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年々増加する”卵巣腫瘍”とは?妊娠への影響は?3つの治療法を解説!

年々増加する"卵巣腫瘍"とは?妊娠への影響は?3つの治療法を解説!

女性特有の臓器、卵巣はさまざまな腫瘍ができやすいと言われています。卵巣に腫瘍ができることを文字通り「卵巣腫瘍(らんそうしゅよう)」というのです。

卵巣腫瘍ができる女性は年々増加してきていますが、自覚症状がほとんどないため気づかない人がたくさんいます。

自覚症状がないなら放っておいても良さそうと思うかもしれませんが、放っておくと命に関わる危険性があるのです。

そこで今回は卵巣腫瘍とは何なのか、症状、検査方法、治療法などについて解説していきたいと思います。

卵巣腫瘍(らんそうしゅよう)とは?

卵巣とは子宮の右と左の両方にある、2~3cmほどの臓器です。形はアーモンド型、ソラマメ型と呼ばれたりすることがあります。

女性ホルモンの分泌など重要な役割をもった卵巣が腫れることを「卵巣腫瘍」といいます。腫瘍が大きいものでは20~30cmを超えることもあるのです。

卵巣腫瘍は1種類ではなく、腫れた場所によって「表層上皮性・間質性腫瘍」「性索間質性腫瘍」「胚細胞腫瘍」などに分けられます。

それぞれに「良性腫瘍」「境界悪性腫瘍」「悪性腫瘍」があります。良性腫瘍は発生した場所で、ただ増殖するだけです。

境界悪性腫瘍は良性と悪性の中間に位置します。これは卵巣がんなどの一部の腫瘍でしか使われていません。ほぼ同じ意味として「低悪性度腫瘍」と呼ばれることがあります。

悪性腫瘍は正式な定義は違いますが「がん」を意味します。つまり、卵巣にできた悪性腫瘍は卵巣がんということになるのです。

卵巣がんが一番できやすい場所ってあるの?

上皮性にもっとも悪性腫瘍ができやすいのじゃ。その割合は卵巣がんのおよそ90%以上を占めていると言われているぞ。

卵巣腫瘍ができる原因

卵巣腫瘍がなぜできるか情報がどこにもないため、原因ははっきりとしていません。ただ、卵巣腫瘍の種類の1つ「表層上皮性・間質性腫瘍」の悪性腫瘍は3つのリスク因子があると考えられています。

1つ目が「内分泌因子」です。排卵の過程で傷ついたものが中へ取り込まれ、そこからがんが発生すると考えられています。そのため、不妊治療などで排卵の回数が多くなるとリスクが高くなると考えられています。

2つ目が「環境因子」です。動物性脂肪の大量摂取や喫煙などが原因で卵巣がんになるリスクが高くなると考えられています。

3つ目が「遺伝因子」です。卵巣がんの約10%は遺伝的要因だと考えられています。そのため、親族に卵巣がんを患ったことがある人がいる方は注意しましょう。

卵巣がんの発生頻度

卵巣腫瘍の約90%は良性で、約10%ほどが悪性とされています。しかし、最近では増加傾向にあるといわれているため、ちゅういしなければなりません。

近年では、女性の晩婚化、生む子供の減少などから排卵の回数が増加、食生活の変化による動物性脂肪の大量摂取が原因だと考えられています。

実際に国立がん研究センターがん情報サービスの「部位別がんの統計2007年」は8,631人に対して「部位別がんの統計2016年」は10,300人にまで増えています。

そのため、卵巣腫瘍のほとんどが良性だといっても、油断せずしっかりと診断を受けて治療するようにしましょう。

注意してね!発症者の増加に伴って卵巣がんによる死亡者数も増加してきています。

卵巣腫瘍の3つの症状

卵巣腫瘍は小さいと症状がなく、日常生活に支障をきたさないため気づかない人もいます。別のことで内科などに受診をしてはじめて気づく人がいるほどです。

ただ、卵巣腫瘍の付け根の部分がねじれる「卵巣腫瘍茎捻転」というものがあり、その場合は激しい腹痛が現れることもあります。

小さいときは症状はほとんどありませんが、卵巣腫瘍が大きくなると以下の症状が現れます。(参照:日本婦人科腫瘍学会「卵巣腫瘍」)

  1. 膀胱や腸の圧迫による頻尿や便秘
  2. リンパ管の圧迫による足の浮腫(むくみ)
  3. お腹に水が溜まって腹囲の増加、もしくは張り

お腹に水が溜まることで今まで履けていたスカートやパンツのウエストがキツくなり、お腹を触ってみるとしこりがあることに気づき早めに見つけることができた方もいるのです。

しかし、なかには太ってしまったと思い込んでそのまま放置をしてしまう方もいます。放置をしていると卵巣腫瘍が破裂をしたり、卵巣がんだと命に関わりますので、早期発見が大切です。

思っていたよりも症状が少ないんだね。

そうじゃ。症状が少ないのも気づきにくい理由の1つじゃ。じゃから少しの違和感でも診てもらうといいぞ。子宮がん検診などを定期的に行っておくと発見されることもあるのじゃ。

卵巣腫瘍は妊娠に影響する?

卵巣腫瘍は症状に気づきにくいこともあって月経は普段どおりなことが多く、妊娠にもあまり影響しません。妊娠できるので、妊娠できないかもと心配する必要はありません。

ただ、まったく影響しないわけでもないので注意してください。治療をしないで放置して大きくなると妊娠にも影響を及ぼしてしまいます。

不妊治療を行うときに卵巣腫瘍かどうか検査を行ったりするので、妊活をしている方でなかなか妊娠できない場合は検査してもらいましょう。

卵巣腫瘍の診断方法と検査について

卵巣腫瘍の診断方法は、まず症状などの「問診」から始まります。その後、実際に触って診る「内診・触診」、卵巣と子宮の大きさ、状態を確認する「超音波検査」が行われます。

これらによって卵巣腫瘍があるかどうか、ある場合良性か悪性か診断を行います。ただ、この時点では、まだ100%決まったわけではありません。

超音波検査で腫瘍が嚢胞性(のうほうせい)だとほとんど良性腫瘍です。反対に充実性が全体にあると悪性腫瘍の疑いがあります。嚢胞性と充実性がどちらも存在する場合は境界悪性腫瘍かもしれません。

これらの疑いから、さらに詳しく調べる必要があると判断された場合「MRI」「腫瘍マーカー」で測定されます。ただ、MRIや腫瘍マーカーを使っても精度に限界があるため、最終的には手術を行ってから卵巣腫瘍の診断が確定します。

卵巣腫瘍の治療内容

卵巣腫瘍の治療内容は基本的に手術なんですが診断されたのが「良性腫瘍・悪性腫瘍・境界悪性腫瘍」のどれかで治療内容が少し変わってきますので、参考にしておいてください。

良性腫瘍

まず、腫瘍を取る手術はある一定以上のサイズになってから行うことがほとんどです。ただし、茎捻転などによって激しい腹痛が起きたなどの症状があれば、すぐに行われることがあります。

手術法として卵巣摘出術や付属器摘出術を選択して行われます。妊娠できる年齢である場合は腫瘍のみを摘出して正常な部分は残す手術も選択することが可能です。卵巣摘出術によって片方の卵巣を摘出しても妊娠することはできます。

付属器摘出術とは卵巣以外にも卵管などの付属器も摘出する手術です。分からないまま手術を行うことはやめましょう。しっかりと医師と相談をして決めてください。

最近では上記の手術以外にも体への負担が軽減される「腹腔鏡下手術(ふくくうきょうかしゅじゅつ)」という方法があります。

腹腔鏡下手術はお腹を切って手術を行う開腹手術とは違い、テレビカメラで見ながら手術を行います。そのため、開腹手術よりも傷が小さく済み、術後の痛みが少なく回復も早くなるメリットがあるのです。

ここでワンポイントただ、腫瘍の大きさや性質と状態、過去に腹部の手術を受けたことがあるなどによって、適応が制限されることもあるので、医師とよく相談してから決める必要があります。

境界性悪性腫瘍

境界性悪性腫瘍は「組織診断」と呼ばれる病変部分の組織を採取して行う検査で、診断を確定します。

境界性悪性腫瘍だった場合、基本的には子宮、両側の卵巣と卵管、大網を摘出します。さらに悪性腫瘍の拡がり次第ではリンパ節の摘出、腸管や腹膜の切除が必要になることもありますので、覚えておいてください。

反対に卵巣腫瘍の種類と拡がり次第では、健康な卵巣や卵管を温存しておくことができます。そのため、妊娠を希望している場合は医師と相談してください。

悪性腫瘍

悪性腫瘍は卵巣腫瘍の種類と拡がりによって、手術後の化学療法の必要性や抗がん剤の種類などが決まります。

悪性腫瘍の90%以上を占めるのが「上皮性・間質性腫瘍(上皮性卵巣がん)」で、他に若い年代に多く見られる「胚細胞腫瘍」が数%、胃がんや大腸がんなど別のがんが転移してくることもあります。

もっとも多い上皮性卵巣がんの手術後の化学療法はタキサン製剤とプラチナ製剤を用いることが一般的です。タキサン製剤とプラチナ製剤とは抗がん剤の一種で、がんの分裂を阻止します。

手術のあと、この化学療法を受けた場合5年生存率は1期(卵巣のみ)で約90%、2期(骨盤内臓器のみ)で約70%、それ以上に進行した3期と4期になると約30%になります。

最近ではベバシズマブという抗がん剤が使われるようになりました。日本ではアバスチンという商品名で販売されています。ベバシズマブはこれまでの化学療法と併用することができ、生存率の向上に期待されています。

若い年代に多く見られる胚細胞腫瘍の場合「シスプラチン・エトポシド・ブレオマイシン」という3種類の抗がん剤を使って治療をするのが一般的です。

この治療を行うことで胚細胞腫瘍の予後は以前よりも格段に改善されるようになりましたが、腫瘍の進行が早いので出来るだけ早く治療を開始することをおすすめします。

卵巣腫瘍の予防法はある?チェック方法も徹底解説

卵巣腫瘍の原因はさまざまなことが考えられるため、効果的な予防法というものはありませんでした。
ただ、何もしないまま放置していると不妊の原因や悪性腫瘍でがんだった場合、命を落とす可能性もあります。

卵巣がんは肥満や動物性脂肪、喫煙などがリスクを高めると考えられています。卵巣がんにならないようにするためにも食生活や運動、体型などを改善しましょう。

卵巣腫瘍のチェックリスト

以下のチェックリストが1つでも当てはまった場合は卵巣腫瘍を疑いましょう。一度産婦人科で診てもらうことをおすすめします。

  • お腹周りだけが膨らんでいる
  • 最近、頻尿や便秘になった
  • 足だけがむくんでいる
  • 下腹部を触るとしこりがある
  • 腹痛や腰痛がある

卵巣腫瘍は早期発見・早期治療が大切です。診察に対して抵抗を感じ、受診しない方もいますが悪性腫瘍だった場合、生存率にも影響を及ぼしてしまいます。

ここでワンポイントそのため、年に1回は婦人科で検診を受けることをおすすめします。

まとめ

卵巣はさまざまな腫瘍ができやすいのですが、初期症状はないなど気づきにくい病気です。そんな卵巣腫瘍が近年、晩婚化や子供の減少などから増加傾向にあります。

腫瘍が大きくなって現れる症状も、卵巣の腫瘍が原因とは思えないものばかりなので気づきにくいかもしれませんが、放っておくと命に関わるかもしれません。

腫瘍には良性、境界性悪性、悪性の3種類があります。卵巣腫瘍の内約90%は良性ですが、約10%は悪性です。

悪性腫瘍だった場合、早期の治療が大切です。早期に治療を開始できるのと、できないのでは5年生存率が約50%以上も違ってきます。

早期発見・早期治療が大切なので、検診に行くのは面倒かもしれませんが年に1回だけでも受診することをおすすめします。

  • 卵巣腫瘍は気づきにくい病気
  • 腫瘍には良性、境界性悪性、悪性の3種類がある
  • 年々、卵巣腫瘍になる人が増えてきている
  • 悪性腫瘍だった場合のことを考えて早期発見・早期治療が大切