つわりなどが終わり、身体面と精神面が少し落ち着いてくる妊娠中期以降ですが、そのまま無事に出産まで辿りつけるのかはわかりません。実は妊娠中期以降になると誰にでも起こりえる「胎盤早期剥離」という病気を発症する可能性もあるのです。
この病気は放置しておくと母親と赤ちゃんの命にも関わってきます。そんな危険な胎盤早期剥離ですが、葉酸を摂取することで予防に期待ができるのです。
そこで、今回は胎盤早期剥離とはどのような病気なのか、本当に葉酸で予防はできるのか詳しく解説していきます。
胎盤早期剥離とは
胎盤早期剥離とは出産するまえに正しい位置にある胎盤が一部剥がれ、その結果、赤ちゃんが死亡すると同時に母親には「播種性(はしゅせい)血管内凝固症候群」が発生します。
命にも関わる危険な病気ですが、発症頻度は全妊婦の0.5%~1.3%ほどだといわれています。とくに妊娠32週目以降になると発症頻度は高くなってしまうのです。
症状は「軽症・中等症・重症」の3つに分けられ、重症度は全妊婦の0.1%ほどだといわれています。症状がほとんどない軽症のものは診断されていない可能性もあるので、それも合わせると頻度はもう少し高いのかもしれません。
もうすぐ、出産なのに突然発症するのは怖いね。
発症率は低いのじゃが、急激に進行していくから注意が必要じゃぞ。
播種性(はしゅせい)血管内凝固症候群とは?
播種(はしゅ)とは、畑に種をまくことを意味し、この場合、種に相当するのが血栓です。DICは、血管内に無数の血栓がばらまかれた、凝固の反応が非常に高ぶった状態の病気を指しています。
簡単に説明すると、播種性(はしゅせい)血管内凝固症候群とは「DIC」ともいいます。DICとは血管の中に無数の血栓(血液が固まったもの)が広がっていく病気です。
全身の血管に血栓が広がっていくことによって細い血管だと詰まり、血の流れを悪くしてしまいます。血の流れが悪くなることで酸素や栄養が満遍なく届かなくなり、肝臓や肺などの臓器に障害が起こります。
胎盤早期剥離の原因は?
残念なことに胎盤早期剥離が何が原因で起こるのかはわかっていません。胎盤早期剥離の成因とその管理によると現状、発症するリスクをあげるものだと考えられているのは以下になります。
- 過去に胎盤早期剥離になったことがある
- 妊娠中毒症・高血圧などによる合併妊娠
- 急激な子宮内圧の低下(羊水過多・双子や3つ子などの多胎)
- 子宮壁への衝撃(打撲、外回転術)
- 過短臍帯(かたんさいたい)へその緒が極端に短い
- 子宮奇形、子宮腫瘍(子宮筋腫)
- 喫煙
- 薬物(コカイン・アスピリン)
- 高齢妊娠・多産
- 代謝異常(葉酸欠乏・高ホモシステイン血症)
- 感染(絨毛羊膜炎)
- 下大静脈圧迫によるうっ血
- 胎盤血管腫
リスクをあげる可能性はこれだけ多くのものがあるのです。妊娠中毒症や高齢妊娠など一部のものは避けようがありませんが、喫煙や打撲、薬物など一部の物は避けることができます。
タバコを吸わないようにしたり、腹部の打撲にならないように注意したりすることができます。薬物のコカインは妊娠していなくても摂取してはいけません。
ただ、炎症をしずめるアスピリンのような医薬品の中にも妊娠中の摂取を避けなければいけないものがあります。そのため、医薬品を服用している場合は担当の医師に相談してから服用しましょう。
こんなにもリスクがあるなんて、どうしよう…
たしかに、こうやって見るとリスクは多いが、難しく考えず健康的な食事や安全に気をつけていればいいのじゃ
胎盤早期剥離は2人目にも影響はある?
胎盤早期剥離のリスクを見てもらえばわかるとおり、残念ながら2人目以降もなってしまうリスクはあるのです。
2人目以降もなってしまうんだ。気をつけないといけないね…
リスクの高さも他の喫煙などのリスクに比べて高くなっています。ただ、上記参考サイトによると、もう一度発生する確率は「5.5%~16.6%」といわれています。
しっかりと予防や健康に気を使っていけば確率は下げられるでしょうし、妊娠中に不安な気持ちでいると体に悪影響なので、1度経験していると心配かもしれませんが明るく過ごすようにしましょう。
胎盤早期剥離の症状
- 腹痛またはお腹の張り
- 性器出血
- 腰痛
- 胎動の減少
- 下痢
胎盤早期剥離になると主に腹痛と性器出血の症状が多く見られます。どれぐらい剥がれているのか、どの場所が剥がれているのかによって重症度は変わってきます。
背中側に胎盤がある後壁だと胎盤剥離になったとき腰痛の症状が、前壁だとお腹側になるので腹痛の症状がでてきます。ちなみに前と後ろの違いに問題はありません。
剥離した部分によっては剥離した部分と子宮に間に血腫が形成され、出血を見ない場合もあります。そのため、出血していなくても重症化することがあり、診断が遅れる可能性もあるので注意しましょう。
出血していなくても重症化するなんて怖いね…
そうじゃな、気づかないところ進行していることも考えられるから、気になったらすぐに医師に相談するのじゃぞ。
胎盤早期剥離の診断基準
上記で説明した胎盤早期剥離の症状は、切迫早産や出産前の兆候と似ているため判別が難しいです。軽症であれば無症状で診断されないこともあるといわれています。
診断では性器出血と腹痛で相談した妊婦さんは胎盤早期剥離だと疑うことから始まります。妊婦さんが早産期に入っている場合は切迫早産との比較しながら、どちらなのか特定していかなければなりません。
検査方法は「超音波検査(エコー)・血液検査・赤ちゃんの心拍数測定」の3つを行います。胎盤早期剥離だと疑う血腫が発見されても赤ちゃんの心拍数や子宮の収縮、血腫が大きくなるなど悪化する気配がなければ、週数次第では妊娠を継続することもあります。
胎盤早期と診断された場合、母子の状況を考えつつ、原則的には急速遂娩というものが行われる可能性もあるぞ。
胎盤早期剥離によって母親にDICが認められた場合、速やかにDICの治療も開始されます。DICの治療を行いつつも、分娩が終わるように指導する可能性もあります。
(※急速遂娩とは母親の全身状態を維持したまま、速やかに分娩も終了させることが原則としてあります。赤ちゃんの救命が可能だと判断した場合は短時間で終わる吸引分娩・鉗子分娩を行います。時間が必要なら帝王切開術が行われます。)
胎盤早期剥離の治療法はある?
胎盤早期剥離だと診断されたとき赤ちゃんは機能不全も同時に発症していることが多く、急速に母子の状態が悪化していくかもしれません。
このまま、悪化していくと赤ちゃんの死亡するリスクが高いため、すぐに赤ちゃんを分娩する必要があります。そのため、診断されても治療ではなく分娩の手術が行われ、術後は輸血などが行われます。
手術の必要のない軽症だと判断されても、治療は行わず経過観察のみとなっています。胎盤早期剥離の治療は行われませんが、DICなどの合併症の治療が行われます。
分娩と合併症の手術が行われるんだ。
胎盤早期剥離の予防法
胎盤早期剥離の予防法は原因が分かっていないので、これといった効果的な予防法はありません。しかし、リスクを上げるものはわかっているので、少しでも可能性を下げるためにもそちらの対策をしましょう。
上記説明したリスクで対策できそうなものはしていくといいでしょう。喫煙しているのであれば、タバコの購入を控える。
転倒や誰かとぶつかって腹部の打撲にならないように、調子が悪ければ無理せず外出を控える。
予防よりも胎盤早期剥離のことを覚えておき、早期発見・早期治療してもらうために常に疑い、診断してもらうのがいいじゃろう。
胎盤早期剥離は葉酸で予防はできる?
胎盤早期剥離のリスクとして葉酸欠乏症があります。そのため、葉酸を欠乏しないようにすればリスク低減をすることができます。
実際に海外の研究「Folic acid: influence on the outcome of pregnancy.」によると「葉酸を欠乏することによって赤ちゃんと胎盤の細胞分裂を損なう可能性がある」報告されているのです。
そのため、葉酸を摂取するのが推奨されているのですが、葉酸は体内での吸収率が悪く、食事だけでは十分な量を吸収することができません。
あまりに吸収するのが難しいので厚生労働省「神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について」という発表で「葉酸はサプリで摂取するように」と初めて呼びかけたほどです。(参考:)
なぜ、吸収するのが難しいのかというと葉酸は熱や光に弱い水溶性ビタミンのため、調理過程で半分ほど失ってしまいます。
しかし、葉酸サプリならすでに変換した葉酸を摂取しているので100%ではありませんが、食事から摂取するよりもたくさん摂取することができます。そのため、厚生労働省もサプリから摂取することを推奨しているのです。
サプリになると手軽に摂取することができるので、量を守らなければ過剰摂取になることもあります。そこには注意が必要です。
- 葉酸を不足すると胎盤早期剥離になる可能性がある。
- 葉酸の摂取は食事からでは難しいのでサプリから摂取する必要がある。
- サプリから摂取するときは過剰摂取に注意しなければならない。
まとめ
以上、胎盤早期剥離と葉酸で予防はできるかについて解説をしました。胎盤早期剥離の発症率は低いものの、最悪の場合は母子ともに命を落とす可能性もある危険な病気です。
原因が不明なので予防は難しいのですが、少しでもリスクを低減するためにも喫煙の禁止や腹部の打撲を避ける、葉酸の摂取などできることから始めていきましょう。
何度も言いますが「胎盤早期剥離」は命に関わるものです。早期発見できれば最悪の事態も回避できる可能性があります。
少しでも腹部に違和感があったり、性器出血があった場合は、すぐに担当の先生に相談するのじゃぞ。