神経管閉鎖障害ってなに?葉酸とどう関係してるの?
神経管閉鎖障害は国も力を上げて低減していきたいリスクの一つです。
「神経管閉鎖障害(しんけいかんへいさしょうがい)」は赤ちゃんの先天異常の一つです。妊娠初期に起こる脳や脊髄の異常により、赤ちゃんの脳や脊髄が未発達な状態を意味します。
神経管閉鎖障害については日本よりもはやく欧米諸国がそのリスクを認識し、研究を重ねてきました。しかし、日本では諸外国に比べて神経管閉鎖障害の発症率が低いことから、研究はほとんど行われていませんでした。
そんななか、日本と同様に神経管閉鎖障害の発症率が低かった中国がその研究に乗り出したことによって日本でも状況が変わりました。結果、2000年になってようやく、日本でも諸外国と同じように神経管閉鎖障害の危険性が厚生労働省より報告されるようになったのです。
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必要な「葉酸」を安心・安全に
※JNFは日本ニュートリション協会のことです。
妊娠前後に摂取すべき葉酸は、ママにも赤ちゃんのためにも欠かせない栄養素。妊娠時は葉酸の他にもビタミンやミネラルが必要になり、厚労省も葉酸サプリを推奨。そんな葉酸サプリを専門家が評価!あなたに合ったものをチョイスしましょう。
神経管閉鎖障害の原因と症状について
そうなんだ・・・神経管閉鎖障害って何が原因?どんな症状なの?
主に原因は「3つ」あると言われておる。そして症状は2つ分類されています。
神経管閉鎖障害の原因は主に3つあります。
- 葉酸の摂取量不足
- 妊娠期間中の環境
- 遺伝的要因
このなかでも、厚生労働省が妊婦さんに対して呼びかけているのは「葉酸の摂取量不足」です。
妊娠初期の母体は、赤ちゃんを作るために細胞分裂を活発に行います。その細胞分裂によって神経管(脳や脊髄などの中枢神経系のもとになる細胞の集合体)が作られていきます。神経管が実際に形成される時期は妊娠4週頃です。
とくにこの時期の母体は赤ちゃんの成長にともなって通常の2倍近くの葉酸が消費されると言われています。ここで葉酸が十分に摂取できず不足することによって、脳や脊髄が未発達なままになり、「神経管閉鎖障害」を引き起こすリスクが高まります。
神経管閉鎖障害の症状とは?
神経管閉鎖障害の症状は脳や脊髄などの神経系のもとになる細胞”神経管”に閉鎖障害が起きるのです。そうすると、赤ちゃんの脳か脊髄のどちらかが正常に機能しなくなります。
神経管閉鎖障害の症状は大きく分けて2種類になります。それが「二分脊椎症」と「無脳症」です。それぞれ同じ神経閉鎖障害ですが、症状や発症率が全く違います。
二分脊椎症とは?原因と症状・発症率について
(画像引用:保険に関する統計)
赤ちゃんの神経管の下部に閉鎖障害が起きた場合は「二分脊推」と呼びます。日本での発症率は1万人に5人前後だと報告されています。
後に説明する「無脳症」と合わせると、発症率は1万人に6人前後だと公表されており、赤ちゃんに起こる神経管閉鎖障害のほとんどはこの二分脊推です。
二分脊推は背骨が胎内で発生する途中に、背中の中央「脊椎弓」のくっつきが不完全だったために左右に分裂している病気です。
そのため脊推自体が欠損していたり、収まるべきところから露出していたりと、さまざまな神経障害を引き起こす原因になります。脊推が変形しているので外部からも確認できる症状です。
症状は「顕在的なもの」と「潜在的なもの」に分かれます。わかりやすくいうと、
- 顕在的なもの ⇒ 生まれた当初からあらわれる症状
- 潜在的なもの ⇒ 学童期や思春期、さらには大人になってから現れる症状
顕在的な二分脊椎症の症状
顕在的な二分脊椎症の症状は、運動機能の障害や排泄機能に障害が起こります。
神経障害によって下半身の神経が麻痺して歩行や運動が困難になったり、下半身の麻痺が膀胱や直腸の筋肉を低下させ、排泄障害を引き起こしたりするのです。大人になると性機能障害になることもあります。
また体の下部だけに影響がありそうですが、「知的障害や発達障害のある人のための環境整備案」によると半数の子供は軽度の知的障害になる可能性があると公表しています。
潜在性の二分脊椎症の症状
幼児期ではその症状があまり見られず、成長期になってから症状が現れる子が多いです。腰の部分で癒着した脊髄がその成長についていけず、転びやすくなったり、尿をもらすなどの排泄器官にも影響を与えます。
成長期になってから現れる症状もあるんだね。
診断自体は幼少期にわかっても、大きくなってから症状が現れる場合もあるので注意が必要です。
無脳症とは?ダウン症とは違う?
(画像引用:保険に関する統計)
無脳症は赤ちゃんの神経管の上部が閉鎖されることによって、”体は成長していくが脳は形成されない”先天的な奇形症の一つです。
脳には神経の伝道路である大脳や、さまざまな働きと生命維持機能がある脳幹があります。無脳症の赤ちゃんは大脳や脳幹が形成されておらず、欠損している状態を意味するのです。
そのため生命維持が難しく、ほとんどが死産になってしまいます。必ず死産になるわけではなく、無事に出産することも可能です。しかし、長く生きられても生後約1週間程度だといわれています。
なぜ無脳症になってしまうのか、原因は今現在も解明されていません。もっとも可能性が高い原因は以下の4つだと考えられています。
- 遺伝的要因
- 飲酒
- 喫煙
- 母体の偏った栄養状態
この4つがすべてではありませんが、これも原因と関係していることは間違いないでしょう。
致死率の高い無脳症の発症率は、環境省の調査発表によると「出産児1万人に対して無脳症の発生頻度は約1人程度」だといわれています。(参照:子どもの健康と環境に関する全国調査)
あくまでこのデータは出産児の統計であって、近年ではエコー検査による精度が高くなり、胎内で早期に発見されることが増えています。早期に発見できた場合、中絶などの選択をする方も多いので、実際の発症率は統計よりも少し高いかもしれません。
無脳症とダウン症との違い
無脳症とダウン症ってどこが違うの?
原因と症状に関してはまったく違う病気です。
無脳症とダウン症を混合して考えている方もいるかもしれません。その違いは以下になります。
- 無脳症=先天的な奇形症
- ダウン症=染色体異常
無脳症は神経管が閉鎖される”障害”によって発症する先天的な奇形症です。一方、ダウン症の場合は、染色体の突然変異によって起こる先天性の疾患です。
どちらも先天的な疾患であることは変わりありません。つまり、母体の中で発症するものであり、生まれてから後天的に発症するものではありません。
これは男女関係なく発症する可能性があります。どちらの病気も根本的な治療法は見つかっておりません。
ちなみに、北海道大学大学院医学研究科「日本酸摂取のすすめ」によるとダウン症の子供を生んだことある母親は、そうでない母親に比べて神経管閉鎖障害児を妊娠する可能性が5倍高いと言われています。
神経管閉鎖障害はいつわかる?検査方法や治療法について
ここまでの説明で、神経管閉鎖障害が赤ちゃんの生命に関わる重大な病気だと分かってもらえたはずです。では具体的に、
- この病気がいつになったらわかるのか
- どのような検査をしたら判明するのか
この2つを詳しく解説していきます。
神経管閉鎖障害だと判明するのはいつごろ?
神経管閉鎖障害は妊娠4週目から5週目ごろに作られる脳や脊髄が閉鎖され成長しない病気です。そのため、最低でも神経管が作られる4週目から5週目以降に見つかることになります。
そこから具体的に2種類ある「無脳症」「二分脊椎症」だと判明する時期は、それぞれ異なります。
無脳症の場合は早ければ「妊娠11週目から14週目ごろ」でその可能性が疑われます。確定した判断ができるのは妊娠4ヶ月目以降となります。
二分脊椎症の場合は「妊娠16週目から20週目ごろ」に判明します。二分脊椎症の方が無脳症よりも先に判明することがほとんどです。
- 無脳症=妊娠11週目から14週目ごろ
- 二分脊椎症=妊娠16週目から20週目ごろ
あくまでこれは目安なので、上記の週を過ぎたからといってその可能性が完全に消えるわけではありません。
検査方法について
検査の方法は、毎月定期的に行われるエコー検査(超音波検査)で判明するケースが多いと言われています。
定期検査のときに神経管閉鎖障害の症状が見られた場合、より正確な検査ができる「母体の血清検査」と「羊水の検査」のどちらかが行われます。
無脳症はエコー検査をしたときに頭部が鮮明に写らなかったり、欠けていたなどの疑いあれば母体の血清検査か、羊水の検査のどちらかを行われます。二分脊椎症も同様に血清検査か、羊水の検査のどちらかが行われます。
治療法は?
神経管閉鎖障害と診断された場合、生まれてすぐに治療が始められます。ただ、無脳症の場合は治療法が見つかっていないため、母体の中で死んでしまうことが多く、ほとんどが死産や流産になります。
二分脊椎症は死産や流産にならず、出産できる場合もあります。出産をした場合、すぐに脳神経外科か小児外科で手術をします。手術内容は障害の内容によって変わってきます。
神経管閉鎖障害はどこかに障害が残ることが多く、中絶を選択する人も少なくはありません。もし神経管閉鎖障害と判明したときは、出産をするか、中絶をするかの辛い選択が迫られます。
母親や父親からすると、すごい辛い選択肢だよね・・・。
確かにそうです。ただ、母体に対する負担も大きいことから無脳症の場合は、唯一医師が中絶を推奨する病気だと言われています。辛い選択肢じゃが、赤ちゃんはきっと親が新たなスタートを前向きにきってくれることを願っているはずです。
妊娠初期における葉酸の不足の危険性
もともと日本人は諸外国に比べて野菜を多く食べる人種なので、必要な葉酸が自然と摂れていました。
しかし、現代の日本は昔に比べて食文化が大きく変化しました。ファーストフードなど手軽に食べられる食品が多くなり、自ら野菜を摂る女性が少なくなっています。
また、過度なダイエットや栄養が偏っている女性も増えてきています。それと同時に野菜から摂れる葉酸の摂取量も減少してきているから注意が必要です。
葉酸は野菜や果物のなかに含まれています。1日の野菜摂取量が約350gあれば、1日の葉酸の推奨量である400μgは摂取できている可能性が高いです。
しかし、厚生労働省が調査した「平成25年国民健康・栄養調査結果(PDF)」によると、女性の1日の野菜摂取量は20代で233g、30代で249g、40代で245gと、250gに満たない摂取量だとわかりました。
妊娠時にはお腹の中の赤ちゃんの成長のために葉酸が通常よりも多く消費されます。その結果、葉酸不足になる妊婦さんも少なくありません。
葉酸が不足したままになると、以下3つのリスクがあります。
- 初期流産
- 悪性貧血
- 神経管閉鎖障害
1.初期流産
葉酸はお腹の中の赤ちゃんの脳や神経管、臓器などを形成していくうえで欠かせないものです。赤ちゃんが形成される大切な時期に葉酸が不足すると、体がきちんと作られず、初期流産する可能性が高まります。
妊娠12週までの初期流産は流産全体の80%以上を占めています。この高い確率を見ていただければ、赤ちゃんにとってどれだけ葉酸が大切なものか分かってもらえたはずです。
2.悪性貧血
葉酸はビタミンB12とともに赤血球の生産を助け、造血する役割があります。
葉酸とビタミンB12の両方、または片方でも不足すると赤血球が作られず貧血を招きます。悪性貧血になると、
- 朝起きるのが難しくなる
- めまい
- 立ちくらみ
このような症状があらわれます。
赤ちゃんへの悪影響はもちろん、葉酸不足は母体にも負担がかかる心配があるのでしっかりと葉酸摂取を心がけましょう。
3.神経管閉鎖障害
この病気の症状については上記で詳しく説明をしていますが、わかりやすくいうと妊娠初期に起こる先天異常のひとつです。
神経管閉鎖障害になると流産や死産になる可能性があります。
発症のリスクを抑える方法は?
葉酸不足によって発症する病気のリスクを抑えるには以下の方法があります。
- 栄養バランスの取れた食事をする
- 妊娠中は飲酒、喫煙を避ける
- 1日に必要な葉酸を摂る
まず、最初にお伝えしなければならないことがあります。それは葉酸を摂取したからといって”100%予防”はできません。あくまで葉酸は”リスクの低減に期待ができる栄養素”です。
神経管閉鎖障害の発症のリスクを低減するためには葉酸を摂ることが大切だといわれています。しかしながら、葉酸は水に溶けやすく熱に弱い性質になっているので、普段の食事で摂るにも過熱や水洗いなどの調理工程でほとんどの葉酸が消えてしまいます。
そのため、厚生労働省は葉酸の摂取を栄養補助食品(サプリメント)で補うように勧めているのです。しかしながら、厚生労働省は今まで葉酸の摂取を呼びかけてきましたが、その認識はなかなか世の中に浸透していません。
なぜなら具体的な方法が明記されていないからだと私は考えます。とくに妊娠初期は悪阻(つわり)などで妊婦さんも満足に食事できません。それなのに栄養補助食品だけでなく、栄養バランスの整った食べ物からの葉酸摂取を勧めても現実的に無理だと思います。
本来は食事からの摂取が一番なので、2つ選択肢があれば安全性を考えて食事からの摂取を目指す妊婦さんの気持ちもわかります。でも、現実はそんな余裕がありません。なぜなら多くの妊婦さんは悪阻(つわり)で満足に食事できない可能性が高いからです。
葉酸摂取の重要性
葉酸をしっかり摂ることって大切なんだね。
そうです。でもただ摂ればいいってわけでもありません。実は「摂取する時期」がとても大切なのです。
神経管閉鎖障害のリスク低減のために葉酸を摂取することは、世界的にも推奨されていることです。
でも実際に葉酸を摂取するだけで神経管閉鎖障害の大きな低減には繋がりませんでした。その理由は「摂取する時期」によるものです。
一概に妊娠といってもその活動は妊娠前から出産まであり、約1年近くの長期わたる活動です。つまり、出産するまでならいつ飲んでも効果があるわけではありません。神経管閉鎖障害のリスク低減を目的にするなら時期は限られてきます。
その具体的な時期は、「妊娠1ヶ月前から妊娠3ヶ月までの間」だと厚生労働省「報道発表資料」が明確に時期も指定して葉酸摂取の重要性を発表しました。
推奨する摂取量は食事からの摂取に加えて、1日400μグラムが理想です。そのため、国は栄養バランスの整った食事と併せて栄養補助食品(葉酸サプリ)を積極的に摂ることをすすめています。
食事だとなかなか理想的な摂取量を満たすのが難しい葉酸ですが、栄養補助食品(葉酸サプリ)はそうではありません。飲むだけで葉酸を簡単に摂取することができます。
そのため厚生労働省「妊娠可能年齢の女性に葉酸摂取が推奨される理由」は栄養補助食品(葉酸サプリ)を推奨しながらも、過剰摂取への注意も勧告しています。これがあるから厚生労働省が葉酸サプリの摂取を明確に勧告できないのでしょう。用量を守らずに過剰摂取で何か問題があれば国の責任になりかねないですからね。
もちろん、栄養補助食品(葉酸サプリ)が推奨されていますが、販売されている葉酸サプリならどんなものでもいいわけではありません。厚生労働省が推奨する葉酸の摂取量などを満たした栄養補助食品(サプリメント)を選ぶ必要があります。
葉酸サプリのことを知っている人もいれば、そうでない人もいるから、あまり重要性に気付いていない女性も多いんじゃないかな・・・。
たしかに妊娠がわかってから葉酸摂取の重要性に気付く女性がほとんどです。日本先天性異常学会も本腰をあげて葉酸サプリの摂取を呼びかけています。これから厚生労働省も対応に追われるかもしれません。
まとめ
神経管閉鎖障害と葉酸の関係性がわかって頂けたと思います。神経管閉鎖障害は死産や後遺症が残る疾病です。それと同時に、日本の厚生労働省がどうして葉酸の摂取を推奨しているのかも分かっていただけたのではないでしょうか。
日本では神経管閉鎖障害の発症率が1万人に6人の確率で発症していることがわかっています。年間を通すと約670人の赤ちゃんが発症しています。
決してこの数字は見過ごせないものだと思います。
神経管閉鎖障害の原因は遺伝的な要素もあり、葉酸摂取のみで予防できるものではありません。葉酸の摂取はあくまで発症リスクの低減に期待できるものです。
しかし、妊娠前から初期にかけて葉酸を摂取することで、葉酸不足による神経管閉鎖障害のリスクは約70%ほど軽減できると言われています。
「妊娠中は葉酸が必要」このような言葉を聞いて、妊娠前から葉酸の重要性を知っている方もいるでしょう。でも葉酸摂取が神経管閉鎖障害のリスク低減につながり、妊娠前からの摂取を国が勧めていることを明確に知っている方はどれだけいるのでしょうか。
いくら厚生労働省が葉酸の重要性を勧告したところで、女性がそれを知るのは母子手帳をもらうときです。つまり、すでに妊娠してから葉酸のことを知るのです。
「健康で元気な子を産みたい!」これはすべての妊婦さんの願いだと思います。
すべての神経管閉鎖障害が葉酸の摂取不足だけでおこるわけではありません。しかし、葉酸不足によって神経管閉鎖障害を発症したかどうかを見分ける方法は残念ながらありません。
少しでも神経管閉鎖障害のリスクを低減するために、妊娠1ヶ月前から妊娠3ヶ月までの間は食事以外から「1日400μグラム」の葉酸を摂取するように心がけましょう。
神経管閉鎖障害がどういう病気なのかわかったよ。あと、葉酸を摂る時期とかも大事だけど、過剰摂取も気をつけないといけないんだね。
葉酸を摂る時期については賛否両論あるが、基本的には「妊娠1ヶ月前から」を国も推奨しています。でも妊娠が判明した時期(妊娠初期)から飲んでも効果がみられたとする報告もあります。妊娠中は継続的に葉酸の摂取が必要になります。神経管閉鎖障害のリスク低減はもちろんのこと、妊娠初期、中期、後期、産後とそれぞれに合った葉酸の摂取を心がけてください。
- 神経管閉鎖障害のリスク低減のために葉酸摂取を国が推奨している
- 神経管閉鎖障害は「二分脊椎症」「無脳症」があり、後遺症だけでなく死産を伴うもの
- リスク低減を目的とした葉酸摂取の時期は「妊娠1ヶ月前から妊娠3ヶ月まで」
- 食事以外からの摂取で1日400μグラムを厚生労働省が推奨している