女性は、妊娠中はもちろんのこと、妊活中からスタートして授乳が終わるまで、自分が口にするものすべてに細心の注意を払わなければなりません。
葉酸や鉄分をはじめとしてさまざまな栄養素を十分に摂取しておく必要がありますし、赤ちゃんに害になるものはほんのわずかでも摂りたくないと思う方がほとんどなのではないでしょうか。
しかし、現代社会で普通に食事をしていると、驚くほど多くの添加物を摂取してしまいます。そして、その一つが酸化防止剤だといえるでしょう。酸化防止剤は、読んで字のごとく食べものが酸化してしまうのを防いでくれるとても有益なものに違いありません。
とはいえ、赤ちゃんのことを真剣に考える女性なら、酸化防止剤を摂らずに済むのであれば摂りたくないと考える女性がほとんどなはずです。そこで、酸化防止剤を妊娠中に摂っても問題がないのかを解説します。
一般的に使われている酸化防止剤とは?
食べものはフレッシュな内にいただければ良いのですが、そのまま置いておけば劣化して品質が変わってしまいます。その原因は微生物が腐敗を起こさせることが挙げられる他、空気中に存在する酸素が原因にもなり、これを酸化といいます。
特に油脂の酸化は品質が大きく変化してしまうのはわかりやすく、見た目からも臭いからもすぐにわかるはずです。そして、酸化したことで過酸化物が生じ、体内に入れば消化器系に異常をきたすこともあります。
酸化防止剤は、このような品質の劣化を防ぐ意味で用いられます。しかも、自分自身が酸化することで、その食品の劣化を食い止めてくれるのです。
特に油脂類が酸化されると色や風味が悪くなるばかりでなく、酸化によって生じた過酸化物による消化器障害を引き起こすこともあります。また、褐変や退色、栄養価の低下の原因にもなります。こうした酸化による品質の低下を防止するのが酸化防止剤です。酸化防止剤は、食品成分に代わって自身が酸化されることによって、食品の酸化を防ぐ作用を示します。
そんな私たちの生活に欠かせない酸化防止剤は一般的に使われているものがいくつかあります。
L-アスコルビン酸
L-アスコルビン酸とは私たちの生活に身近にあるビタミンCのことです。L-アスコルビン酸の役割は、食べものの風味が劣化するのを防いだり、褐色に変化してしまうのを効果的に防いでくれることです。
また、ビタミンCといえば生きていく上で欠かせない大事な栄養素の一つでもあることから、栄養強化の目的に食品に添加されることもよくあります。そして、その場合は配合成分として表示する義務はなくなります。
L-アスコルビン酸は、果物の加工品や漬物、お惣菜など幅広い食品に使われています。ジャガイモやトウモロコシなどのブドウ糖を発酵するなどして生成され、食品の中に含まれると自身が酸化することで酸化剤として働きます。
エリソルビン酸
エリソルビン酸も酸化防止剤として一般的に使われていますが、使用量に制限はないものの酸化防止剤以外に使ってはいけないことになっています。また、イソアスコルビン酸という別名を持っています。
エリソルビン酸は前述したアスコルビン酸と名称が似ていることからもわかるように共通する部分があるのですが、原子数や種類などが同じというのみで構造は異なる異性体です。
また、安全性が高いのはアスコルビン酸と同様ですが、ビタミンCのような作用はほとんど期待できません。エリソルビン酸の原料となっているのはブドウ糖です。
ブドウ糖を発酵するとケトグルタル酸と呼ばれる成分になり、さらにいくつかの工程を経て、最後に精製すると出来上がります。よく使用されるものとしては、果実や魚介の加工品、農産物の缶詰、漬物などが挙げられるでしょう。
ジブチルヒドロキシトルエン
ジブチルヒドロキシトルエンも一般的に使われている酸化防止剤の一つです。脂溶性であることや安定性が高いことが特徴で、他の酸化防止剤であるアスコルビン酸などと併用されることが多くあります。
また、ジブチルヒドロキシトルエンは、バターやマーガリンなどの食用油脂、チューインガムなどの他、魚介の塩蔵品や乾製品、冷凍品、煮干しなどに使われます。
ジブチルヒドロキシトルエンの抱える問題といえば、発がん性があることが指摘されていることでしょう。しかし、これはラットを使った動物実験の結果であり、人に発がん性が認められたということではありません。
動物実験は危険な反応が出るまで成分がどんどん投与されていきます。ジブチルヒドロキシトルエンの実験でも、通常の数万倍という非常に多い投与量の結果であったことが原因といわれています。
通常の数万倍で危険な反応だったら普通に食べていたら大丈夫?
そうです。1日の摂取許容量(ADI)さえしっかり守っていれば、人が健康を害する危険は低いともいわれています。
トコフェロール
トコフェロールは、L-アスコルビン酸がビタミンCでおなじみのように、私たちの生活に非常に身近な存在といえるビタミンEのことです。植物に存在する成分で、種子などの油脂が酸化するのを防止する役割があります。
トコフェロールが使用される食品は、バターなどの油脂類の他、フライ製品や即席めん、菓子類などです。トコフェロールは、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)と比べると抗酸化作用はやや劣りますが、安全性の高さから幅広く使われていることが特徴です。
また、ビタミン剤やサプリメントとしても人気があり、大変身近であることから知名度が高いというのも安心できる要素となるでしょう。ただ、価格は他よりもかなり高いというのがデメリットといえます。
とはいえ、その分、不必要に使われて過剰摂取に陥るという心配がないので安心ということもできるでしょう。
ブチルヒドロキシアニソール
ブチルヒドロキシアニソール(BHA)は、人の食べるものにも使われていますが、どちらかといえばドッグフードやキャットフードに使われる酸化防止剤として知られているのではないでしょうか。
ブチルヒドロキシアニソールやアスコルビン酸と併用されることもよくあります。ブチルヒドロキシアニソールは、人の食べるものとしては、バターなどの油脂の他、魚介の乾製品、魚介塩蔵品、乾燥裏ごしいもなど幅広く使われています。
ジブチルヒドロキシトルエンと同様に発がん性という問題があるのがブチルヒドロキシアニソールの難点といえそうです。発がん性があるのはこの2つだけです。
とはいえ、発がん性のリスクが高くなったのは、ジブチルヒドロキシトルエンで実施された動物実験と同じく、実験中に投与された量があまりにも多いことが原因といえます。
なぜ酸化防止剤は危険といわれている?噂を紹介
酸化防止剤は、食べ物に添加することで酸化を防いでくれます。例えばリンゴはカットして置いておくだけで切り口が茶色に変わってしまいますが、これも酸化現象の一つです。
そして、食べものの品質が劣化する大きな原因の一つが酸化なので、酸化防止剤を使用することは私たちにとってはとても有益なことといっても良いでしょう。しかし、酸化防止剤の多くは健康を害するという噂が絶えることはありません。
その他の添加物もそうですが、マスメディアなどが大々的に取り上げられると、酸化防止剤の危険な面ばかりがクローズアップされることはよくあります。また、そのような報道の中ではさまざまな危険をにおわせる噂が紹介されるのが常です。
例えば、がんになるとか染色体に異常をきたすといったものがそうでしょう。
「がんになる」
医学が発達した現代の世の中においては、がんはもはや不治の病ではないといわれています。しかし、それでも毎年多くの人が命を落としているのががんです。
がんになる酸化防止剤というと、ジブチルヒドロキシトルエンやブチルヒドロキシアニソールが挙げられます。非常に安定して酸化を防止してくれる一方で発がん性があることが問題視されている成分です。
カップ麺の容器が溶けて健康に影響すると聞いたことあるけど、それも同じ?
カップ麺の容器から溶け出す成分が健康を害するという話しはよく聞かれますが、これは安定剤として使われているジブチルヒドロキシトルエンが溶け出す現象をさしています。
ワインは他のお酒と比べて非常に酸化しやすいために酸化防止剤は不可欠ともいえる存在なのですが、海外では過発酵を防止したりぶどうを殺菌するためにもよく使われています。
一昔前までは、赤ワインに含まれるポリフェノールが健康に大変良いということで摂取が好まれていた時期もありました。
しかし、フランス国立がんセンターが赤ワインを飲み続けるとがんになる可能性が飛躍的に高まることを発表したのを受け、フランス政府は国民に禁酒キャンペーンを打ち出しました。そして、その背景には亜硫酸ナトリウムがあると考えられています。
「染色体異常を引き起こす」
また、酸化防止剤の中には染色体異常を引き起こすものがあるという噂もあります。染色体異常とは、染色体の一部に異常をきたしたり、欠損、過剰といった症状が出た状態です。
このような症状が出た場合、赤ちゃんは生存すること自体が難しくなってしまうこともあり、流産や死産という結果になることも少なくありません。
染色体異常を引き起こす危険性がある酸化防止剤は、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)とブチルヒドロキシアニソール(BHA)の2つです。
ちなみに、ジブチルヒドロキシトルエンについては危険性が指摘されているのは染色体異常を引き起こすことだけではありません。血清コレステロールレベルが上昇したり、赤ちゃんの遺伝子損傷、また、無眼症といった症状も報告されています。
もう一つのブチル・ヒドロキシ・アニソールも、バターやマーガリンなどの食用油脂の酸化防止によく用いられています。
染色体異常の他には、潰瘍形成や消火器からの出血、肝臓がうっ血するといった症状が現れることが報告されています。さらに、発がん性があるという報告もあります。
添加物の摂取は基本的には安全
このように、添加物にはさまざまな悪い噂があることから、イメージが良いとは言い切れないのが事実といえそうです。しかし、添加物の摂取というのは基本的には安全ということができます。
その理由の一つは、添加物が開発されるにあたっては国によって定められた大変厳しい基準があるというのが挙げられます。
この基準は諸外国と異なる場合もありますが、わが国で安全と認められなければ添加物を製造することはできず、それを使うこともできないのです。
また、天然に存在する食べ物だからといって必ずしも体に良いものばかりで構成されているわけではありません。その逆に、添加物がなければ食品の品質が維持できないことから、添加物を使うことが必ずしも悪いことだらけというわけでもないのです。
動物実験を行って安全性を確認している
このように、酸化防止剤にはさまざまな噂があります。マスメディアが取り上げる時によく紹介されるのが、摂り過ぎればがんになるといった危険性でしょう。
がんは未だに多くの人の命が助かっていないのが現状なので、がんになると聞けば拒否反応が出るのも無理のないことかもしれません。しかし、それは人が摂り過ぎた結果なのではありません。動物を使って実験を行った結果です。
しかも、動物実験は、危険性が現われるのがどのくらいの摂取量なのかを知るためにも行われます。
動物実験で安全が確認されているんだね。でも、実際に危険が現れているのに大丈夫なの?
ほとんどのケースでは途方もないような量を毎日摂取し続けた結果、重篤な症状が現れたということなのです。
添加物を製造するメーカーでは、目的に沿った商品を開発したら、発売する前にまずは国に製造してよいかどうかを問う申請をしなければならないことになっています。申請後、国は決められた機関に依頼して動物実験を行います。
そして、十分に安全性が確認されたものにしか、国は製造してよいという許可を出すことはありません。つまり、市場に出回っている商品に含まれる添加物は、国が安全と認めたものだというわけです。
ただし、輸入された商品に関しては、製造された国の基準に従うので必ずしもこの限りではありません。しかし、輸入品も国内に入ってくる際にはチェックされることになり、その基準は日本のものとなります。
ADI(1日摂取許容量)を設定している
また、動物実験によって健康を害するとされる最大摂取量が確認されると、それをもとにして人が1日に摂取できる許容量が設定されます。この容量はADIと略されることがあります。
ADIとは、簡単にいうと、人が一生かけて毎日食べ続けたとすると健康を害するとされる1日当たりの最大摂取量のことです。実験は、人に近い存在である哺乳類で実施するとはいえ、人が摂取したのと同じということにはなりません。
そのため、まずは動物実験で得られた最大摂取量を10分の1にします。そして、人の間での差も考慮に入れます。例えば、同じアルコール量を摂取したとしてもすっかり酔ってしまう人もいればまったく酔わないという人もいます。
この差を埋めるのに、出た値をさらに10分の1にします。つまり、動物実験で健康を害するとなった最大摂取量の100分の1がADIということになります。
危険といわれている成分は天然にも存在している
実は天然に存在するものにも健康を害する成分がごく普通に含まれています。例えば野菜がそうです。野菜も繁殖してより多くの子孫を残すためには外敵から身を守らなければなりません。そのために種子や葉に有害物質を含んでいます。
生のタケノコなどは、かなり時間をかけて茹でる必要がありますが、これは身が固くて食べられないからではありません。
タケノコにはタキシフィリンという有害物質が含まれており、もしも摂取してしまうと呼吸困難やめまいなどの症状を起こすことがあります。これを無害化するために何十分もかけて茹でているのです。
また、ナスやトマトにも有害物質が含まれています。ナスは葉っぱや茎にソラニンという有害物質が含まれており、非常に強い成分であることが知られており、隣で育てていた野菜に移ることも珍しくありません。
添加物を避けることによるストレス症状の方が深刻
添加物にまみれた食生活などと聞くと、好ましいと思う人はほとんどいないでしょう。添加物などは、避けられるものなら避けた食生活を送った方が健康的と誰しもが思うのではないでしょうか。
しかし、私たちの食生活には、もはやある程度の添加物は欠かせないということがいえます。そのため、過度に避けようとすると逆にストレスをためる一方になってしまいます。
ストレスって一切ないほうがいいの?
ストレスもある程度であればやる気の源となるものですが、あまりにもストレスが大きいと健康を害してしまうことがあるので注意が必要です。
例えば、会社に行こうとすると胃がキリキリするとか、仕事がうまくいかないと眠れなくなるというのはストレスがたまっていることが原因の一つです。また、このようなわかりやすい反応が出ないことも珍しくありません。
なんとなくだるい、寝てもまったく疲れが取れない、といった症状は不定愁訴と呼ばれることがありますが、このような場合もまたストレスが原因になっていることが多いのだといいます。
さらに、ストレスもあまりにひどいと、うつ病になってしまうこともあります。そして、うつ病も症状が重くなればなるほどに治りづらくなってしまいます。薬の量も増えてその分、添加物を摂取するといったことにもなりかねないのです。
妊娠中は食べられるものを食べるようにしましょう
妊娠中はおなかの赤ちゃんがしっかり成長するために、非常に多くの栄養素が必要となります。中には葉酸のような普段でも摂りづらい栄養素もあり、お母さんは本当に食事に気を付けなければなりません。
しかし、あまりに気を使いすぎるのも胎教に良くないので、妊娠中は食べられるものを食べるようにしようと切り替えてみるのもおすすめです。
また、添加物は工夫次第である程度摂取量を少なくすることができます。ハムやソーセージなどはフライパンで焼くのではなく、切れ目を入れてからボイルしてしまえば、添加物の多くがお湯に溶け出してくれます。
よく噛んで食べることで、唾液の解毒作用を利用することができます。唾液にはペルオキシターゼと呼ばれる酵素が含まれているからです。さらに、大腸にまで進んでしまった添加物は、食物繊維をたくさん摂っていれば速やかに排出させてくれます。
添加物は避けれない!妊娠中に必須の葉酸サプリにも含まれている
やはり、現代社会では思うように添加物を避けることはもはや不可能といって良いのでないでしょうか。例えば、妊娠中に葉酸サプリを摂取することは厚生労働省も推奨していることですが、そんな葉酸サプリにさえ添加物は含まれています。
サプリメントは、その安定した形を保つのにも添加物が使われていますし、原材料を混ぜて均一にするのにも添加物が使われています。添加物を一切使わずにサプリメントを製造することなどはできないのです。
葉酸サプリはさまざまなメーカーから発売されており、それぞれで使用している添加物もまたさまざまです。そのため、出来るだけ自然に近い原料に由来した添加物を使用しているメーカーのものを選ぶというのも一つの方法といえるでしょう。
また、添加物の表記がなかったり、あっても表記を読むのが難しい輸入ものを利用するよりも、日本語で明記されている国内製の葉酸サプリを選ぶのがおすすめです。
もちろん、食事から必要な量を摂れるに越したことはありませんが、葉酸は調理中に損失される割合が高いこともあって、普段でも摂りづらい栄養素の一つです。
このような状況では、もしもサプリメントの添加物を避けようとすれば、肝心の葉酸の摂取不足を招くことになりかねないのです。
まとめ
妊娠中に気になる食べものの一つが酸化防止剤です。でも、酸化防止剤を一切摂らずに生活しようとすれば、新鮮なものを毎日のように購入してきて速やかに調理してすぐに食べなくてはなりません。
酸化防止剤が使われていない食品は、空気中の酸素に触れているだけで酸化して品質が変化してしまうからです。確かに、ジブチルヒドロキシトルエンやブチルヒドロキシアニソールといった酸化防止剤は、がんになるという話しがついて回ります。
そんな悪影響が赤ちゃんに及ぶのは何としても避けたいところです。また、妊娠中はとにかく安心できるものだけを食べて出産に臨みたいと誰しもが思うところです。しかし、もはやまったく酸化防止剤に頼らずに生活していくことは不可能といって良いでしょう。
気にしすぎるあまりストレスをためてしまうのでは、おなかの赤ちゃんに良いことは一つもありません。
- 品質の劣化を防ぐために酸化防止剤が使われている
- 酸化防止剤を摂りすぎると「がん」になると言われている
- 食品に使われている添加物は国が安全だと認めている
- 添加物を避けることよりもストレスのないようにすることが大切
- 妊娠中は添加物を避けるより食べられるものを食べる