基礎知識

気をつけて…妊娠中のカルシウム不足は産後にあなたを襲う!

カルシウム不足に気をつけて

妊娠中に摂るべき栄養素として有名なのが葉酸ですが、「カルシウム」の摂取も大切なことを知っていましたか。

カルシウムは葉酸と違って、牛乳などから簡単に摂取することができるのですが、ほとんどの人が不足しています。カルシウムを不足したままにすると母体だけではなく、赤ちゃんにまで悪影響を及ぼしてしまうかもしれません。

今回はカルシウムについて、どれくらい足りていないか、どれくらい摂ればいいのか、不足した場合の症状も解説します。

妊活・妊娠中に
必要な「葉酸」を安心・安全に

※JNFは日本ニュートリション協会のことです。

妊娠前後に摂取すべき葉酸は、ママにも赤ちゃんのためにも欠かせない栄養素。妊娠時は葉酸の他にもビタミンやミネラルが必要になり、厚労省も葉酸サプリを推奨。そんな葉酸サプリを専門家が評価!あなたに合ったものをチョイスしましょう。

カルシウムとは?

カルシウムとは体の中でもっとも多く含まれるミネラルで、体重の1%~2%を占めています。成人だとおよそ1kgがカルシウムです。

そのうちの99%は骨や歯に存在し、残りの1%は血液や細胞外液などに存在し、血液が固まるのを阻止したり、筋肉の収縮などに大きく関わっています。

ここでワンポイントつまり、残りの1%で筋肉を動かしたり、脳からの命令、ホルモンと酵素の放出などのことを行っているのです。

血液の中に含まれているカルシウムは一定の濃度で保つようになっています。この一定の濃度がとても狭い範囲で、濃度が低下しだすとホルモンを分泌して骨からカルシウムを溶かし、濃度を一定のところに戻してしまうのです。

カルシウムが十分に摂れていないと一定の濃度に保つことができず、次々に骨からカルシウムが溶け出し、骨をボロボロにしてしまいます。

カルシウムって骨と歯だけのイメージだったわ。

そうじゃな。99%は骨と歯の形成だから、ある意味間違ってはいないぞ。ただ、実はホルモンの分泌などにも働いていたのじゃ。

カルシウムの働き

カルシウムを摂取することで健康維持、病気の予防や治療につながるといわれています。

これから紹介するものの中には「カルシウム摂取で効果があった」という意見や「カルシウム摂取とのつながりが薄い」という意見など分かれているものもあります。ご了承ください。

カルシウム摂取によって期待できる働きは以下になります。

  • 骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の予防
  • がん
  • 心血管障害の予防
  • 血圧の調整

骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の予防

骨は30歳ごろに強度がピークになるように骨の破壊と、新しい骨の形成をくり返しています。これをくり返していくことによって骨密度の強度は増していき、骨密度が高ければ年齢を重ねても骨の密度の減少は抑えられるのです。

しかし、カルシウムの摂取量が少なければ新しい骨の形成ができず、骨の破壊が進んでいきます。その結果、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)を引き起こす危険性もあるのです。

ここでワンポイント骨粗鬆症とは骨密度が低くなる病気で転倒やぶつけたりしただけで骨折してしまいます。骨粗鬆症は腕や足だけではなく、股関節や肋骨、脊椎など重要な部位がなるかもしれません。

この骨粗鬆症は産後に引き起こしやすく「妊娠後骨粗鬆症」と呼ばれることもあります。

産後は授乳期となり、母乳からお母さんの摂った栄養素を赤ちゃんに与えるので、ほとんどの方がカルシウムを不足してしまう。その結果、妊娠後骨粗症状になるかもしれないのじゃ。

がんの予防

とある研究結果でカルシウムをたくさん摂ると結腸直腸癌のリスクを下げるか、もしくは前立腺がんのリスクを上げるのではないかと研究されました。

現在、明確な答えは出ていないので「がんの予防ができる」とは言えませんが、カルシウムを適度に摂るとがんの予防ができると期待してもいいのではないでしょうか。

心血管障害の予防

いくつかの研究結果によると十分な量のカルシウムを摂取することで心臓の病気(例:不整脈、虚血性疾患など)や脳卒中の予防ができる可能性があると報告されています。

心血管障害も「がんの予防」と同様にカルシウムが心血管障害のリスクに影響を及ぼすか分かっていないのじゃ

反対にカルシウムをサプリメントから大量に摂取した場合、心臓の病気のリスクが上がるとも報告されています。サプリメントから大量に摂取しなければ、心血管障害のリスクを下げることに期待してもいいのではないでしょうか。

血圧の調整

複数の研究によると、カルシウムの必要摂取量を摂ることができれば、高血圧のリスクを下げることができると報告されいます。

ある1つの実験では無脂肪・低脂肪の乳製品、野菜、果物を多く含む食事をすることで血圧が低下することが明らかになりました。

妊娠中の高血圧は、赤ちゃんの低体重や発育不良の原因になりえます。最悪の場合は死産の原因にもありえます。

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妊活から産後までカルシウムは必要?

赤ちゃんを希望していない時でも重要な栄養素ですが、妊活から産後になるともっと摂ることが大切になります。

そういえば、カルシウムと妊娠って関係あるイメージがないね。

そうじゃな。カルシウムを摂ることは大切と言われているが、妊娠中でも必要だと詳しく説明をする人がいないからかもしれんの。

妊活

妊活中はカルシウムを摂ることによって妊娠しやすくなるなどの効果はありませんが、妊娠したときのために摂る必要があります。

妊娠前にカルシウムを十分に蓄えておくことで、妊娠したときに赤ちゃんの骨や歯を形成するときに使われます。

妊娠中

妊娠に備えてカルシウムを摂取することも大切ですが、妊娠中も摂取することが大切です。お腹の中の赤ちゃんは骨や歯を作るのに、母親のカルシウムを貰って作ります。

赤ちゃんが成長するとともに母親の中にあるカルシウムは減っていきます。普段、カルシウムの摂取量が足りていないと、妊娠後に骨粗鬆症になるかもしれません。

ここでワンポイントとくに妊娠中はつわりなどの妊娠による症状で食欲を失くすこともあると思います。そのようなときこそカルシウムは不足しやすいので注意しましょう。

産後

産後もカルシウムを摂取する必要があります。むしろ産後がもっとも大切です。赤ちゃんは母乳からさまざまな栄養素を受け取るのですが、このときカルシウムも送るので必要です。

生まれて間もない赤ちゃんは骨がしっかりとしていないので、骨を強化するためにもカルシウムをたくさん必要とするのじゃ。

妊活~産後まで必要摂取量はどれくらい?

妊活から産後までカルシウムをたくさん摂取する必要があると説明してきましたが、実は妊娠していないときと必要摂取量は変わりません。

厚生労働省が推奨している摂取量は「食事摂取基準(2015年)」によると650mgでした。なぜ、妊娠中に追加で摂る必要がないのかというと、妊娠するとカルシウムの吸収量が増加するからです。

厚生労働省の「平成28年国民健康・栄養調査」による現在、女性が摂取できている量は以下になります。

年齢 平均摂取量
20代 396mg
30代 439mg
40代 439mg

見てわかるとおり、必要摂取量の650mgに対してまったく足りていません。妊娠すると吸収率は上がりますが、上がってもその分を赤ちゃんに送るので足りないことには変わりません。

注意してね!妊娠中につわりが酷い方だと摂取するのがさらに難しくなるでしょう。そのため、カルシウムを積極的に摂る必要があります。

不足した場合の症状は?赤ちゃんへの影響は?

まず、赤ちゃんへの影響ですが、妊娠中はカルシウムを不足しても基本的に赤ちゃんへの影響はほとんどありませんので安心してください。

よかった!特に影響はないんだね!

出産までは問題ないのじゃが、ビタミンDとカルシウムを不足した状態が続くと小児の「くる病」になるかもしれんから注意が必要じゃ。

小児のくる病には、足がO脚やX脚、成長障害などの症状があります。産後はくる病になる可能性もあるので、カルシウムに加えてビタミンDも摂るようにしましょう。

赤ちゃんへ優先してカルシウムを送るため、母親のカルシウム不足は深刻になります。普段の食事で足りていないうえに優先して赤ちゃんへ送るのでさらに不足してしまいます。

カルシウムを不足すると母体に以下の症状が現れるかもしれませんので、チェックしてください。

  • 骨粗鬆症(こつそしょうしょう)
  • イライラ
  • 高血圧
  • 肥満
  • 免疫異常
  • 糖尿病

こんなにも症状があるんだね…

すべての症状を注意してほしいのじゃが、とくに注意してほしいのが「高血圧」と「肥満」「糖尿病」じゃ。これらはどれも赤ちゃんに悪影響を及ぼしてしまうのじゃ。

高血圧

高血圧になると「妊娠高血圧症候群」の可能性があります。

妊娠高血圧症候群になると赤ちゃんは発育不良になる可能性があり、2500g以下の低体重児になることもありえます。また、最悪の場合は死産になる危険性もあるのです。

肥満

肥満になると、妊娠22週目よりも前に終わってしまう「流産」になる可能性があります。

流産の原因は明確に決まっていないから、肥満になっても起こらないこともあるぞ。ただ、肥満によって起こる可能性はあるから注意するのじゃ。

また、肥満になると糖尿病などの生活習慣病を引き起こす可能性もあります。そのため、肥満になって得はなく損しかないので、難しいと思いますができるかぎり平均体重になるように少しだけでも痩せるといいでしょう。

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糖尿病

妊娠中に糖尿病になると「早産・流産」になる可能性があります。それ以外にも赤ちゃんの発育不良や発育不全など最悪の場合は命を落とすかもしれません。

糖尿病は難しいことに自覚症状がほとんどありません。すぐにトイレに行きたくなるなどの症状があるのですが、これは妊娠中の症状でもあるので判断が難しくなります。

ここでワンポイント気づきにくいことなので医師に相談をしてみるのもいいと思いますよ。

カルシウムを過剰摂取した場合の危険性

カルシウムの耐容上限量は「2500mg」と設定されているので食事からの摂取だけでは過剰摂取になることはほとんどありません。2500mgは牛乳約2ℓに相当します。

ただ、サプリメントから摂取すると過剰摂取になる可能性があります。過剰摂取による症状は以下になります。

  • 尿路結石の形成
  • ミルクアルカリ症候群
  • 他のミネラルの吸収の邪魔

ミルクアルカリ症候群とは体が要求しているカルシウムの摂取量を超えて、排出が追いつかない状態のことをいいます。

元気がなくなる、多飲多尿、便秘などの症状が現れます。出産時は体力が必要なのでカルシウムを過剰摂取して、元気がなくなるなどのことにならないようにしましょう。

カルシウムを過剰摂取するとリンやマグネシウムなど他のミネラルの吸収を邪魔してしまいます。他のミネラルも健康を維持するためには必要なことなのでバランスよく摂取することが大切です。

カルシウムだけじゃダメなのね!

そうじゃ。カルシウムを含めたミネラルは一つだけをたくさん摂るのじゃなく、バランスよく摂る必要があるのじゃ。

カルシウムはどうやって摂ればいい?

カルシウムを効率よく摂取するためには牛乳をはじめとした乳製品、納豆や豆腐などの大豆、小魚やわかめなど海のもの、チンゲンサイなどの緑黄色野菜がおすすめです。

とくに緑黄色野菜なら葉酸も摂取できるからおすすめじゃ。牛乳を1日1杯飲むだけでも十分じゃぞ。

ただ、妊娠中となるとつわりや匂いに敏感になるなどの症状で、食事をすることが困難な方もいるでしょう。その場合は、サプリから摂取してもいいと思います。

注意してね!ただ、サプリからの摂取となると簡単に過剰摂取になる恐れがあるので、サプリが決めた用法用量は守るようにしましょう。

まとめ

以上、カルシウムの大切さについて解説をしました。妊活から産後まで葉酸のようにプラスして摂る必要はありませんが、現在不足している人はたくさんいます。

カルシウムを不足したままにすると母体への影響が大きく、最悪の場合は赤ちゃんにまで影響を及ぼすかもしれません。

牛乳や小魚など食事から摂取するのが理想ですが、妊娠中摂取するのが難しい場合はカルシウムを摂ることができるサプリメントを利用してみてはいかがでしょうか。ただ、過剰摂取には注意してください。

  • カルシウムは通常よりもプラスして摂る必要はないが、不足している人が多い
  • カルシウム不足は母体だけではなく、赤ちゃんにまで悪影響の可能性も
  • 食事からカルシウムを摂取するのが理想
  • 摂取が難しいならサプリメントを考える。過剰摂取には注意が必要。