待ち望んでいた赤ちゃんが誕生し、幸せなはずなのになぜか「不安がある」「モヤモヤがある」などのことを思うときはありませんか。
もしかしたら、それは『産後うつ』かもしれません。産後うつは出産した多くの女性が経験しますが、自分で気づくことがとても難しい病気です。
そこで今回は気づいてもらうえるように、産後うつとはどういう病気か、症状、チェックリストなどを解説していきます。
産後うつとは?マタニティブルーとの違い
産後うつとは文字通り、出産後に現れるうつ病のことをいいます。うつ病とは気づきにくいものですが、珍しい病気ではありません。
とくに女性は男性に比べて2倍うつ病になりやすいといわれています。妊娠や出産などによる女性ホルモンの変化や結婚や離婚などの人生の転機によってストレスが大きくかかり、うつ病になるかもしれませんので注意が必要です。
「マタニティブルー」と「産後うつ」の症状は似ているのですが、細かく違いがあります。マタニティブルーは産後3日~10日の間に発症する一時的なものです。2週間ほどすれば症状もなくなるため、治療をしないことがほとんどです。
産後うつは1ヶ月または長期化すると半年~1年ほど発症します。マタニティブルーから稀に産後うつに移行することがあるので気をつけなければいけません。
産後うつはしっかりと休養し、適切な治療を行なえば回復します。しかし、治療をしなければ長期化していき、本人だけでなく家族にも精神的な負担をかけてしまいます。そのため、症状やチェックリストなどを確認して、少しでも疑いがあるなら医師に相談しましょう。
産後うつとマタニティブルーには違いがあったんだね。
そうじゃ。マタニティブルーのほうが比較的症状が軽いのじゃが、そのまま産後うつに移行することがあるから注意するのじゃぞ。
産後うつの症状&チェックリスト
産後うつの症状は母親としての責務を果たせないことや育児に対する不安や恐怖などによって、症状の重さは違ってきます。軽いうつ状態の人から何もできなくなる人までさまざまです。
産後うつになると現れる症状は以下になります。(参照:さいたま市「産後うつ」)
- 抑うつ気分
- 不安感
- 焦燥感
- 不眠
さらに症状が悪化してくると幻覚や妄想が見えてくる非定型精神病や自殺をする可能性が出てきます。そこまで悪化しなくとも将来、育児放棄や子供の虐待にもつながる可能性があるので、相談することが大切です。
産後うつか判明する『チェックリスト』
チェックリストは以下になります。
- 気分が落ち込む
- 今まで興味や関心があったものに興味を失くす
- 赤ちゃんのことが気になって眠れない
- 細かいことなどが気になって不安になる
- イライラする
- 集中力や判断力がなくなる
- 食欲が無くなる、または過食になる
- 自分を責めることが多くなる
- 子供に愛情を感じることができない
- 赤ちゃんが心配でたまらない、または関心がなくなる
「気分が落ち込む」「今まで興味や関心があったものに興味を失くす」が当てはまり、他にもいくつか当てはまる場合は一度医師に相談しましょう。
産後うつの原因と発症率
産後うつはおよそ10人に1人と高い発症率ですが、残念ながら特定のものが原因というのはなくさまざまな要因が重なって発症すると考えられています。
妊娠による女性ホルモンのバランス変化や栄養バランスの傾き、疲労や睡眠不足などの身体的要因が1つの原因だと考えられます。
もう1つが精神的要因です。出産による体の疲れからくる心の疲れや、育児へのプレッシャー、容姿の衰えの不安などがあります。
これらの身体的要因と精神的要因が複数重なって産後うつ病になるといわれているのです。
母親は産後、自身の体調の変化などに気づくことができず、完璧な母親になろうとします。その結果、頑張りが足りないと自分を追い詰めたり、周りの家族から怠けていると言った声から追い詰められて産後うつになることが多いです。
特定の原因がないんだね…
そうなんじゃ。特定の原因がなく、複数の要因が重なっておるから産後うつだと気づきにくいのじゃ。
産後うつの治療法・対策について
マタニティブルーの場合は一過性のため治療を必要としませんが、産後うつは発症期間が長く、子供の心身にまで影響を及ぼしてしまうので治療をおすすめします。
治療をしなくても産後うつは3ヶ月~6ヶ月ほどで治ることはありますが、そのまま放っておくと悪化することも考えられるのでできるだけ早めに対処することをおすすめします。
産後うつの治療法
産後うつの治療法はさまざまな方法があり、症状の重さによって細かく治療法は変わってきます。
抗うつ薬による薬物療法や専門家とのカウンセリング、ホルモン療法を行なったり、単体の治療だけでの場合もあれば、治療法を組み合わせて行なうこともありますので、余裕があれば医師と相談して決めましょう。
その他にも、ハーブによる治療や鍼治療、栄養バランスの食事を整える、赤ちゃんが眠っているときに一緒に寝るなどの方法もあります。
産後うつと聞くと薬物療法などの治療しかないように思えますが、簡単な改善方法もあります。もちろん、簡単な治療になれば負担は少ないのですが時間がかかることも把握しておきましょう。
産後うつは症状が軽いうちに治療することが大切です。そうすれば治療も比較的簡単に済みます。
育児があるので精神科や心療内科に行くのは気が引ける、もしくは余裕がないと思うかもしれませんが、そのまま放っておくこともおすすめしません。
精神科、心療内科に行くのが苦手な人は地元の保健センターか、産婦人科に相談をしてみましょう。相談は一部の産婦人科のみとなっているので注意してください。
産後うつの3つの対策
産後うつには特定の原因がないため予防をすることは難しいのですが、少しでも症状を軽くする対策が大切です。
症状を軽くするための対策は以下になります。
- 完璧に育児をこなそうとしない
- 睡眠時間を確保して栄養バランスが整った食事をとる
- 周りの人に理解をしてもらう
1.完璧に育児をこなそうとしない
完璧に育児をこなそうとするとそれが返ってプレッシャーとなってしまい、ストレスを知らず知らず溜めてしまうかもしれません。
責任感が強い人や努力家の人は特に育児に対して完璧にこなそうとする傾向があります。子供が自分の思い通りに動かなくてストレスを溜めることもあるでしょう。
子供は突然泣いたり、嫌がったりします。そんな中で完璧に育児をこなすのは到底不可能です。完璧にこなそうとせず、目の前のことをゆっくりと対応していくことが大切です。
2.睡眠時間を確保して栄養バランスが整った食事をとる
育児の疲れや不安から睡眠時間が短くなっていることがあります。また、子供が寝ているうちに家事を少しでも減らしておこうと睡眠時間を削っている方もいるでしょう。
睡眠時間が短くなると育児の疲れが取れなくなり、脳がスッキリせず日中もボーっとすることが増えていきます。
疲れやボーっとすることで家事に手がつかず、食事も栄養バランスが偏っていきがちです。栄養バランスは体と脳の健康を維持するためにも大切なことです。
睡眠時間を削って得はないのでできるかぎり時間を確保するようにしましょう。また、健康のためにも栄養バランスが整った食事をとるようにしましょう。
3.周りの人に理解をしてもらう
産後うつで一番大事なのが周りの人に理解をしてもらうことです。理解をしてもらうことは大変ですが、産後うつは一人で抱え込みすぎて発症します。
睡眠不足に限界が来たときは家事を手伝ってもらったり、不安や心配ごとの相談をしましょう。話を聞いてもらうだけでもストレス発散になるのでおすすめです。
健診費助成を利用しよう!
健診を受ける際の費用を国が助成してくれることを知っていますか。産後うつになる人が増加してきているので、対策として厚生労働省は2017年から健診費を助成してくれるようになりました。
費用助成は限度額5000円で産後2週間と1ヶ月の2回利用することができます。健診費は平均5000円ほどなので無料で2回受けることができます。
まとめ
産後うつは年々増加し、今では10人に1人と高い発症率となっています。産後うつが長期化すると、虐待や育児放棄にもつながり子供の心身にまで影響を及ぼすかもしれません。
治療をしなくても3ヶ月~6ヶ月ほどで治ることもありますが、虐待や育児放棄などのことを考えると治療もしくは診断を受けることをおすすめします。
治療を受けることに気が引ける場合は、まずは心療内科や精神科、保健センターなどに一度相談をしてみましょう。
健診を受ける際は健診費の助成制度があるので、そちらを利用しましょう。産後うつは一人で抱え込まず誰かに相談することが治療への近道です。
- 産後うつとマタニティブルーは似ているが重症度が違う
- 産後うつは10人に1人の割合で発症
- 治療を受けなくても治ることはあるが、早期に受けることをおすすめ
- 健診は2回、費用を国から助成してもらうことができる