不妊症に悩む夫婦の数は年々増加してきており、現在では10組に1組が不妊症だといわれています。
しかし、不妊の増加傾向にある一方で不妊治療について知っている人はまだまだ少ないです。日本も治療や休暇の制度など不妊治療に対して整備が出来ていないからかもしれましれません。
不妊治療は治療法次第では費用が重なり、総額何百万円となることもあります。そこで、今回は不妊治療と検査について解説していこうと思います。ぜひ参考にしてください。
不妊治療とは?
妊娠を望んだ健康な男女が避妊をしないで性交しているにも関わらず、一定期間妊娠しないことを不妊と診断されるのです。
不妊治療は、この不妊と診断された男女に対してさまざまな治療法を行って妊娠を成立させることをいいます。
国立社会保障・人口問題研究所「第Ⅱ部:夫婦調査の結果概要」によると過去に比べて不妊の検査や治療を受けたことのある夫婦は増加してきており、現在ではおよそ5組に1組の夫婦は検査または治療の経験があるといわれているのです。
不妊について心配している、または心配したことがある夫婦は3組に1組を超えるほどの数に上ります。疑問や心配事を抱えたまま治療をするのはストレスも溜まりますし、なにより妊娠するにあたって身体によくありません。
疑問や不安、心配事で悩んでいる方は病院選びする際にカウンセリングがあるか確認するといいでしょう。
不妊について心配している人はたくさんいるんだね…
そうじゃな。結婚の晩婚化が進み不妊の夫婦が増えてきているから、今後も増える可能性はあるじゃろう。
不妊症の検査方法とは?どんなことが行われる?
不妊症の検査は「低温期」や「排卵日」「高温期」などの月経周期に合わせて検査を行っていくので、1ヶ月~数ヶ月かけて検査が行われることがあります。
体調や仕事の都合次第ではさらに長い時間になるかもしれません。検査に時間がかかるので、場合によっては検査をしつつも治療を進めることがあります。
これから説明する検査はすべてやるわけではありません。その病院の医師が重要視しているものによって検査は変わってきます。
主な検査は以下の6つです。検査方法は「不妊症の6大基本検査」を参考にしています。
- 基礎体温
- 一般精液検査
- 頸管粘液検査
- フーナーテスト
- 子宮卵管造影
- 経膣超音波検査
基礎体温
基礎体温を測ることによって以下の4つのことがわかります。
- 排卵の有無
- 毎月のパターンから排卵日の予測
- 黄体機能不全の有無
- 不正出血の原因を推測
黄体機能不全とは、黄体ホルモンの分泌量が減ってしまう病気です。黄体ホルモンは基礎体温を高温にしたり、受精卵が着床しやすい状態にするなどの働きがあります。
一般精液検査
一般精液検査とは精子の総数や質、運動率、形態などの検査を行います。そして、精液検査で病気を疑われた場合、泌尿器科的検査が行われるのです。
検査方法は2日~7日間禁欲したあと、マスターベーションですべてを採取します。病院で取るのが一番ですが恥ずかしい、落ち着かないなど思うこともあるでしょう。
その場合は自宅で採取しても構いません。しかし、自宅での採取には「20℃~30℃程度を維持する」「採取後2時間以内に病院へもっていく」の2つが大切です。そうすれば、病院で採取したのと変わらない結果が得られると言われています。
頸管粘液検査
頸管粘液検査の頸管とは精子が子宮に通っていくときの筒のようなものです。その、精子が通るときに粘液を出して通りやすくするのですが、分泌量が少ないと通れなくなり不妊となります。
そのため、粘液の分泌量は十分なのかどうか検査が行われます。
フーナーテスト
頸管粘液検査と似ているのですが、フーナーテストは排卵日頃の朝に性交し、頸管粘液の中に精子が入ることはできたのか確かめる検査です。
子宮卵管造影
子宮卵管造影とはX線による透視をしながら子宮頸管から造影剤を投入し、子宮の形や卵管に異常はないか調べます。この検査は、他の検査に比べて少し痛みはありますが、この検査の後に自然妊娠することも少なくありません。
経膣超音波検査
膣内に超音波プローブを挿入し、卵巣や子宮の状態を画面で確認します。この検査をすることで、子宮筋腫や卵巣のう腫・子宮内膜症などはないか確認をすることができるのです。
不妊症の検査費用はどれぐらい?
不妊症の検査費用は病院によって違ってくるので具体的な金額は言えないのですが、平均は5000円から1万円ほどです。
検査の種類によって費用は大きく違ってくるので、もし具体的な金額が気になる場合は病院に直接問い合わせてみるといいでしょう。
不妊治療の内容
不妊の治療法の前に知っておいてほしいことがあります。通常は負担の少ない治療から始まっていきますが、原因次第では体外受精など高度な治療が早くから推奨することもあります。
これから説明していく、どの治療法も1回で妊娠することはとても難しいことです。複数回受けることになると思います。
たとえ、長いこと不妊治療を経験してきた医師でも1回で妊娠することは難しいのです。このことは、治療を受ける本人だけではなく、周囲の人達もしっかりと知っておいてほしいことです。
不妊の治療法は以下の5つになります。不妊治療については一般社団法人日本生殖医学会「不妊症の治療について」を参考にしています。
- タイミング法
- 排卵誘発剤
- 人工授精
- 体外受精・胚移植法
- 顕微授精法
- タイミング法
タイミング法とは、排卵日の2日前から排卵日までに性交渉をすると妊娠しやすいといわれているので、排卵日を検査して性交のタイミングを合わせる治療法です。
排卵日は基礎体温や経膣超音波検査などから予測をします。
治療する前に何かしておいたほうがいいことってある?
基礎体温から女性ホルモンの分泌状態や排卵がわかることもあるから、体温をこまめにメモしておくといいのじゃ。
排卵誘発剤
排卵誘発剤とは文字通り排卵を誘発するもので、排卵をしないときや体外受精、ホルモンの状態を良くするために使う薬です。排卵誘発剤には内服薬や注射のタイプなどがあります。
人工授精
マスターベーションで採取した精液から元気で成熟した精子だけを回収して、妊娠しやすい期間に細いチューブを使って、子宮に入れる方法です。
1回あたりの妊娠率は8%です。人工授精は6回ほどで頭打ちとなります。その場合は体外受精を考えたほうがいいでしょう。
体外受精・胚移植法
体外受精とは膣を通って卵巣に針を刺し、排卵前の卵子を体外に出します。その後、取り出した卵子と精子の受精を体外で行うのです。
そのまま2日~5日は体外で成長させてから子宮の中に戻します。2日~5日体外で育てるのは、より妊娠率をあげるためです。
卵子を取り出すにあたって排卵誘発剤が1週間ほど使われるのですが、このときに卵巣での反応に個人差があり、人によって「卵巣過剰刺激症候群」という副作用が現れるかもしれないので注意しましょう。
顕微授精法
顕微授精法とは顕微鏡を使いながら細い針の先端に1個の精子を入れて卵子に刺し、直接入れ込む方法です。
体外受精よりも顕微授精法のほうが染色体異常などのリスクが高いなどの報告はされていませんが、完全に安全ではなくまだ何かわからないリスクが潜んでいると考えられています。
そのため、できるかぎり顕微授精法は行われません。どうしても受精できない夫婦に対しての最終手段だと思っておいていいでしょう。
医療費はどれぐらい?控除される?
不妊治療は種類によって保険適用と保険適用外の2つに分かれます。
保険適用と適用外って知る必要あるの?
費用が全然違うから知っておくことが大切じゃ。不妊治療は何回も行うことも考えて、覚えておくのじゃぞ。
保険適用
保険が適用される治療法は以下の2つです。
- タイミング法
- 排卵誘発剤
タイミング法と排卵誘発剤は保険適用となるので何十万と請求されることはありません。具体的な請求金額は病院によって変わるので、問い合わせるのが確実です。
保険適用外
保険適用外は以下の3つです。
- 人工授精
- 体外受精
- 顕微授精
保険適用外の治療法はすべて自費で払わないといけません。人工授精だと平均1万円ほど、体外受精だと平均30万円ほど、顕微授精だと平均40万円ほどになります。
特定不妊治療費助成費制度を利用しよう!
体外受精と顕微授精は治療費が高く、続けていくうちに経済的負担になってしまいます。そこで厚生労働省は負担の軽減を図るために助成費を支給する制度を作りました。
厚生労働省「不妊治療の患者数・治療の種類等について」によるとこの制度を利用すれば1年度あたり10万円給付してくれます。期間は通算で5年間も給付してくれるのです。
「不妊治療費助成制度 〇〇市(自分の住んでいる市)」と検索すれば、自分の住んでいる市の詳しい条件やどこまで給付してくれるのか、申し込み方などが出てきますので確認してみてください。
不妊治療は1回で終わるものではなく、複数回続くものだと考えておいてください。「1回で終わるから」と思って制度を利用せず、結果何回も治療が続き負担になることがあります。
こんな制度があるなんて知らなかった!
負担を軽減するためにも制度を確認しておくのじゃぞ。わからないことがあれば市に問い合わせるか、担当の医師に相談するといいじゃろう。
まとめ
以上、不妊治療について解説をしました。
不妊治療は検査もあわせると、数ヶ月かかる場合もあります。検査や治療次第では副作用もでる大変な治療です。
さらに、1回で妊娠することは難しく、周りからのプレッシャーや心のない言葉などから酷く落ち込んでしまうこともあると思います。
不妊症の人は不妊治療をゴールの見えないマラソンと表現をするほどです。不妊治療はそれだけ大変なことなので、一人で抱え込まないようにしましょう。
気になることがあれば厚生労働省の「全国の不妊専門相談センター一覧」から相談してみてはいかがでしょうか。都道府県によって変わりますが、電話やメールで相談できる場所もあります。
- 検査方法は6つある中から行われる。
- 治療法は5つある。基本的に負担の少ないものから始まる。
- 一部の治療法は保険適用外。
- 国から経済負担を軽減する助成金がある。