現在妊活中であるとか、妊娠中である、また産後で子育て真っ最中であるという女性は特に自分のため、赤ちゃんのために栄養をたっぷり摂らないといけません。
私たちの体は毎日の食事から栄養素を摂り健康を保っていますが、不規則な食生活などで十分な栄養が摂れないこともあります。
体を動かすためには三大栄養素であるタンパク質、脂質、糖質が必要ですが、これらが十分働くためにはビタミンやミネラルが無くてはなりません。ビタミンはとても重要な栄養素ということです。
ビタミンには多くの種類があるのですが、ここで注目していくのは水溶性ビタミンのビタミンB1です。
妊活中から妊娠中、産後までの間にビタミンB1は女性の体にどれくらい必要なのか、また妊活中から妊娠中、産後までの女性にどんな働きをするのかを解説していきます。
ビタミンB1はなぜ妊娠中に必要なのか?
ビタミンB1は水溶性ビタミンで、水に溶けやすい性質があります。以前は国民病と言われていた脚気は、ビタミンB1が不足して起こると言われています。ビタミンB1が不足すると、神経や脳の働きに影響が出て何らかの障害が生じるのです。
もしビタミンB1が不足すると、糖質をうまくエネルギーにできなくなるため食欲がない、だるい、疲れやすいといった夏バテのような症状が現れます。
三大栄養素(タンパク質、糖質、脂質)の力を発揮させるためにはビタミンB1が必要なのです。妊娠中は自分の体だけでなくお腹の赤ちゃんにも栄養を送ってあげなければならないので、特に意識して摂るようにしたいものです。
ただ、妊娠初期から中期はつわりのある人が多いでしょう。吐き気などで食欲が無くなるつわりだと栄養不足になることが多いので注意が必要です。
つわりで思うように食事が摂れない場合は、サプリメントをうまく利用するのも良いでしょう。ただし、サプリメントをあれこれ併用するのは良くありません。妊娠中でも安心して飲めるものを選び、つわりの間を乗り切るようにしましょう。
ビタミンB1は、普段の食事で過剰摂取になることはありません。もしサプリメントなどで過剰に摂取してしまった場合でも、水溶性ビタミンなので過剰な分は体外に排出されます。ビタミンB1の過剰摂取による健康障害はありません。
ビタミンB1を不足すると夏バテみたいになるんだ。赤ちゃんには影響ないの?
直接影響することはないが、食欲がなくなることで赤ちゃんに栄養がうまく届かず、成長できないことに繋がるから気をつけないといけないのじゃ。
ビタミンB1とは?どんな働きをする?
ビタミンには水溶性と脂溶性がありますが、ビタミンB1は水溶性ビタミンの一つになります。ビタミンB1はビタミンの中で一番始めに発見されたものです。
科学的にいうと、チアミンという名前の化合物であり、ブドウ糖をエネルギーに変える重要な役割のものです。
また、ビタミンB1はチアミンがリン酸に1つくっついたチアミンモノリン酸、2つくっついたチアミンジリン酸、3つくっついたチアミントリリン酸がありますが、これらはすべてビタミンB1に消化された後吸収されるので、ビタミンB1とほぼ同じ活性を持っています。
ビタミンB1の働きは、体内での糖質の代謝と、脳や神経の働きを正常に保つことです。私たちは糖質(お米やパン、麺類、砂糖など)を摂りますが、これらをエネルギーにするために必要なのがビタミンB1なのです。(参照:健康長寿ネット「ビタミンB1の働きと1日の摂取量」)
エネルギーにするために糖質をたくさん摂ったとします。その時にビタミンB1が不足しているとエネルギーに変えられないため、体には乳酸という疲労物質が溜まり、疲れやすくなります。
また、脳や神経の働きを正常に保つのには多くのエネルギーが必要です。エネルギーが不足するとイライラしたり集中力が途切れたりと、精神が不安定になります。肝臓や腎臓の機能も低下するため、胃腸障害を起こす可能性もあります。
このように、ビタミンB1は私たちの体にとても重要な役割があるものだと分かります。不足すればたちまち体が不調になりますし、体を維持していけなくなります。
ビタミンB1が不足しないよう、毎日の食事メニューの見直してみましょう。意識してビタミンB1を多く含む食材を食べるようにし、もしどうしても不足するようならサプリメントを利用するのも良い方法です。
脳や神経の働きを正常に保つのにビタミンB1が必要なんだね!
そうじゃ。カルシウムを摂っているのにイライラしたり、集中力が途切れるならビタミンB1不足を疑うといいじゃろう。
ビタミンB1が妊娠中に不足する原因と症状について
ビタミンB1は健康を維持するために必要不可欠なものです。しかし、体内で作り出せないため、食物などから摂取しないといけません。
妊娠中は特にビタミンB1の摂取が重要だと言われていますが、この時期に摂取が不足してしまう人が意外と多いのです。
なぜ妊娠中にビタミンB1が不足してしまうのか、その原因とビタミンB1が不足するとどのような症状が表れるのかを見ていきましょう。
ビタミンB1が不足する原因と、不足した時に出る症状を理解しておけば、自分なりに対処でき、ビタミンB1不足を回避することができるでしょう。
不足する原因は「食事からの摂取不足」「糖質の多い食品やアルコールを多量摂取」
ビタミンB1が不足してしまうのは、食事から十分な量が摂取できないことや、糖質の多い食品やアルコールの摂りすぎでビタミンB1を多量に使ってしまうという原因があります。
妊娠中はアルコールの摂取は控えますから、アルコールの多量摂取はここでは当てはまりませんが、食事から十分摂れていない、糖質の多い食品を摂りすぎるのは妊娠中でも十分あり得るでしょう。
妊娠中には、個人差はあるもののつわりがある人が多いです。吐き気がして食欲が無くなるとか、同じものしか食べられなくなるというように、食生活が乱れてしまうことがあります。
つわりの間はパンばかり食べていたとか、ジャンクフードと言われるものが無性に食べたくなってそればかり食べていたという妊婦さんもいますから、栄養が偏る可能性はあるでしょう。
つわりのほとんどは妊娠後期になると治まってくるものですが、出産直前までつわりに苦しむ人もいるようですから、ビタミンB1不足に陥りやすいと言えます。
妊娠中に不足したときの症状とは?
妊娠中にビタミンB1が不足した時、体にはどのような症状が表れるのでしょうか。ビタミンB1はエネルギーを作る上で必要な栄養素です。
ビタミンB1が不足してしまうとエネルギーが作られないため、代謝が下がります。糖質をエネルギー源としている脳や神経にも影響が出ます。
ビタミンB1不足で起こる症状としては、まず末梢神経の障害と言われている脚気です。
脚気は多発性神経炎とも言われるもので、初期症状は疲労感や食欲不振なのですが、症状が進むと動悸、息切れ、四肢のしびれ、腱反射消失などが出てきます。重度になると循環器不全に陥り、呼吸困難になって命を落とす可能性もあります。(参照:国立健康・栄養研究所「ビタミンB1解説」)
これらの病気になるのは今の時代では少なくなりましたが、ビタミンB1が不足すると肥満になりやすかったり、疲労感を覚えるようになります。
肥満になる理由は、エネルギー代謝が下がってしまうので糖質が脂肪に変化しやすくなるからです。疲労感を覚えるのは、代謝が下がるために疲労物質である乳酸がうまく代謝されず、溜まりやすくなるためだからです。
常に体がだるいために何をするのもおっくうになってしまう、思うように体が動かないのでイライラするというように、気持ちが不安定になるのもビタミンB1が不足しているからだと考えられます。
ビタミンB1はそれほど重要な栄養素ではないと思っている人もいるかもしれませんが、特に妊娠中は多めに摂らないといけない栄養素なのです。
ビタミンB1を不足すると肥満になったり、疲労感を覚えるようになったりするんだね。
疲労感も気をつけなければいけないが、とくに気をつけたいのが肥満じゃ。妊娠中の肥満は糖尿病などの病気の原因になったり、流産や難産の原因にもなるから注意するのじゃぞ。
ビタミンB1の過剰摂取は危険?
ビタミンB1は健康を維持していくためにとても重要な栄養素です。食物などからしか摂取できないものなので、不足しがちな栄養素でもあります。
ビタミンB1が不足してしまうと体に様々な不調が出ますので、意識して摂るようにしましょう。しかし、心配なのは過剰に摂取してしまうことです。良いと言われるものでも、過剰に摂取すると何らかの不具合が起こるのではないかと不安になることでしょう。
普段の食事からは、ビタミンB1の過剰摂取になることはありません。ですからビタミンB1を多く含む食材をたくさん食べても大丈夫です。もしも必要量以上のビタミンB1を摂ってしまった場合でも、水溶性ビタミンなので余分な分は尿で体外に排出されます。
では、サプリメントで摂取した場合はどうなのでしょうか。食事でも意識してビタミンB1を摂り、そしてサプリメントでも摂取していると過剰に摂取してしまうことがあります。
しかし、先ほども述べたようにビタミンB1は水溶性ビタミンですから、体内にとどまることはなく排出されるので心配はないでしょう。
食事やサプリメントで過剰に摂取したとしても、体に悪影響が出たという報告はありませんから、安心して摂取してください。
良かった!過剰摂取になる心配はないから安心して摂ることができるんだね!
たしかにビタミンB1は過剰摂取になる心配はないが、一緒に摂る他の栄養素は過剰摂取になるかもしれん。そのため、ビタミンB1だけに注目をせず、全体の栄養素を見て過剰摂取に気をつけるのじゃぞ。
妊娠前・妊娠中・授乳婦はビタミンB1をどれくらい摂取すればいい?
脳や神経の働きを保つ重要な栄養素「ビタミンB1」の大切さについて解説してきましたが、現段階でどれくらい摂れているのか、またどれだけ摂れているのかを解説したいと思います。
※これから紹介する平均摂取量と食事摂取基準は厚生労働省が発表した平成28年の国民栄養調査結果と、平成27年度からの食事摂取基準を参考にしています。
日本人女性(20歳~49歳)の平均摂取量
年齢 | ビタミンB1の平均摂取量(NE) |
---|---|
20~29歳 | 0.77 |
30~39歳 | 0.78 |
40~49歳 | 0.78 |
18歳~49歳の食事摂取基準
年齢等 | ビタミンB1の推奨量(mg) |
---|---|
18~29歳 | 1.1 |
30~49歳 | 1.1 |
妊婦(付加量) | +0.2 |
授乳婦(付加量) | +0.2 |
平均摂取量を見てもらえばわかるとおり、全期間で厚生労働省の推奨量を満たすことができていません。妊娠中・産後になるとプラスで摂らないといけませんが、それも足りていません。
あくまでも平均の数値なので、全ての人が当てはまるわけではありませんが、平均値が下回るということは多くの人が足りていないという状況だといえます。
そのため、不足をしないようにビタミンB1を積極的に摂っていく必要があります。
ビタミンB1が多く摂れる食品厳選5つ
ビタミンB1が摂れる食品はたくさんあるのですが、その中から厳選した5つをご紹介します。その5つは、「パン酵母」「米ぬか」「豚ヒレ赤肉」「小麦はいが」「まいたけ」です。(参照:食品成分データーベース)
これらのビタミンB1の含有量と、ビタミンB1以外に摂れる栄養素は何かを解説していきますので、毎日の食事にうまく取り入れるようにしてください。
ビタミンB1は妊活中から産後まで必要な栄養素です。お母さんの体調維持と赤ちゃんの健やかな成長のためにも、積極的に摂るようにしましょう。
おいしく食べる方法を知っていれば、毎日摂るのも苦痛ではないはずです。
「パン酵母」
ビタミンB1の含有率が高い食品の一つがパン酵母で、100gあたり8.81mgです。パン酵母というのは、パンを作るのに適した酵母のことを言います。酵母を純粋培養したのは「イースト」と呼び、野生の酵母を培養したのを「天然酵母」と言います。
パン作りにはイースト菌を入れて発酵させるというのは皆さんご存知だと思いますが、イーストはパン酵母のことなのです。
パン酵母は意外とビタミンやミネラルが豊富に含まれていて、優秀な食べ物ですから、この機会にぜひ自宅でパン作りに挑戦してみてはいかがでしょうか。
「米ぬか」
米ぬかもビタミンB1含有量は多く、100gあたり3.12mg含まれています。その他のビタミン類も豊富に含まれている食品なので積極的に摂りたいものです。
ビタミン以外の栄養素では、タンパク質、脂質、炭水化物はもちろんのこと、ミネラル(無機質)、食物繊維、脂肪酸も豊富に含まれており、とても栄養価の高い食品と言えます。
米ぬかは化粧品などによく使われていますが、食べる場合は米屋さんやスーパーで売られている食用の米ぬかを購入し、フライパンや鍋で炒るだけです。
炒り方は鍋に米ぬかを入れ、弱めの中火で混ぜながら加熱します。その後甘い匂いがしてきますがそのまま続け、香ばしい匂いがする直前に火を止め、冷まします。
「豚ヒレ赤肉」
豚肉にはビタミンB1が多く含まれているというのはご存知の人も多いでしょう。豚肉の中でも、特にヒレの赤肉にはビタミンB1が多いのです。
豚ヒレ赤肉(焼いたもの)100g中、ビタミンB1は2.09mgの含有量です。その他のビタミンもまんべんなく含まれています。ミネラル(無機質)も豊富ですから、体の機能の調節や維持に役立ちます。
肉ですからタンパク質や脂質もありますし、炭水化物も含まれています。
脂肪分も少ないヒレ肉ですから、ダイエットにも効果的で、ソテーにすると食べやすくなります。衣をつけてヒレカツにしてもおいしいのですが、ダイエットのことも考えるならソテーの方が良いでしょう。
「小麦はいが」
最近、健康ブームで「小麦はいが入り」の食品が増えてきています。小麦はいがにはビタミンB1が多く含まれていて、100g中1.82mgです。その他の脂溶性ビタミン、水溶性ビタミンともに多く含まれています。
ビタミンと同じような働きをするミネラル(無機質)も豊富です。他には食物繊維も比較的多いです。タンパク質や脂質、炭水化物、脂肪酸も含まれており、栄養バランスの良い食品と言えます。
小麦はいがを食べるにはどんな方法が良いのかというと、フレークタイプならシリアルのように食べる、粉末タイプならパンケーキを焼く時に混ぜる、ハンバーグのタネを作る時に混ぜるようにすれば食べやすいです。
「まいたけ」
きのこ類は栄養豊富な食べ物として有名ですが、中でもまいたけはビタミンB1の含有量が多い食品です。まいたけ100g中に含まれるビタミンB1の量は1.24mgです。
ビタミンB1だけでなく、その他のビタミン、ミネラル(無機質)の含有量も大変多く、さらにタンパク質や脂質、炭水化物も含まれています。脂肪酸や食物繊維も豊富、そして低カロリーなので、積極的に摂りたい食材です。
まいたけは焼いても蒸しても、揚げてもどんな食べ方でもできるので(生食はしませんが)、調理に工夫をして食べると良いでしょう。
冷凍保存もできるので、まとめ買いして保存しておけば食べようと思った時にいつでも食べられます。冷凍する時はほぐしてから冷凍しておくと使いやすいです。きのこ類は水洗いすると栄養分が流れ出てしまうので、水洗いせずに調理しましょう。
妊娠中のビタミンB1摂取は葉酸サプリを推奨!
妊娠中はビタミンB1や葉酸をしっかり摂るようした方が、お母さんのためにもお腹の赤ちゃんのためにも良いとされています。
ビタミンB1は水溶性ビタミンなので体内に蓄積しておくことができません。尿で排出されるので、毎日摂らないといけないものです。
食事でビタミンB1を多く含むものをたくさん食べると良いのですが、妊娠中はつわりがあって気分が悪く、食欲がないという人もいるでしょう。
栄養バランスのとれた食事をしようと思っても、できないことがあります。
そんな時に頼りたいのが葉酸サプリです。葉酸サプリは妊活中の人から妊娠中、産後まで飲めます。特に妊娠中はビタミンB1や葉酸が不足しがちなので、サプリメントで補充するのが良いのです。
葉酸サプリと他のビタミンサプリを併用しても大丈夫なのかと心配しながら飲んでいる人もいるかもしれませんが、複数の種類のサプリメントを飲むと成分が重複して過剰摂取になったり添加物の摂りすぎになる可能性があります。
また、別々のサプリを同時に飲むと、もし体に合わなかった場合にどのサプリが合わなかったのか特定できなくなります。
併用しても特に問題はないと言われているのですが、それならビタミン類や葉酸がバランスよく含まれた葉酸サプリを選ぶと良いのです。ビタミンB群と葉酸が含まれたサプリや、マルチビタミンと葉酸が含まれたサプリもあるので、自分に合ったものを選ぶと良いでしょう。
まとめ
ビタミンB1は私たちの健康を維持するために必要な栄養素で、特に妊活中から妊娠中、産後はやや多めに摂った方が良いとされています。
ビタミンB1は脳や神経の働きを正常にする働きがありますので、妊娠中に不足するとお母さんだけでなく赤ちゃんにも悪影響が出る恐れがあるのです。
ビタミンB1は水溶性ビタミンなので尿で体外に排出されるため、毎日摂らないといけないものです。基本は食事から摂取するのが良いのですが、妊娠中はつわりで食欲が無くなることがあるため、ビタミンB1が十分摂れない可能性があります。
つわりが治まって食べられるようになってきたら、ビタミンB1を多く含む食品を意識して摂るようにすると良いでしょう。食事からの摂取では十分な量が摂れないと思ったら、ビタミンB1も含まれた葉酸サプリから摂るのがおすすめです。
葉酸サプリには、ビタミンB群が含まれたものやマルチビタミンが含まれたものがあります。自分に合ったサプリを選び、飲むようにすると良いですね。
サプリメントを摂取していると、ビタミンB1の過剰摂取になるのでは、と不安になることもあるでしょう。ビタミンB1は水溶性ビタミンなので、過剰に摂った分は尿で排出します。
ですから過剰摂取になることはありません。安心してサプリメントも利用しましょう。
- ビタミンB1は脳や神経の働きのために重要
- 不足するとイライラや疲労感、食欲不振を招く
- 最悪の場合は命を落とす原因にもなるので注意が必要
- 不足する原因は「食欲不振」もしくは「食事からの摂取不足」
- 平均摂取量を見てみると不足している人が多い
- ビタミンB1の摂取は葉酸サプリがおすすめ
- 葉酸サプリならビタミンB1以外にも不足しがちなビタミンを摂ることができる