めて重要といえる排卵が行われないのが排卵障害なのです。

そんな排卵障害の原因を部位別に分けた一つが視床下部性排卵障害です。この障害は、脳の視床下部に障害があることで排卵が行われないということで、中枢性の排卵障害と呼ばれることもあります。

排卵に至るまでには、脳の視床下部がとても大きな役割を果たしています。まずは、視床下部からその下に位置する脳下垂体を刺激するゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)放出ホルモン(GnRH)が分泌され、刺激を受けた脳下垂体からは黄体化ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)が分泌されて血液中に放たれます。

その後、黄体化ホルモンと卵胞刺激ホルモンは血液中を大移動して卵巣にまでたどり着きます。そして、この2つのホルモンが卵巣で適切に作用することで卵子が2センチ前後にまで成長していき、やがて卵子を包む卵胞を破ってついに腹腔に排出されます。これが排卵です。

視床下部性排卵障害は、排卵するための大元となる視床下部に何らかの障害ができてしまい、ゴナドトロピン放出ホルモンが十分に分泌されなくなってしまった状態です。

そのため、その後の機能がほとんど働かなくなって排卵が起こらなくなってしまうというわけです。

不妊かもしれないと思ったら、まずは婦人科に行ってその原因を探ってみることが解消への第一歩となります。病院ではさまざまな検査を行い、ゴナドトロピン放出ホルモンが分泌されていないと判明すると視床下部性排卵障害が疑われることになります。

排卵障害の原因に部位別なんてあったんだ!

そうじゃ。視床下部のほかに下垂体と卵巣もあるのじゃが、とくに多いのが視床下部なんじゃ。

視床下部性排卵障害と不妊の関係性

排卵障害の中でも視床下部性となると、排卵に至る大元といっても良いゴナドトロピン放出ホルモンが視床下部から分泌されなくなってしまった状態です。

その後もいくつものプロセスを経て、さまざまな他のホルモンも適切に分泌されなければ排卵には至りませんが、まずはこのホルモンが分泌されないことには不妊が解消することはありません。

排卵とは卵子が卵胞から飛び出て腹腔に放出されることです。卵子はその後、卵管采に取り込まれて、膨大部(らんかんぼうだいぶ)と呼ばれる卵管部分に移動することになります。

そして、子宮から卵管に必死に上ってきた精子と出会うと、ついに受精することができるのです。

しかし、排卵障害はそもそも排卵自体がされないわけですから、精子がいくら頑張って子宮をのぼってきたところで受精に至ることはありません。そして、視床下部性はそのプロセスの中でも大元に原因があるということになります。

視床下部性排卵障害の原因

不妊と非常に深い関係があるのが視床下部性排卵障害なので、妊娠を望んでいるなら、何とか改善しなければなりません。それには、まずは、視床下部性排卵障害に至る原因を確認する必要があります。

正常に排卵が起こる過程を見てみると、実にさまざまな体の機能が関わっていることがわかるはずです。視床下部と脳下垂体、そして卵巣という3つの器官がホルモンを分泌することでスムーズに連携をとり、その結果、やっと起こるのが排卵なのです。

この3つのいずれの器官に異常があっても排卵に至ることはありませんが、視床下部に何らかの支障をきたした場合に陥るのが視床下部性排卵障害です。では、どうして視床下部に支障をきたしてしまうのでしょうか。

精神的ストレス

実は、視床下部性排卵障害の原因のほとんどがストレスによるものだといわれています。しかし、もはや社会で生きていく上でストレスは避けては通れないことといって良いでしょう。

例えば、進学や就職、近親者との離別、結婚や出産など、生きていればさまざまな難題に直面することがあり、そのような時には精神的に大きなダメージを負ってしまうことが珍しくありません。

また、ほんの些細と思われることであったとしても、何か悩みや心配事が重なった時、月経がなかなかこないで不安な思いをしたという経験がある方は多いのではないでしょうか。このようなことがきっかけとなり、視床下部性排卵障害となる恐れがあるのです。

ここでワンポイントそもそも月経は体内の血液を捨ててしまうことなので、妊娠を希望していない場合は何ら良いことはありません。女性に貧血が多いのは月経があることも理由の一つなのです。

ホルモンの分泌指令を出している脳の視床下部は、大きな精神的ストレスがかかり危機状態にあると判断すると、まずは排卵しないようにします。

こうなると、血液を捨てる必要もないので体にとっては非常に快適な状態となります。しかし、そんな状態が長く続いた場合、まるで排卵がないのが当然のことかのように脳は認識してしまい、やがては排卵障害に陥ってしまうのです。

身体的ストレス

また、ストレスといっても精神的なものばかりではありません。身体的に大きなストレスを受けた場合も、体は危機状態となることから視床下部性排卵障害となる恐れがあります。

身体的ストレスで非常に身近なものといえば、ダイエットが挙げられるでしょう。スリムであることが必要以上に求められる現代では、ほとんどの女性がダイエットを経験しているはずです。

注意してね!短期間で過激なダイエットを行って体重が少なくなると、体は危機状態と認識するのはごく当たり前のことです。

これは、大きな大会に出場するようなマラソン選手でなくとも起こり得ることです。体重が少なくなることで月経が来なくなる状態は体重減少性無月経と呼ばれ、ごく一般的な生活をする女性も陥ることがあります。

体重減少性無月経になる目安は、短ければ3か月、長くて1年間で体重の10%以上が減少した場合です。そして、半年以上、月経がない状態が続けば、若くても骨粗しょう症となることがあるほどです。

排卵するにはある程度の体重が必要で、体重が極端に少なくなるとエストロゲンが分泌されなくなります。まずは体重をもとに戻すことを考え、それでも排卵しない場合には病院で治療を受けましょう。

ここでワンポイント排卵誘発剤の他、卵胞ホルモンや黄体ホルモンを処方してもらって月経を起こす治療が行われます。

視床下部が原因で排卵障害を起こす

視床下部性排卵障害は、黄体機能不全などと並んで女性が妊娠しにくくなる原因の一つに挙げられています。

排卵障害は黄体機能不全と同じく卵巣の機能が正常に作用しなくなるという症状ですが、そこに至るまでには脳の視床下部が大きな役割を果たしています。

視床下部は、ホルモンを分泌させる他、交感神経や副交感神経といった自律神経のコントロールも行っています。例えば、人が大きなストレスを感じた際に動悸や発汗が起きることがありますが、これも、視床下部から神経に指令が出された結果なのです。

このような連携が生まれるのは、脳の視床下部のすぐ下に、不安や恐れといった情動的な感情が生じる大脳辺縁系があるからです。そのため、視床下部は感情の波を非常に受けやすいという特徴を持っているわけです。

しかし、あまりにも長く緊張状態に置かれた視床下部は、とてつもなく大きなダメージを受けることから、このような神経への指令がうまくできなくなってしまうことが珍しくありません。

正常に排卵するには視床下部から然るべきホルモン分泌指令が出されなければならないわけですが、あまりにも強いストレスを受けてしまうと、正常な指令が出されなくなるなどして排卵が起こらなくなってしまうのです。

視床下部ってとても大事な役割をもっているんだね。

そうじゃよ。ただ、大事な役割をもっているがストレスにとても弱いという面があるから、妊活中はストレスを減らすことが大切じゃ。

排卵障害の診断手順

排卵障害は、病歴や身体検査、超音波検査、内分泌検査などからさまざまな状態を把握することで診断されます。この他にも、基礎体温もチェックされますし、ゲスターゲン試験が行われることもあります。

内分泌検査では、黄体化ホルモン(LH)や卵胞刺激ホルモン(FSH)、エストラジオール(E2)などの値をチェックしますが、これらは月経の周期によって分泌量が変わってくる場合があるので、お医者様の指示に従うと良いでしょう。

また、基礎体温や月経の詳細な状態などは、日ごろから書き留めておくようにすると自分の状態を知る上でも役立つはずです。もちろん、受診の際には忘れずに持参してお医者様に伝えるようにしましょう。

病歴や身体検査によるもの

排卵障害の診断は、最初に病歴の確認や身体検査が行われます。例えば、妊娠していないのに乳汁が出ているようなら、高プロラクチン血症などの病気が疑われることになります。

また、身長の割に体重が少なすぎるといった場合は視床下部性無月経や甲状腺機能亢進症が疑われますし、短期間のうちに急激に体重が減ったという場合には体重減少性無月経の可能性があります。

逆に体重が重すぎる場合にも、不妊の原因となる多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の疑いが出てきます。これは、卵胞が発育するまでに時間を要してなかなか排卵しない状態で、若い女性によくみられる症状です。

さらに、悪性腫瘍を治療した経験がある場合には、放射線や抗がん剤による卵巣性無月経の疑いを持つことがあります。

他にも、月経に異常がみられた時期から診断できるものもありますし、多毛やニキビなどの治療がきっかけとなって排卵障害が引き起こされることもあります。

ここでワンポイント染色体の欠失が原因で発症するTurner症候群の場合、卵巣が未発達となることから月経が起きないケースが多々あります。

超音波検査

病歴を確認して身体検査が終了したら、次には超音波検査があります。この検査の目的は、子宮や卵巣の状態を画像で確認することです。

子宮については、サイズや内膜の厚さを確認することがメインです。もしも年齢相当よりもサイズが小さいようであれば、これも子宮発育不全といって不妊の原因の一つとなります。また、厚さに関しては、通常よりも薄い場合にも不妊の原因の一つになります。

卵巣については、サイズや卵胞を確認することがメインです。もしも卵巣のサイズが大きい場合には、卵胞の発育までに時間がかかってしまう多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)が疑われます。

超音波検査では卵胞の様子を非常によく確認することができます。1つの卵巣内に卵胞の数が10個以上認められた場合も多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の疑いが出てきますし、卵胞がまったくなければ重度の無月経ということになります。

さらに、超音波検査で、子宮筋腫や子宮内膜症性嚢胞、子宮内膜ポリープ、といった合併疾患の有無を確認することも重要なことです。

内分泌検査

不妊治療では、超音波検査とともに重要になってくるのが内分泌検査です。これは、血液を採取することにより、妊娠に必要なホルモンの分泌量を調べることが目的です。

値をチェックするのは、下垂体から分泌される黄体化ホルモン(LH)や卵胞刺激ホルモン(FSH)、プロラクチン(PRL)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)などです。また、卵巣から分泌されるエストラジオール(E2)の値も重要になってきます。

この他、最近注目されているのが抗ミュラー管ホルモン(AMH)の値です。これは、発育過程の卵胞から分泌されるホルモンで、卵巣内にどれほど卵の数が残っているかについて確認することができます。

もしも数値が低ければ、排卵誘発剤を使用しても期待通りに卵胞が育たないと考えられます。

といっても、抗ミュラー管ホルモンの分泌量は個人差がとても大きいため、値が低いからといって必ずしも卵巣機能を疑うものとはなりません。また、卵子の質について判定されるものでもなく、質はあくまでも年齢に相関します。

その他(ゲスターゲン試験など)

超音波検査や内分泌検査の他にも、基礎体温やゲスターゲン試験などが行われることもあります。

基礎体温では高温期と低温期をみることで排卵が起きているかどうかが確認できますし、状態によって無排卵周期症や黄体機能不全の診断の根拠となります。

ゲスターゲン試験は、排卵障害の重症度の判定に使われます。ゲスターゲンとは黄体ホルモン製剤(プロゲステロン)のことで、注射をして出血の有無を確認します。

もしも出血が見られれば、卵巣から女性ホルモンが分泌されているにも関わらず排卵していないということになり、この状態は第1度無月経と呼ばれています。

出血が見られない場合は、次に、女性ホルモンと黄体ホルモンを注射します。これにより出血が見られれば、卵巣からの女性ホルモン分泌量が十分でないことから、子宮が機能しないという状態の確認ができ、この状態は第2度無月経と呼ばれています。

比較すると第2度無月経がより重症であり、排卵もより難しいということになります。

排卵障害の治療法

不妊の原因が排卵障害であると判明したら、それに適した治療がスタートします。この場合は排卵がされづらいことが原因であるわけですから、排卵誘発法が治療のメインとなります。

排卵誘発の方法はいくつかありますが、費用の負担が少ないなどの理由から多くのケースで最初に選択されるのがクロミフェン療法と呼ばれる治療法です。そして、それでも排卵が行われない場合には、ゴナドトロピン療法が選択されます。

また、血中プロラクチンの値が高い場合にはドパミン作動薬療法が実施されますし、その他にもFSH-GnRHパルス療法といった治療法もあります。

しかし、いずれの方法もメリットばかりではなく副作用などもあるので、どの治療法を選択するか、お医者様とよく相談して決めることが大切です。

ここでワンポイントこれから解説する治療法については「不妊症治療における排卵誘発法」を参考にしています。

クロミフェン療法

クロミフェンとは排卵誘発剤の1種で、口から服用するタイプの薬です。クロミフィンは、同じ成分でセロフェンやオリフェン、フェミロンといった名前が使われていますが、もっとも古くから使用されているのは塩野義製薬が販売しているクロミッドです。

クロミフェン療法は値段も高くないことから、不妊治療の第一歩としてもよく利用されています。体内に吸収されると、視床下部にある脳下垂体に作用して卵胞刺激ホルモン(FSH)や黄体形成ホルモン(LH)が適切に分泌されるようにサポートしてくれるので、その結果排卵が期待できます。

しかし、クロミフィンは長いこと使用していると副作用が出てくる恐れがあるので気をつけなければなりません。例えば、頸管粘液が少なくなってしまったり、子宮内膜の厚みがなくなってしまったりと妊娠を望む人には逆効果となってしまうこともあります。

そのため、クロミフェン療法は、不妊治療の最初のステップとして一定期間使うというのが適切です。効果がみられなければ速やかに次のステップに進むべきでしょう。

注意してね!しかし、不妊専門ではないクリニックの中には、クロミフェン療法に頼りきりというところもあるので注意が必要です。特にダイエットが原因で視床下部性排卵障害となっている場合には効果がないといわれています。

ドパミン作動薬療法

出産後に母乳を分泌させる作用を持つのがプロラクチンホルモン(PRL)ですが、このホルモンが分泌されている間は排卵が行われなくなります。

排卵されないことは出産後であれば都合が良いのですが、この状態が出産後以外に発生してしまった状態は、高プロラクチン血症といって治療の対象となります。

出産後でもないのに排卵が起こらないわけですから、妊娠を希望する場合にはプロラクチンホルモンの分泌量を下げることが必要となります。

検査結果で血中プロラクチンの値が15ng/ml以上であった場合には、原因疾患の治療がまずは行われ、甲状腺機能低下症などでなければドパミン作動薬療法が選択されることが多いです。甲状腺機能が低下している場合は甲状腺ホルモンを補充することが有効です。

ドパミン作動薬療法では、排卵が起こって尚且つ妊娠に至るまで、ブロモクリプチンやテルグリド、カルベゴリンなどを投与します。また、それでも排卵が起こらない場合にはクロミフェン療法も併用することがあります。

ドパミン作動薬療法は、個々の症状によっても異なりますが、だいたい4週間継続することで50%以上の確率で排卵が起こるといわれています。

注意してね!ただし、使用する薬剤によっては、悪心・嘔吐・便秘といった副作用が起きることがあるので注意が必要です。

FSH-GnRHパルス療法

ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)とは、間脳に位置する視床下部から分泌されるホルモンです。このホルモンには、下垂体から黄体化ホルモン(LH)や卵胞刺激ホルモン(FSH)が分泌されるのを促進する作用があるので、妊娠を希望する場合には非常に重要なホルモンということになります。

FSH-GnRHパルス療法とは、ゴナドトロピン放出ホルモンと卵胞刺激ホルモン(FSH)を併用する治療法です。

治療では、最初にフェルティノームPやセローノといった卵胞刺激ホルモン製剤の投与を開始します。そして、超音波検査をして卵胞の胞径が11mm以上となった以降に、ゴナドトロピン放出ホルモンの投与を開始します。

また、ゴナドトロピン放出ホルモンの投与は2時間ごとに実施され、卵胞が成熟するまで続けられます。

卵胞刺激ホルモンのみを投与するのと比較すると、FSH-GnRHパルス療法の方が排卵率、妊娠率ともに高くなることが期待できます。また、ゴナドトロピン放出ホルモンのみの投与と比較すると、流産の確率を下げることができます。

ここでワンポイントさらに、排卵誘発剤を使用すると、双子や三つ子が生まれる可能性が高まるのは致し方ないことといえますが、FSH-GnRHパルス療法ではその確率を下げることが可能です。

ゴナドトロピン療法

ゴナドトロピンとは、黄体化ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)の働きがある性腺刺激ホルモン製剤のことです。ほぼ毎日注射をすることが必要ですが、最近では自宅での自己注射もできるようになっているので以前ほどは負担なく治療することができます。

一般的には、クロミフェン療法で排卵が起こらない場合にゴナドトロピン療法が選択されることが多くあります。治療は、まず卵胞刺激ホルモンを処方して卵胞を一定以上大きくさせた後に、黄体化ホルモンを処方します。

ゴナドトロピン療法は排卵誘発効果はかなり高いので、排卵障害の原因が視床下部や下垂体、また多嚢胞性卵巣症候群という場合なら排卵が起きる可能性は非常に高くなるといわれています。

しかし、気をつけなければならないのは、多胎や卵巣過剰刺激症候群(OHSS)となる可能性があることです。

注意してね!双子や三つ子になる可能性が20%に高まるとともに、卵巣過剰刺激症候群は重症化すると卵巣が腫れるなどの合併症を起こすリスクが高まります。

さらに、血栓ができやすくなるため最悪の場合は命にかかわることもあるほどです。

そのため、ゴナドトロピン療法を受けている間には超音波検査や血液検査が慎重に実施され、16mm 以上の卵胞が4個以上認められるようであれば、治療は中止されることもあります。

日常生活で排卵障害は改善できる?

排卵障害の原因がストレスであることを考えると、日常生活が大変重要となってくるのは言うまでもありません。病院で治療する際にも、ストレスをためやすい生活習慣などを改めるようにすると改善がスムーズにいくはずです。

まずは、睡眠が十分にとれているか、朝はきちんと起きることができているのか、といった基本的な生活パターンを見直してみましょう。

夜勤が必須の看護師や航空機の客室乗務員といった場合には難しいこととなってしまいますが、出来る限り無理はしないようにしたいものです。

また、女性にありがちな過度なダイエットも排卵障害の原因になっていまいますし、太り過ぎや過食も同じです。

例えば、東京医科歯科大学大学院の久保田俊郎教授が実施した調査によれば、スポーツをする女子選手は無月経になることが多いという結果が出ています。

これはトップアスリートだけの話しではなく、大会に出場したことがないような選手も含まれているのだといいます。

過度な食事制限をした上にハードなトレーニングを行うと、より排卵障害につながりやすくなるので、ダイエット時には十分な注意が必要です。妊娠を望んでいる場合には、基礎体温をつけ、月経周期に異常があれば病院を受診するようにしましょう。

まとめ

赤ちゃんを望んでいて通常に生活していても妊娠に至らない場合は、できるだけ早く専門の医療機関を受診するようにしたいものです。

さまざまなプロセスを経てやっと妊娠に至るということを考えると、検査も簡単なものではなくなりますし、その分、精神的・肉体的、また、金銭的な負担も大きくなってしまいます。

しかも、年齢が進むにつれて卵子の老化の深刻さは増すばかりなのです。不妊治療も精神的な負担を強いられるので、ストレスが溜まれば視床下部にさらなる悪影響を及ぼすことは想像に難くありません。

また、視床下部性排卵障害という診断が出た後も、選択された治療法が自分にとってベストのものであるかはわからないのです。もしも結果に結びつかなかった場合は、再び労力と時間を費やして他の治療法にトライしなければなりません。

そのため、不妊を解消するには、根気よく治療を続けるとともに生活習慣で改善できることがあれば確実に実践していくことがとても重要になってきます。

さまざまな治療を2年を目安に続けても妊娠に至らなかった場合には、体外受精に代表される生殖補助医療(ART)などが行われることもあります。

しかし、ARTは健康保険が適用されないことから経済的な負担は相当なものがありますし、残念ながら成功率もそれほど高いとはいえません。

  • 視床下部性排卵障害は排卵障害の原因のひとつ
  • 視床下部性排卵障害は不妊の原因にもなる
  • 排卵障害を引き起こす主な原因はストレス
  • 過度なダイエットも原因になることがある
  • 改善のためにはストレスを溜めない生活が大切