二分脊椎症は赤ちゃんに起こる先天異常の中でも出現頻度が上位に入ります。そのため、将来の子供のためにも妊活をしている方、妊娠が判明した方にはぜひとも知っておいてほしい病気の一つです。
ただ、二分脊椎症について名前だけ知っているで終わっては意味がないので、原因から予防法まで徹底解説します。
妊活・妊娠中に
必要な「葉酸」を安心・安全に
※JNFは日本ニュートリション協会のことです。
妊娠前後に摂取すべき葉酸は、ママにも赤ちゃんのためにも欠かせない栄養素。妊娠時は葉酸の他にもビタミンやミネラルが必要になり、厚労省も葉酸サプリを推奨。そんな葉酸サプリを専門家が評価!あなたに合ったものをチョイスしましょう。
二分脊椎症とは?
二分脊椎症とは妊娠初期に起こる”神経管閉鎖障害”とよばれる先天異常によって引き起こされる病気です。
神経管閉鎖障害は、脳や脊髄のもとである神経管の上部と下部のどちらかに障害が発生する病気です。発生した場所が上部だった場合は無脳症、下部だと二分脊椎症と、それぞれ病気が違います。
神経管の下部に障害が発生すると脊髄の形成に異常をきたし、さまざまな症状や障害が引き起こされます。
二分脊椎症は「顕在性または開放性」と「潜在性」の2つに分かれ、どちらかというと潜在性二分脊椎症のほうが症状が軽めじゃ。
顕在性二分脊椎症は「脊髄髄膜瘤(せきずいずいまくりゅう)」ともいわれ、背中にある神経と神経を守る髄膜の一部が外に出ている状態です。大阪母子医療センターによると生まれる前にエコー検査で発見されることもあるそうです。
潜在性二分脊椎症は「脊髄脂肪腫(せきずいしぼうしゅ)」ともいわれ、おしり周辺付近で膨らむ、または凹んだ皮膚異常、毛が多く生えているなどが見つかります。
潜在性は名前からもわかるとおり、はじめの幼児期(生後1年~6歳まで)はあまり症状が見られません。
成長期または思春期になると成長による伸びによって腰の部分にくっついた脊髄は伸びていき、さまざまな症状があらわれMRI、エコー検査で診断されます。
一般的には二分脊椎症というと「顕在性、潜在性」どちらも含みますが、ほとんどが顕在性または開放性のことを指しています。
なにが原因で発症するの?
二分脊椎症を発症させる原因は残念ながら具体的には分かっていません。もっとも考えられるのが「栄養学的要因」「環境的要因」「遺伝子的要因」の3つが原因として有力です。
なぜ、この3つが原因だと考えられているのか一つずつ解説していきます。
栄養学的要因
栄養学的要因は「日本二分脊椎症協会」によると葉酸を不足することによって神経管がうまく形成されないと考えられています。
実際に、1944年~1945年の第二次世界大戦末期のオランダではドイツによる占領によって、食料が遮断されると同時に強い寒波が到来しました。
遮断と寒波によってオランダの人々は食料が十分に確保できず、たくさんの人々が餓え苦しみました。
また、そのときお腹に赤ちゃんがいた母親のほとんどは栄養不足になり、二分脊椎症児の出生頻度が増加したと報告されているのです。このことから二分脊椎症の発生には栄養学的要因も大きく関わっていると考えられているのです。
環境的要因
環境的要因とは糖尿病や肥満、抗てんかん薬の服用、ビタミンAの過剰摂取、妊娠前期(5~15週)の高熱発作、放射線被爆があります。
「ビタミンAの過剰摂取」は鶏や豚の肝臓(レバー)に特に多く含まれ、一切れだけでも、1日の上限量を超えてしまうこともあるので量には気をつけましょう。
ちなみに牛の肝臓とフォアグラは、鶏と豚の2つに比べて量は控えめですが、食べ過ぎには気をつけましょう。
「抗てんかん薬の服用」は抗てんかん薬だけではなく、抗てんかん薬を含む「催奇形性」と「胎児毒性」を示す薬にも必要です。
催奇形性とは妊娠中に抗てんかん薬などの薬を服用することによって「お腹の中にいる赤ちゃんに奇形が発生する可能性がある」ことをいいます。
薬の種類によって子供に及ぼす影響が違い、抗てんかん薬は二分脊椎症ですが、種類によってはメビウス症候群や、軟骨異栄養症などの先天異常を発生させる可能性もあるのです。
薬を飲んでも大丈夫な時期はある?
受精前から妊娠27日目までは「無影響期」と呼ばれ、この時期は薬による赤ちゃんへの影響の心配はありません。妊娠と薬物によれば薬によって卵子は受精能力を失うか、受精したとして着床しなかったりと妊娠が成立しなくなる可能性もあるとのこと。
妊娠を望んでいる方は理由が無ければ、薬を飲むことはやめておいたほうがいいかもしれません。もちろん治療上、薬が欠かせない方は薬を優先して飲みましょう。「妊娠を望んでいるけど、薬を服用している」と悩んでいる方は医師に相談してみましょう。適切な対応をしてくれます。
妊娠28日目から50日目になると「絶対過敏期」と呼ばれ、この時期は赤ちゃんの心臓や内臓、手足など体を作っていく大事な時期で、もっとも薬の影響を受けやすい時期ともいえるので要注意です。
治療で不可欠な場合は仕方ないが、できる限り催奇形性の低い薬を選択する必要があるじゃろう。
妊娠51日目~112日目までは「相対過敏期・比較過敏期」と呼ばれ、この時期の頃には赤ちゃんの重要な器官はほとんど形成されていますが、男の子女の子に分かれる”性の分化”、口の中の上側の部分が閉じる”口蓋閉鎖”などはこの時期に行われるのでまだまだ影響する可能性はあります。そのため、服用には細心の注意が必要です。
妊娠113日目から出産までは「潜在過敏期」と呼ばれ、奇形などの心配はなくなります。しかし、赤ちゃんの身長の伸び率や、筋力が強くならないなどの機能的障害が出るかもしれません。最悪の場合は死ぬ可能性もあります。
遺伝子的要因
遺伝子的要因による二分脊椎症は「Christopher&Dana Reeve財団」によると、二分脊椎を持って生まれた新生児の95%は過去に二分脊椎症を患ったことがない家系の両親から生まれています。
二分脊椎症は特定の家系で引き続いてることもありますが、ほとんどが両親の病歴とは関係がないので遺伝の心配はしなくていいでしょう。
「二分脊椎症の免疫遺伝学的検討」によると両親に何も問題がなくても、第一子が二分脊椎症だった場合、第二子は一般の発生率が0.08%前後に対して3%から6%まで発生率が上昇するとのこと。
さらに、第一子、第二子ともに二分脊椎症だった場合、第三子は10%から12%と発生率が高くなります。なかには、第一子と第三子には異常はなく、第二子だけが水頭症を合併した二分脊椎症を発症した場合もあるようです。
ちなみに出生順位が早いほど、子どもの症状は重症である可能性が高いと報告されています。
どのような症状が現れる?
同じ二分脊椎症ですが「顕在性」と「潜在性」で症状が少し違ってくるのでチェックしておきましょう。
脊椎の障害が発生した場所によって症状の重さも変わってきますので、早めに発見することが大切です。
ちなみに成人の二分脊椎症の症状は小児期のときと同じ症状・障害になります。
顕在性の症状
顕在性は脊髄の障害が発生した場所によって症状の重度が変わってきますが、脚部の運動障害、知覚障害、膀胱直腸機能障害などの神経機能障害を発症します。
運動障害は関節を動かすことが難しくなり、腕を動かすことや歩くことができなくなります。重症であれば車イス、何とか歩行できるレベルであれば補装具の装着をすることもあります。
知覚障害が起きると熱いや冷たい、痛み、しびれなどの刺激に対して過敏になったり、鈍感になったりするのじゃ。
膀胱直腸機能障害は小便や大便の排泄がうまくできなくなる、我慢できず漏らしてしまうなどの障害が発生します。
潜在性の症状
潜在性は幼児期にあまり症状は見られませんが成長期に入ると、成長するにつれて腰の部分に癒着した脊髄は引き伸ばされます。
結果、脊髄は伸びることについていけず、引っ張られていき神経の機能が低下していき症状が後からあらわれるのです
神経の機能が低下することによって顕在性と同じように脚部の筋力の低下によって頻繁に転ぶ、運動障害がおきます。また、尿を我慢できず漏らすようになる膀胱(ぼうこう)直腸機能障害も起きるかもしれません。
このような症状になると「脊髄係留症候群(せきずいけいりゅうしょうこうぐん)」と呼びます。
標準脳神経外科学第9版によれば潜在性は腰痛や足のサイズが左右違うなどの症状もあります。そのほかにも皮膚症状が多く、陥没や円形の瘢痕(傷やできものが治ったあとに残るあと)、局所の多毛(普通なら毛が生えない場所に生えたり、もともと生えている場所に他の毛よりも硬い毛が生える)といった症状がでます。
合併症はある?
「難病情報センター」によると二分脊椎症はいくつかの合併症になるリスクがあります。
水頭症
水頭症とは脳脊髄液が頭の内側に過剰に溜まっていき、頭の中の圧力が高くなっていく病気です。この病気は東海大学医学部脳神経外科によると頭痛や吐き気もしくは嘔吐してしまうなどの症状がでます。
また、神経へ影響すると視力の低下や目を動かすのが難しくなるといった症状も現れるのじゃ。
水頭症を放っておくと、ボーっとしたり、反対に興奮したりする意識障害、圧力が高まることによって脳が本来の場所から逃げようとし、他の部分を損傷する脳ヘルニアなどの障害を引き起こすかもしれません。
頭痛や吐き気があったとしても赤ちゃんはそれを伝えることができません。普段と違う泣き方やずっと泣いていたる、表情が険しくなる、反応が鈍いなど様子がおかしいと感じたら医師に診てもらいましょう。
キアリ奇形
キアリ奇形とは本来頭蓋骨の中に納まっているべき、小脳や延髄などが頚椎(首の所)に脱出した状態をいいます。その脱出した小脳や延髄が脳幹の圧迫や頚椎に流れる髄液の邪魔をするなどして症状があらわれてしまうのです。
キアリ奇形によると症状は頭痛、めまい、手足の感覚障害などがあります。
2歳以下だと嚥下(えんげ)・呼吸障害なども発症する可能性があるぞ。
キアリ奇形は水頭症や脳腫瘍などの障害によって後天的に発生することもありえます。通常は水頭症の治療を行い、その後キアリ奇形の治療が行われます。ただ、水頭症の治療がうまくいけば、キアリ奇形の治療をしなくても改善されることもあります。
発生頻度はどれぐらい?
二分脊椎症の発生頻度は「葉酸普及研究会」によると残念なことに過去30年間一度も減少傾向が示していません。2012年の発生頻度は出産された赤ちゃん1万人のうち5.2人でした。
アメリカやカナダ、オーストラリアなど葉酸の摂取に積極的な国は1983年の調査開始から順調に減少しています。しかし、日本は調査開始時は約3%に対して、現在では5.2と発生率が右肩上がりで増加傾向を示しています。
発生頻度は「先天異常モニタリング」のデータによると1997年~2005年、全80万1267児を調査した結果、二分脊椎症は1万児に対して平均「4.6人」が先天異常だと診断されました。
この、情報はあくまで「出産」された赤ちゃん1万人のうちの何人となっているだけで、流産や堕胎を選択した方の数を足すと二分脊椎症を発症した赤ちゃんはさらに増えるでしょう。
二分脊椎症だといつわかる?
二分脊椎症を引き起こす原因である、神経管閉鎖障害は妊娠4週~5週目の赤ちゃんの脳や脊髄が成長してくる時期にわかります。
しかし、影などによって見えないこともあるので二分脊椎症は妊娠16週~20週ぐらいにわかるかもしれません。普段のエコー検査(音波検査)で疑いがもたれると、より正確な血液検査と羊水検査が行われます。
どのような手術が行われる?
二分脊椎症は症状が軽いものから重症なものまで様々であり、それによって手術内容も変わります。
「日本脊髄外科学会(手術画像があるため閲覧に注意してください)」によると二分脊椎症は、基本的に赤ちゃんの腰辺りに皮膚欠損を伴ったコブを持っているのですが、最近では脳の形態異常によって頭が大きくなっている赤ちゃんもいるとのことです。
そのため、出産の際に産道を傷つけないためにも、帝王切開を行う場合もあるそうです。出産後は感染を予防するために生後1~2日以内に修復手術が行われます。水頭症などの合併症の手術も行うので、手術後自宅に退院できるのは1ヶ月が目安とのことです。
潜在性だった場合、予防としてくっついた脊髄をとる手術が行われます。もし、症状がすでに出ていた場合は病気の進行を抑えることを目的とした手術が行われます。こちらは症状によって変わりますが、早ければ術後一週間で退院することもできます。
予防法はある?
二分脊椎症がなぜ発症するのか原因は完全にわかっているわけではなく、複数の要因によって引き起こされていると考えられているので完全な予防法ありません。
しかし、二分脊椎症を引き起こす原因である神経管閉鎖障害のリスク低減として厚生労働省による通知で葉酸を摂取することが推奨されています。
二分脊椎症の予防と原因によると実際にもっとも予防として効果があるのは「”妊娠前からの”母体の葉酸摂取」であると研究発表がされています。
ただ、葉酸を摂取することによってリスクは大幅に軽減されますが、葉酸とは水溶性ビタミンの一種のため非常に摂取が難しく、簡単に摂ることはできません。
葉酸を含む水溶性ビタミンは水に溶けやすい性質を持っているので、調理や水洗いによって壊れやすく食べる頃には半分以上が失われています。また、葉酸は食べてからも吸収率が低いので、普段よりもたくさんの野菜やお肉を食べる必要があります。
二分脊椎症の画像
上記の画像を見てもらうと分かるとおり、腰あたりにコブができます。手術は主にこのコブを取り除く内容となっています。
まとめ
お腹の中にいるまたは生まれてきた赤ちゃんが二分脊椎症と聞いたこともない病気だと不安になるかもしれません。ましてや赤ちゃんがいるときは非常にナーバスですから仕方ありません。
しかし、この病気はきちんと出産前なら葉酸を摂ることでリスクを減らすことができます。また、お腹の赤ちゃんが二分脊椎症でも手術を行い、治療をすればしっかりと他の子供と同様に成長はしていきますので安心してください。
- 二分脊椎症の発症率は増加傾向にある
- 妊娠16週~20週頃に分かる
- 原因は完全には分かっていない
- 葉酸サプリでリスク低減をすることができる