妊娠初期にはビタミンAは過剰摂取は厳禁だといわれています。胎児の臓器を生成している時期に摂りすぎると、先天的な障害が起こる可能性が出てくるからです。
しかし、妊娠後期や産後は、逆にビタミンA不足に陥る可能性があります。妊娠中、特に初期は出来るだけ避けていた栄養素ではありますが、後期や産後は過剰摂取にならない範囲で補いたい栄養素なのです。
けれども、妊娠中に悪影響、といわれると後期であっても産後であってもビタミンA摂取に戸惑ってしまう人も多いでしょう。妊娠後期や産後の身体に、ビタミンAはどんな働きをしてくれるのでしょうか。
妊娠後期のビタミンA摂取の目的
妊娠後期はさまざまな栄養が必要になります。この時期は、ぐんぐん身体が急成長する時期です。今まではわずかな成長でしたが、出産まで3ヶ月をきると、出産に耐えうるだけの力を身につけるために身体がどんどん成長していくのです。
そして、胎児が成長するために必要となる栄養の一つがビタミンAです。妊娠中はビタミンAは摂るべきではないといわれていますが、それは初期の話です。大切なのは過剰摂取に陥らないということであり、少量であれば初期でも問題ありません。
そして、妊娠後期になるとビタミンAも胎児が蓄える必要があります。もちろん妊娠後期でも過剰摂取は危険だといわれていますが、初期のように出来るだけ避ける栄養素という訳でもありません。
妊娠後期である8ヶ月から10ヶ月の間に、胎児は母体を通してビタミンAを蓄えます。そのため、ビタミンAを避けることなく、適度に補う必要があるのです。
胎児へのビタミン A の移行蓄積量を付加する必要がある。37~40 週の胎児では、肝臓のビタミン A 蓄積量は 1,800μg 程度であるので、この時期の体内ビタミン A 貯蔵量を肝臓蓄積量の 2 倍として、3,600μg のビタミン A が妊娠期間中に胎児に蓄積される 16,17)。
妊娠後期はビタミンAの推奨量に付加量設定
通常時、そして妊娠初期から中期までは、ビタミンAは700μgが推奨量でした。しかし妊娠後期になると、出産に向けて胎児もビタミンAを蓄える必要があります。
もちろん母体の健康のため、栄養補給のため、ビタミンAが必要となります。そのため妊娠後期になると、ビタミンAの推奨量は若干増えて780μgになります。
ちょっと増えるだけだったら簡単に摂取できそうだね。
普段の食事から80μg増やすだけ、というとわずかな量に感じるかもしれませんが、実は成人女性はもともとビタミンAが不足状態にあるため、実際は数字よりも難しいので注意してください。
20代から30代の女性のビタミンA平均摂取量は500μg未満です。そのため、平常時や妊娠中期までの推奨量にすら達していないのです。
妊婦のビタミンA過剰摂取は胎児の奇形に繋がる
妊娠中もビタミンAは摂取するべき、特に妊娠後期は意識してビタミンA摂取量を増やすべき、だといわれていますが、もちろん過剰摂取はいけません。
特に初期から規定量を満たそうとすると、誤って過剰摂取に陥ってしまう可能性があります。そして、過剰摂取をすると胎児に影響を及ぼす可能性のある危険な栄養素なのです。
ビタミンAは多くの女性が不足しがちな栄養素であり、意識して摂るべきである、しかし妊娠初期は摂りすぎてもいけないという、とても難しい栄養素です。
では、どうすれば適量のビタミンAを摂ることができるののでしょうか。胎児の奇形につながらない、胎児に悪影響を及ぼさないようにビタミンAを摂るためには、どのような方法をとるべきなのでしょうか。それには、ビタミンAの種類や取り方が関係していました。
ビタミンAは2種類!注意すべきは「レチノール」
ビタミンAは大きく分けて2種類あります。動物性のビタミンAであるレチノールと、植物性のビタミンAであるβカロテンです。
一般的にビタミンAだといわれているものは、レチノールです。レチノールはさまざまな食品に含まれているだけではなく、その栄養価の高さ、美容効果の高さが注目を集めていて、スキンケアなど美容商品に含まれる機会も増えました。
そのため、レチノールを美容のために摂取している女性も増えています。レチノールの美容効果はスキンケアとして使うだけではなく、サプリメントから補ってもいい効果をもたらしてくれます。しかし、過剰摂取に陥りやすいのもレチノールなのです。
妊娠初期に気付かずにレチノール配合サプリメントを飲んでしまう女性もいるかもしれません。妊娠中の肌トラブルが不安でサプリメントを継続して飲む場合もあるでしょう。しかし、妊娠中に注意したいビタミンAが、レチノールなのです。
動物性由来ビタミンA(レチノール)&多く含む食品
レチノールとはビタミンAの一種で、動物性由来の食品に多く含まれています。ビタミンAは粘膜や皮膚を健康的に保つ、視覚機能などの改善効果が期待できる、動脈硬化予防などの働きが知られていますが、同じくレチノールにもそれらの働きがあります。
そして、レチノールは油溶性の成分なので、水に溶けることはありません。沢山摂りすぎると体内で排出されることなく残り、悪い影響を及ぼす可能性があります。そのため、妊娠中はもちろん健康的な状態であっても、レチノールの過剰摂取は推奨されていません。
そんなレチノールはレバーに多く含まれています。特に鶏肉のレバー、豚肉のレバーは妊娠中にはおすすめできない食品です。一度食べるだけでも、かなりの量のレチノールを摂取することになります。
ビタミン A の過剰摂取は、ビタミン A を含有する薬剤を大量に服用するか、例えばレバー等食品の中でもビタミン A を多量に含有する食品を摂取することにより発生することがあります3)。
鶏肉や豚肉のレバーの他に牛肉のレバー、あんこうの肝、うなぎの肝、うに、ぎんだら、あなご、鶏ハツ、すじこなどには多くのレチノールが含まれています。
いずれの食品も日常的に食べることはありませんが、好きな人は頻繁に食べたいと思うはずです。妊娠初期には推奨しない食品であり、後期でも食べすぎには注意をしましょう。
植物性ビタミンA(βカロテン)で補う
βカロテンは、植物性のビタミンAの一種です。植物性なので、主に野菜を中心に多く配合されています。レチノールと同じビタミンAの一種ではありますが、こちらは植物性であり、過剰摂取をすることで身体に害がある栄養素ではありません。
妊娠後期はビタミンAの適度な摂取が推奨されていますが、ビタミンAであればレチノールでもβカロテンでもどちらでも問題ありません。そのため、妊娠中のビタミンAはβカロテンから補うようにしましょう。
βカロテンは、上限設定なしの成分で過剰摂取の心配はありません。食品からであれば、意識せず好きなだけ摂っても身体に悪い影響は及ぼしません。
植物性食品に含まれるビタミン A 供給源は主にβ-カロテンですが、β-カロテンのプロビタミン A としての過剰障害は知られていません。
そもそもβカロテンは、食品からであればどれだけとっても過剰摂取にならない程度の量しか含まれていないのです。そのためβカロテンが含まれているにんじん、ほうれん草、ピーマンなどを意識して食べることをおすすめします。
緑黄色野菜もしくは妊娠後期に適した葉酸サプリでビタミンAを摂取
妊娠中、特にビタミンAが必要な妊娠後期は、緑黄色野菜を意識して食べるようにしましょう。緑黄色野菜にはビタミンAの一種であるβカロテンを一、ビタミンや食物繊維など体にいい栄養素がたっぷりと含まれています。
妊娠後期になると体重の増加が気になる方が多いはずです。また、妊娠中は便秘になってしまう方も多いのではないでしょうか。緑黄色野菜を意識して食べることで、便秘解消や体重の急激な増加を食い止めることが出来ます。
緑黄色野菜を食べたほうがいいのはわかったけど、野菜が苦手な人はどうしたらいいの?
もし、緑黄色野菜が苦手という人やなかなか食べることが出来ないという人は、サプリメントからの摂取もおすすめです。
ビタミンAは、たとえβカロテンであってもサプリメントからの摂取はあまり推奨されていません。しかしビタミンA特化ではなく、葉酸系サプリメントなど、妊娠中に推奨されているサプリメントに含まれている量であれば、過剰摂取に陥る可能性も低いでしょう。
そのため、妊娠中のビタミンA補給、および各種栄養補給には、葉酸系サプリもおすすめです。葉酸サプリは初期のみで辞めてしまう人もいますが、後期だからこそ必要な栄養もたっぷりと含まれているサプリなのです。
ビタミンAの不足量は最も多い&付加量設定
妊娠中はもちろん、産後も栄養補給はとても大切です。特に産後はビタミンA不足に陥る女性がとても多いようです。そのため意識してビタミンAを補うようにしましょう。
産後は母親が栄養を補給しても、出産後なので子供に栄養が行き届くという訳ではありません。しかし、産後は忙しく食事もままならない、母乳育児で栄養がどんどん失われていく、という女性がとても沢山います。
母親のビタミンA不足が危惧され、中にはビタミンA欠乏症に陥ってしまう方もいるそうです。現代日本でビタミンA欠乏症に陥ることはほとんどありませんが、産後の女性は忙しさのせいで、ビタミンA欠乏症に陥る可能性もあるのです。
もちろんビタミンAを取ったからといって母乳の栄養価があがる、母乳の出に関わる、という訳ではありません。しかし、健康的な状態を維持するためにも意識して摂るようにしましょう。ビタミンAは、最低135、最高600ほどの摂取が推奨されています。
産後はビタミン(レチノール)を食べても大丈夫?
妊娠中、特に妊娠初期はレチノールは厳禁といわれていました。レチノールは摂ると確実に悪影響という訳ではありませんが、安全を考慮して極力食べないようにするべきです。
ただし産後は違います。産後はレチノールを食品から摂っても問題ありません。もちろんレチノールを多く含み、妊娠初期は避けるべきだといわれていたウナギ、レバー、肝なども食べて問題ないでしょう。
ウナギやレバー、肝などは本来は栄養が豊富で適度な摂取量であれば問題ない食品だといわれています。産後は栄養不足になりがちなので、栄養補給もかねてレチノールを多く含む食品も摂取をするべきです。
実際に、出産後の入院中の食事にウナギなどが出る病院もあるほどです。それだけ栄養豊富で、産後に必要な栄養も補うことが出来る食品という訳です。レチノールを注意するべきなのは妊娠中だけなので、産後は問題なく摂ることが出来ます。
ビタミンA(レチノール)で注意すべき食品の症状と事例
ビタミンA(レチノール)で注意すべき食品の症状と事例を紹介していきましょう。
レバーのビタミンA(レチノール)は過剰摂取のリスクあり
レチノールを多く含む食品として有名なのが、レバーです。鶏肉や豚肉のレバーは食品の中でもトップクラスにレチノールを含んでいます。
しかしレバーは栄養豊富な食品でもあります。高たんぱくで低脂質、ミネラルもビタミンも豊富に含まれている食品です。
また、産後に不足しがちな鉄分も多く含まれています。産後は母乳で育児をする人も多いでしょうが、母乳は母体の血液が主成分として作られています。母乳育児をすればするほど、体内の水分と血液がどんどん失われていくのです。
そんな鉄分不足、栄養不足を補ってくれるのが、レバーです。ただし過剰摂取はいけません。健康に良い、産後必要な栄養を補うことが出来るレバーではありますが、レチノールは過剰摂取をしても体外に排出されることのない成分です。
レチノールを過剰摂取するとどうなるの?
過度に摂取をしすぎると手足の痛みやめまい、発疹などの症状を招く可能性があるので注意をしましょう。
うなぎはビタミンAよりも脂肪分が多く乳腺炎に注意
レバー以外にレチノールを豊富に含む食品といえば、うなぎです。うなぎも栄養豊富で、好んで食べる人も多いでしょう。しかしレチノールの含有量が多いため、妊娠中、特に初期はうなぎは食べないほうがいいといわれています。
産後は適度なレチノールの摂取が推奨されているので、うなぎも問題なく食べることが出来ます。栄養補給にも適切な食品といっていいでしょう。
しかし、うなぎは脂肪分が多い食品なので、その点で注意が必要です。脂肪分が多い食品を食べると、母乳が出にくくなる、詰まりやすくなるなどのトラブルが起こりやすいといわれています。あくまで食べ過ぎたらいけない程度ではありますが、注意をしましょう。
授乳期は葉酸の推奨量が妊娠中期・後期よりも減少する
葉酸は妊娠中、特に初期に摂るべき栄養素だといわれています。妊娠間もない段階から葉酸を摂ることで、さまざまなトラブルから胎児を守ることが出来ます。そのため妊娠初期にサプリメントなどから葉酸を摂取する方が多いでしょう。
葉酸は妊娠中に摂るべき栄養素だと思い、産後は葉酸サプリメントの摂取をやめてしまう人もいます。しかし、葉酸は産後も摂取が推奨されている栄養素です。
葉酸はとても体にいい栄養です。妊娠中期、後期も必要ではありますが、中期後期よりも特に摂るべき時期が、産後です。産後はとても身体が疲労した状態になっていて、特に産後一ヶ月の間は身体を元の状態に戻すための修復期間です。
この時期に葉酸をしっかりと摂ることで、細胞の再生を助け、身体の代謝を促進し、早期回復を行うことが出来ます。もちろん産後は忙しくて十分な栄養を摂ることが出来ない時期なので、葉酸サプリメントから必要な栄養を補うことも出来るでしょう。
葉酸サプリでビタミンAも同時に摂取できるものがおすすめ
妊娠初期の葉酸サプリは、ビタミンAが配合されていないものが推奨されています。これは、妊娠初期はビタミンAを摂るべきではない、サプリメントから摂る必要ないといわれているからです。
一方産後はビタミンAの摂取も推奨されています。ビタミンAを摂ることで、疲労している身体の回復を早めたり、免疫力を高める効果が得られるからです。
ビタミンAと同じく、産後に必要とされている栄養素が葉酸です。妊娠中に摂るべきといわれている栄養ではありますが、産後にも不可欠な栄養なのです。
そのため、産後にも葉酸サプリメントを摂るようにしましょう。そして妊娠初期とは違い、産後はビタミンAも含まれている葉酸サプリメントをおすすめします。
妊娠初期と産後では、身体に必要な栄養素も変わってきます。産後は出来るだけ沢山の栄養をしっかりと補い、身体を出来るだけ早く回復させることが大切です。そのために必要な栄養が、葉酸とビタミンAなのです。
葉酸サプリメントにはさまざまな種類があります。産後対応、産後推奨の葉酸サプリメントもたくさんあります。産後は、産後に適した葉酸サプリを選ぶようにしてください。
まとめ
妊娠前、妊娠初期から産後にかけて、ずっと同じ葉酸サプリメントを飲み続ける人が多いかと思います。信頼の出来る安全な商品を飲み続けることは大切ですし、妊娠中の癖で産後も継続して同じ葉酸サプリメントを飲み続ける人も多いのではないでしょうか。
しかし、葉酸サプリは時期に合わせて使い分けることをおすすめします。妊娠初期と産後だけではなく、妊娠の期間中にも必要な栄養量は変わってきます。
また、妊娠初期と産後間もない時期は、いずれも栄養不足が懸念される時期です。前者はつわりで、後者は新生児の育児で十分な栄養を確保することが難しいでしょう。だからこそ、葉酸サプリメントの出番です。
栄養をしっかりと摂るために葉酸サプリを利用しよう
栄養をしっかりと摂らなければいけない時期に栄養不足ではいけません。だからこそ、葉酸サプリメントを取るようにしましょう。
ビタミンA、レチノールは妊娠初期は摂取が不安視されている栄養ではありますが、産後はむしろ積極的に摂るべきです。産後はとても大変な時期です。
身体を少しでも早く回復するためにも、レチノールや葉酸をしっかりと摂るようにしましょう。食事からなかなか摂ることが出来ない時期なのでサプリメントも取り入れながら身体の回復につとめてください。
- 妊娠後期から胎児の成長のためにビタミンAを通常の食事に加えてプラスして摂取する必要がある
- 過剰摂取をしてしまうと胎児の奇形に繋がる危険性があるため注意が必要
- ビタミンAにはレチノールとβカロテンの2種類あり、レチノールの摂取に注意しなければならない
- 妊娠後期から産後にかけて栄養をしっかりと摂るためには葉酸サプリを利用する