妊娠中にはお母さんが食べるものがお腹の赤ちゃんの栄養として使われます。これまで栄養バランスの取れた食事をしていた女性でも、妊娠すると赤ちゃんのためにこれまで以上に栄養を摂らなければいけないということです。
もちろんこれまで以上に栄養を摂ると言っても、妊娠中に特に必要とされる栄養素は妊娠前の栄養と少し違ってくるので、何を意識的に摂取すべきか知っておくことが大切です。これまで意識していなかった方は、妊娠を機会に必須栄養素について勉強しましょう。
妊娠中は、気を付けていてもつわりなどでしっかり食べられなかったり、逆に食べ過ぎたりしてしまうこともあります。食事だけでなくサプリも上手に使って妊娠中に必要な栄養素を補いましょう。
妊娠中の栄養は通常の食事+付加量を設定
妊娠中は妊娠前より多くの栄養素を必要としますが、まずは普段の摂取エネルギーを目安にしてください。妊娠中は母体が必要とするエネルギーが増えるとともに、お腹の赤ちゃんが成長するためのエネルギーも必要になります。
一般的に妊娠していない時の摂取カロリーを2200kcalしますが、身長や体重や運動量などもともとの個人差がありますし、妊娠後の体重の変化も個人差が大きいです。
妊娠前の体格をBMIで区分すると、BMI25.0未満の人は妊娠中期から1週間ごとに0.3~0.5㎏を目安に体重が増えるように栄養を増やしていきます。BMI25.0以上の人は肥満に区分されるので個別に対応する必要があります。
いずれにせよ、あまり数字にこだわり過ぎず、自分に適していると思う量を摂取してうまく体重をコントロールしましょう。
主食、おかず、果物、乳製品など具体的な摂取量は、厚生労働省の「妊産婦のための食事バランスガイド」を参考にしてください。
国が摂取を推奨する&付加量設定の栄養素一覧
妊娠中に摂取が推奨される栄養素と付加量のある栄養素については、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2015年版)」というガイドラインに詳しく掲載されています。
エネルギー量、たんぱく質、脂質の摂取量から、ビタミンやミネラルなど妊娠中に不足しがちな栄養素など注意したいポイントは多いですので、基本の摂取量にプラスする意識で摂取しましょう。
「葉酸」付加量・サプリから摂取する理由
葉酸は妊娠中に必要量が大幅に増大する栄養素です。厚生労働省でも葉酸の摂取を推奨していますが、その理由は、お腹の赤ちゃんを神経管閉鎖障害のリスクから守ることになるからです。
神経管閉鎖障害を発症すると、無脳症、髄膜瘤、二分脊椎などの異常を発することがあります。
葉酸は妊娠前からしっかり摂っておくべきです。なるべく妊娠の1カ月以上前から摂取して、妊娠3カ月ごろまでは意識的に増やしてください。
妊娠の1か月以上前から妊娠3か月までです (4) 。リスク低減のためには母体が受胎前から十分な葉酸を摂取している必要があるので、「妊娠を計画している女性、または、妊娠の可能性がある女性」(2) に対し、付加的な葉酸の摂取が望まれています。
葉酸の摂取量ですが、食事摂取基準の表に掲載されている量(18歳以上の女性で240μg/日)に、付加量として1日400μg摂取するのが望ましいとされています。
ただ、食事から摂取する葉酸は、摂取した半分の量しか体内で利用できないため、食事から摂取するなら1日に800μg摂取しなければいけません。
しかし、葉酸を多く含む肉(鶏・牛・豚レバーなど)や野菜(からし菜やホウレン草)をたくさん食べたところで、通常の食事ではこの量を賄うことは難しいです。
食事で摂取するの難しいんだ…。
そうです。そこで推奨されるのがサプリからの摂取です。葉酸サプリで上手に付加量を補ってください。
ただし、葉酸はたくさん摂取すればよいわけではなく、1日1000μgという上限があります。サプリで摂取する時はそれを超えないように注意してください。
「鉄」摂取理由(妊娠中期~)・付加量
鉄は、赤血球のヘモグロビンやさまざまな酵素を構成する要素として、細胞の呼吸や酵素の運搬に重要な役割を果たしています。
鉄が不足して起こる代表的な症状が貧血ですが、貧血によって運動機能や免疫機能が低下してしまうことがあります。妊娠中の女性や乳幼児は鉄が不足しやすいため、意識的に十分な量を摂取しなければなりません。
20~40代の女性の平均的な1日の鉄摂取量は6.6mgですが、月経のある女性なら通常でも10mgほど摂取することが推奨されています。それが、妊娠中期から出産に至るまでは1日21.5gと摂取量が増えます。
普段の倍以上摂取しなければなりません。鉄を多く含む豆類、貝類、肉類、藻類を意識的に食べましょう。
食事からの摂取で難しい場合はサプリで補うのもよいです。ただし、サプリでは過剰摂取にならないように気を付けなければなりません。
通常の食事で鉄の過剰摂取になることはまずありませんが、サプリならうっかり飲んでしまったために鉄の過剰症をおこすことがあります。
過剰摂取によって胃腸障害などを起こすことがあるので、1日の上限量(40mg)を超えないように注意してください。
「マグネシウム」摂取理由・付加量
マグネシウムは体内で300種類以上にも上る酵素の働きをサポートしており、栄養素の合成や分解、神経伝達、遺伝情報の発現などにかかわっています。
また、カルシウムとともに働き、血管を拡張して血圧を下げたり、血小板が凝集するのを抑えて血栓を作りにくくしたりします。
マグネシウムは、不足すると不整脈、虚血性心疾患、動脈硬化などのリスクを高めますが、妊婦が通常の摂取量に付加してまで摂取する必要はないとされています。
また、妊娠中にマグネシウムの摂取量を増やしても、特にお腹の赤ちゃんの病気のリスクを減らすなどのエビデンスは見つかっていません。
もちろん不足している方はマグネシウムも積極的に摂った方がよいですが、サプリなどで過剰に摂取すると下痢などを起こすことがあります。
食事から少々多めに摂ってもオシッコと一緒に排泄されるので特に心配はありませんが、腎臓の機能が低下している時は吐き気や血圧の低下などの症状が現れることもあるので注意してください。
「カルシウム」摂取理由・付加量
カルシウムは体内に最も多く存在するミネラルで、体重の1%から2%も占めています。体内のカルシウムの99%は骨と歯に存在しており、残りは血液や細胞外液に存在し、心機能、筋収縮、血液凝固などの役割を担っています。
カルシウムは妊婦さんが食事摂取基準に加えて摂取すべき栄養素とはなっていませんが、日本人が慢性的に不足しがちですので、不足しないように日ごろの食事からしっかり摂取しましょう。
食事摂取基準では、18歳以上の女性が摂取したいカルシウムの1日の推奨量が650mgとなっています。しかし、女性の平均的な摂取量が400~500mgと不足していますので、カルシウムを多く含む食品やサプリなどで補うようにしましょう。
カルシウムを多く含む食品には、植物性のものでエンドウ、ゴマ、干しヒジキ、切り干し大根など、動物性のものでサクラエビ、チーズ、しらす干し、ワカサギやメザシなどの魚があります。
「ビタミンA」後期以降に摂取する理由&付加量
ビタミンAは、レバーやウナギなど動物性食品に含まれているレチノールと、ホウレンソウやニンジンなど植物性食品に含まれているβカロチンの2種類に分けられます。
ビタミンAには粘膜を強くして病原菌の侵入を防ぐ働きがあり、風邪などの病気予防にもなります。妊娠後期には免疫力が低下しがちなので食事からしっかり補いましょう。
βカロチンは特に気にしなくても大丈夫ですが、動物性食品に多く含まれるレチノールを継続的に摂取したり、サプリなどで過剰摂取したりすると、肝臓に蓄積されて体から排出されにくくなってしまいます。
サプリで過剰摂取するとどうなるの?
過剰摂取によって体内に蓄積されたレチノールはお腹の赤ちゃんが奇形を発症するリスクを高めます。そのため、妊娠15週ぐらいまでは特に注意してください。
ビタミンAの摂取推奨量は、15~29歳の女性が650μgRE、30 069歳が700μgREとされています。食品に換算すると鶏レバーで約5g、ウナギの蒲焼で約50gです。
ご覧のようにちょっとの量で十分に摂取できます。健康に害のない最大限の量は18歳以上の女性で2700μgREとなっています。この量を超えないように注意しましょう。
「たんぱく質」摂取理由・付加量
たんぱく質は人間の体を構成する主成分です。皮膚も臓器も脳も、それに髪の毛や爪に至るまで皆たんぱく質でできています。
もちろん妊娠中にも不可欠の栄養素で、お腹の赤ちゃんの体を作るためにも意識的に摂取しなければなりません。たんぱく質の不足は成長障害や体力・免疫力の低下などにつながります。
たんぱく質には動物性と植物性の2種類があります。肉や魚、卵などの動物性たんぱく質、納豆や豆腐などの植物性たんぱく質のどちらもバランスよく摂取してください。
食事摂取基準によると、たんぱく質の1日の推奨摂取量は18~29歳の女性で50gです。妊娠初期には付加量はありませんが、中期ではプラス10g、後期ではプラス25g摂取することが推奨されています。
たんぱく質は体のあらゆる組織を形成する栄養素ですので、妊娠にかかわらず積極的に日ごろから摂取すべきですが、妊娠後期には不足しないように特に注意してください。不足すると妊娠中毒症のリスクが高まります。
「脂質 (n-6系脂肪酸)」摂取理由・付加量
脂質には悪いイメージを持つ方もいると思いますが、体のエネルギー源としてとても大切な栄養素です。細胞膜の成分でありホルモンの原料にもなります。ほかにも脂溶性ビタミンの吸収をサポートするなどの機能を持っています。
脂質には植物や魚に含まれる必須脂肪酸という種類があります。必須脂肪酸は構造の違いでn-6系脂肪酸とn-3系脂肪酸分かれており、n-6系脂肪酸はゴマ油やコーン油などの成分であるリノール酸やアラキドン酸などです。
細胞膜の流動性を高め、(特に神経系の)細胞の機能が働くのを助けます。妊娠中は徐々に脂質の摂取量を増やしていくことが大切です。
動物性脂質は過剰気味になるので増え過ぎないように気を付けなければなりませんが、n-6系脂肪酸は妊娠初期から、中期、後期にかけて徐々に増やしていきましょう。
食事摂取基準によるとn-6系脂肪酸の1日の摂取推奨量は、18歳以上の女性で8gですが、妊婦さんは9gとなっています。
「ビタミンC・ビタミンD」摂取理由・付加量
ビタミンCは妊娠中の摂取量が少ないと、貧血や手足・顔の腫れを伴う妊娠高血圧腎症のリスクが高まります。赤ちゃんが十分に成熟しないまま生まれてくることもあります。ですので、ビタミンCはしっかり摂取しましょう。
ビタミンCは水溶性のビタミンですので、過剰摂取してもオシッコと一緒に排出されるので特に心配する必要はありません。
食事摂取基準によると、18歳以上の女性に必要とされる平均量は1日85mgですが、推奨量は100mgとなっています。妊婦さんへの付加量は10mgですので1日110mgを目安にしてください。なお、授乳期には145mgが目安です。
ビタミンDの摂取理由・付加量
ビタミンDは脂溶性のビタミンで、脂肪組織に蓄積されて欠乏しにくいです。
しかし、代謝やカルシウムの吸収などで重要な役割を果たすビタミンであり、欠乏すると骨軟化症、妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群のリスクが高まります。
帝王切開となる率も高まると言われており、不足しないように食事からしっかり摂ることが大切です。
食事摂取基準によると、ビタミンDの1日の摂取量は18歳以上の女性で5.5mgですが、妊婦さんは1日7.0mgが必要とされています。耐容上限量は1日100mgです。
「ビタミンB1・ビタミンB2」摂取理由・付加量
手足の末梢神経から脳の中枢神経まで神経の働きを正常にする役割があるのがビタミンB1です。慢性的にビタミンB1が不足すると、脚気になるリスクが高まります。
また、ビタミンB1には食事で摂取する糖質をエネルギーに変換する役割を果たしており、妊婦さんの健康を維持するためにとても大切な栄養素です。
ビタミンB1の食事摂取基準によると、非妊娠時に推奨される量は1日1.1mgですが、妊婦さんには付加量が0.2mgとされるので、1日1.3mgを目安に摂取するとよいでしょう。
ビタミンB2の摂取理由・付加量
ビタミンB2は細胞を作って成長を促進させる働きを担います。粘膜や皮膚を生成したり維持したりする役目もあり、こちらも妊婦さんの健康を維持するために大切な栄養素です。
食事摂取基準によると、ビタミンB2は女性への推奨量が1日1.2mgとされていますが、妊婦さんは付加量が0.3mgです。1日1.5mgを目安に摂取してください。
なお、ビタミンB群はお互いに機能し合っています。それぞれが体内で独立して機能しているわけではないので、ビタミンB1だけ、ビタミンB2だけをたくさん摂取してもあまり意味はありません。バランスよくどちらも摂取してください。
「ビタミンB6・ビタミンB12」摂取理由・付加量
ビタミンB6は、酵素の働きを助ける補酵素としてアミノ酸の代謝をサポートします。免疫機能を正常に維持し、皮膚の抵抗力やヘモグロビンの合成、神経伝達物質の合成などを行います。
通常の食事でビタミンB6の過剰摂取はまずありませんが、感覚神経障害などの過剰症がありますので、サプリで摂取する時は摂取量に注意してください。
食事摂取基準によると、ビタミンB6の推奨量は妊娠期の女性で1日1.2mgです。妊婦さんは付加量が0.2mgありますので、1日1.4mgを目安にしてください。
ビタミンB12摂取理由・付加量
ビタミンB12も補酵素として働きます。たんぱく質の合成や脂肪酸・アミノ酸の代謝にかかわっているほか、葉酸とともに正常な赤血球を骨髄で作る働きも持っています。
ビタミンB12の不足は脳や脊髄の白質障害や末梢神経障害のリスクを高めるので、推奨される量はしっかり摂取するようにしてください。
食事摂取基準によると、成人女性は1日2.4mgの摂取が推奨されていますが、妊婦さんには付加量が0.4mgあるので、1日2.8mgを目安に摂取しましょう。
「パントテン酸」摂取理由・付加量
ビタミンの一種であるパントテン酸は、酵母の成長を促進させる物質です。パントテン酸の欠乏でラットの成長阻害やニワトリの皮膚炎が認められためビタミンと考えられるようになりました。
しかし、パントテン酸は補酵素としてクエン酸、アミノ酸、脂肪酸の代謝にかかわる物質で、エネルギーの生産において大切な役割を果たしています。
積極的に摂取すると脂肪肝を防ぐことにもなるので、意識しておくとよいでしょう。
食事摂取基準によると、パントテン酸の1日の目安量は通常時で4mg、妊婦さんで5mgとされています。
平成27年度の国民健康・栄養調査によると、女性の平均摂取量が5.15mgですので、ふつうにバランスの良い食事をしている限り、特にサプリなどで補う必要はありません。
「ビオチン」摂取理由・付加量
ビオチンは水溶性ビタミンの一種でビタミンB群に属します。別名ビタミンHとも呼ばれますが、ビオチンという名前の方が一般的です。皮膚の炎症を防ぐなどの役割を果たしています。
ビオチンの不足により、リウマチ、免疫不全症、糖尿病のリスクが高まることがわかっています。
食欲不振、吐き気、むかつき、顔面蒼白、憂鬱感のほか、萎縮性舌炎や鱗状の皮膚炎などの症状が表れやすいともされています。
ビオチンはさまざまな食品に含まれ、さらに、腸内細菌でも合成される物質ですので、ふつうに食生活を送っている人なら欠乏することはありません。
食事摂取基準によると、ビオチンの目安量は女性が50μg/日です。妊婦さんへの付加量はありません。水溶性ビタミンなので過剰摂取してもオシッコと一緒に排出されます。あまり摂取上限量を気にする必要はありません。
「亜鉛」摂取理由・付加量
亜鉛は人の体内に約2g存在するミネラルです。筋肉や骨、皮膚、肝臓や膵臓などさまざまなところに存在して、多くの酵素を構成しています。おもな働きは、細胞分裂を助けたり赤血球の膜を作ったりなどです。
亜鉛不足は酵素不足につながり、赤血球が壊れて貧血を起こすリスクが高まります。そのほか、味覚障害や皮膚炎、免疫力の低下などさまざまな症状を引き起こす恐れがあります。
なお、妊娠すると酸っぱいものが食べたくなるのは、亜鉛不足が一つの要因です。
亜鉛が摂れる食品って何があるの?
亜鉛が豊富に含まれる食品には牡蠣がありますが、妊婦さんが生で食べるのは食中毒のリスクがあるのであまりおすすめできません。
海藻や大豆・ナッツなど豆類にも豊富に含まれているので、そちらでバランスよく補いましょう。特に納豆がおすすめです。
食事摂取基準によると、1日の亜鉛の摂取推奨量は18歳以上の女性で8mgです。妊婦さんは2mgの付加量があるので1日10mgを目安にしてください。なお、耐用上限量が1日35mgに設定されています。
通常の食事で過剰摂取になることはまずないですが、サプリの摂取には注意してください。胃の不調、貧血、銅の欠乏などの過剰症があります。
「銅」摂取理由・付加量
銅は体内に70~100mg含まれるミネラルです。そのうち半分が骨と骨格筋に存在し、残りは肝臓、脳、血液などに存在します。
腸管から吸収された銅は、肝臓に送られてたんぱく質と結合し、その後、全身に運ばれて酵素の活性などさまざまな働きを行います。
銅はタコやイカなどの魚介類に多く含まれるほか、レバーや豆類にも多く含まれるミネラルです。銅の不足は通常の食生活を送っている人ならまずないとされています。
ただ、経腸栄養で栄養管理を長期行っている患者さんや人工栄養の未熟児では欠乏することがあるようです。銅が不足すると、貧血や毛髪・骨の異常、白血球の減少、神経系や心血管系の異常、成長障害などが起こります。
食事摂取基準によると、銅の1日の摂取推奨量は18歳以上の女性で0.8mgとされています。妊婦さんには0.1mgの付加量があるので、1日0.9mgの摂取を目指しましょう。
「ヨウ素」「セレン」摂取理由・付加量
ヨウ素は甲状腺ホルモンの主成分で体内に約10μg存在しています。基礎代謝の促進がおもな作用で、たんぱく質の合成や脂質の代謝も促進しています。成長ホルモンとも関連する栄養素です。
昆布などの海藻や魚介類に多く含まれるヨウ素は、日本人が不足することのない栄養素と言われています。気を付けなければならないのが過剰摂取です。
食事摂取基準によると、ヨウ素の1日の摂取推奨量は18歳以上の女性で130μg、妊婦さんには付加量が110μgあります。妊婦さんは2000μgが1日の耐用上限量です。
毎日昆布だしで料理を作っていると過剰摂取になる可能性があります。妊娠初期はだしの種類を変えるなど工夫してください。
セレンの摂取理由・付加量
セレンは腎臓や肝臓に含まれる微量元素で、強い抗酸化作用を持ち、細胞の酸化を防ぐのに役立っています。肉類、卵、魚介類に多く含まれるもので、通常の食生活を送っている限り不足することはまずありません。
セレンの1日の摂取推奨量は18歳以上の女性で25μgですが、妊婦さんには5μgの付加量があるので、30μgを目安にするとよいでしょう。
耐用上限量は18~29歳の女性が330μg、30~49歳までの女性が350μgとなっています。過剰摂取には注意が必要です。
食事摂取は難しい…
以上見てきたように、妊婦さんはさまざまな栄養素を通常よりかなり意識的に摂取する必要があります。しかし、推奨される量を通常の食事のみで摂取するのはなかなか難しいでしょう。
特に1日400μgの摂取が推奨される葉酸は、食事から摂取した分は体内では50%しか利用されないため、実質的には1日800μg摂取しなければならないことになります。
胎児の神経管閉鎖障害のリスク低減のための付加量400μg/日は、加工食品などに添加されているモノグルタミン酸型葉酸、プテロイルモノグルタミン酸の量として示したものであり、これを食事性葉酸に換算すると2倍の800μg/日に相当します (1) (3) 。
葉酸を豊富に含む野菜や肉を積極的に食べたとしても、毎日これだけの量を摂取するのはなかなかできることではありません。
妊婦さんにはつわりなど体調の変化で食べたくても食べられない時もあります。ですので、食事の工夫を第一として、足りない栄養素を補うために行政機関推奨の葉酸サプリも上手に活用しましょう。
ただし、安易にサプリに手を出すのは危険です。葉酸サプリはたくさん出回っていますが、規格も品質も一定ではなく、含有成分や混合物はさまざまだからです。
成分同士が相互作用を起こしたり、過剰摂取になったりする可能性もあります。サプリを選ぶ時は、お医者さんや栄養士さんに相談して、原材料や含有量の表示がちゃんとしたものを選ぶようにしてください。
まとめ
妊娠中はお母さんが摂取する栄養素がお腹の赤ちゃんの栄養になるため、ふだんよりかなり意識してさまざまな栄養素を摂取しなければいけません。これまで栄養バランスの良い食生活を送ってきた方でも、さらにプラスして摂取した方がよい栄養素があるということです。
厚生労働省では、妊婦さんが非妊娠時より付加して摂取するべき栄養素について、「日本人の食事摂取基準」というガイドラインで詳しく解説しています。現在、妊娠中の方、これから妊娠する予定の方はぜひ一度目を通しておいてください。
エネルギー量、たんぱく質、脂質の正しい摂取量や、不足しがちなビタミンやミネラルなどについて、食事摂取基準では一つずつ説明されています。
ビタミンAの過剰摂取には注意が必要ですが、妊婦さんはそれぞれの栄養素を妊娠していない女性よりたくさん摂取すべきというのが基本です。
ただ、なかには通常の食事だけでは十分な摂取が難しい栄養素もあります。つわりなど体調の変化で思うように食事できないこともあるのが妊婦さんですから、食事で不十分な時は葉酸サプリなども上手に活用して補ってください。
ただし、サプリの品質や成分はさまざまですので、安易に手を出さず、医師や管理栄養士に相談して選ぶようにしてください。
- 妊娠中の栄養素は通常の食事に加えて付加量がある
- 厚労省の推奨量を食事から摂取するのは難しい
- 栄養補給には品質の良い葉酸サプリがおすすめ