妊活・不妊

アメリカの不妊原因「多嚢胞性卵巣症候群」に悩む日本人女性が急増!

アメリカの不妊原因「多嚢胞性卵巣症候群」に悩む日本人女性が急増!

「多嚢胞性卵巣症候群(たのうほうせいらんそうしょうこうぐん)」という病気をご存知でしょうか。

この病気はアメリカでは不妊の一般的な原因として扱われています。そんな病気が、近年日本の成人女性にも増えてきているのです。

今回はそんな多嚢胞性卵巣症候群について徹底解説していきます。

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多嚢胞性卵巣症候群とは?

多嚢胞性卵巣症候群(たのうほうせいらんそうしょうこうぐん)とは女性特有の病気で、卵巣に多嚢胞、月経異常、ホルモンの分泌に異常が起きます。「PCOS」とも呼ばれたりします。

多嚢胞とは卵巣の表面が通常よりも厚くなることで、排卵を行なうことができず卵胞が卵巣内に留まっている状態のことをいいます。

あまり有名ではない病気ですが成人女性の発症率は5%から10%、つまり最低でも20人に1人、最高でも10人に1人と知名度に対して高い発症率をもっているのです。

小児の思春期から発症する可能性はあるのですが、相談する人が少ないからか有病率は不明となっています。ちなみにアメリカでは多嚢胞性卵巣症候群は不妊の原因として最も一般的なものです。

最低でも20人に1人、最高でも10人に1人って高い発症率だね。

そうじゃな。アメリカでは不妊の原因として一般的になるほど発症率が高いから、注意が必要じゃぞ。

多嚢胞性卵巣症候群が引き起こす5つの症状

多嚢胞性卵巣症候群(たのうほうせいしょうこうぐん)の症状は以下になります。(参照:小児慢性特定疾病情報センター「多嚢胞性卵巣症候群」)

  • 男性化
  • 月経異常
  • 不妊
  • 肥満
  • 合併症

男性化

卵巣内にある男性ホルモン「アンドロゲン」が過剰に分泌される高アンドロゲン血症になることで男性化が進んでいくのです。

男性化が進むことによって「声が低くなる・にきびができる・腋毛などの体毛が増える」といった特徴が見られるようになります。

ここでワンポイント日本人は外国の人に比べて男性ホルモンの上昇値が高くないため、にきびや体毛が増えるが多く見られます。

月経異常

排卵をうまく行なうことができないため、月経周期が35日を越えたり、月経が順調だったのに不規則になる「月経不順」になります。

また、月経はあったとしても排卵はしていない状態の「無排卵月経」になるかもしれません。

不妊

上記でも言いましたが、アメリカで不妊の一般的な原因となるほど不妊になりやすくなっています。

排卵ができないため受精することができず、妊娠することができません。

肥満

ホルモンの分泌に異常がでることによって肥満になることがあります。肥満化するとともに多嚢胞性卵巣症候群の状態も悪化していきます。

ここでワンポイント男性化と同様に外国の人に比べて肥満化もそこまで目立ちません。どちらかというと軽度の肥満です。

合併症

多嚢胞性卵巣症候群によって男性ホルモンの分泌量が増加していきます。男性ホルモンの濃度が高くなると、メタボや糖尿病、心臓、血管、血圧の病気になるリスクがあります。

また、男性ホルモンの一部がエストロゲンと呼ばれる女性ホルモンに転換され、女性ホルモンの濃度が高くなっていきます。

ホルモンの濃度は高くなっていきますが、バランスをとる役割があるプロゲステロンが分泌されないため、子宮内膜が分厚くなる子宮内膜増殖症、もしくは子宮内膜がんのリスクが高くなります。

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多嚢胞性卵巣症候群になる原因

多嚢胞性卵巣症候群(たのうほうせいしょうこうぐん)の原因はさまざまなことが考えられるため、具体的には解明されていません。現在は以下の2つが原因だと考えられています。(参照:日本産科婦人科学会「多嚢胞性卵巣症候群」)

ホルモンの分泌異常

脳の間にある視床下部は自律機能の調節やホルモンの分泌など重要な働きをもっています。その視床下部のホルモンや運動を調節するドーパミンの活性が低下し、性腺刺激放出ホルモン(以下GnRH)の分泌頻度が増加することが原因だと考えられてます。

GnRHとは卵胞刺激ホルモン(以下FSH)と黄体形成ホルモン(以下LH)を分泌するためのホルモンです。FSHとLHの2つは卵胞の成長と排卵に関わっています。

GnRHの分泌頻度が多くなることでLHの分泌を促進させるのです。LHの分泌が促進されることによって、卵胞の発育を邪魔するほど莢膜細胞(きょうまくさいぼう)が増殖します。

その結果、発育途中の卵胞が増えていき多嚢胞性卵巣が現れてしまうのです。増殖した莢膜細胞が原因で大量の男性ホルモン、アンドロゲンが分泌され、さらに卵胞の発育が邪魔されます。

糖代謝異常

最近、インスリン抵抗性が大きく関係していることがわかりました。インスリン抵抗性とはインスリンに対して感受性が下がることで、分泌されても作用されず、十分に発揮できないことを言います。

インスリン抵抗性があると性ホルモン結合グロブリンが減少し、血液に含まれるアンドロゲンが増加します。増加によって卵胞発育がさらに邪魔をされ、多嚢胞性卵巣症候群を発症するのです。

多嚢胞性卵巣症候群の診断基準

多嚢胞性卵巣症候群(たのうほうせいらんそうしょうこうぐん)の診断基準は「月経異常・多嚢胞性卵巣・血中男性ホルモン高値またはLH基礎値高値かつFSH基礎値が正常」の3つを満たさないといけません。

月経異常は無月経、稀発月経、無排卵周期症のいずれかでないと月経異常だと扱いません。

多嚢胞卵巣は超音波検査で両側の卵巣にたくさんの小さい卵胞がみられ、どちらか一方の卵巣に2mm~9mmの卵胞が10個以上と存在すると決められています。

他にも細かい診断基準がありますが、主にわかりやすい診断基準は上記3つです。これらを覚えておくといいでしょう。

できれば、3つの症状すべて出ていないと思っても、複数個出ているなら実は出ているかもしれません。そのため、自己判断せず異常があれば医師に診てもらいましょう。

月経異常、卵巣に多嚢胞、ホルモンの分泌異常。この3つの症状が出ていると診断されるんだね!

確かに診断基準ではそうじゃが。症状が出ているなら3つじゃなくとも医師に診てもらうのじゃぞ。

多嚢胞性卵巣症候群の治療内容

多嚢胞性卵巣症候群(たのうほうせいらんそうしょうこうぐん)の治療内容は「挙児を希望」するかどうかで違ってきます。それぞれの治療内容を解説していきます。

症状の種類や症度、合併症の有無、年齢などからも治療内容は細かく違ってくるので、あくまで参考程度に留めておいてください。

(参照:日産婦誌60巻11号研修コーナー「多嚢胞性卵巣症候群」)

肥満の治療

BMIの数値が25以上の肥満の場合、挙児の希望ありなしに関わらず肥満の治療を行ないます。

治療方法は薬などは使わず、食事指導や生活習慣を改善して適切な減量を目指さないといけません。食事や生活習慣を改善することで生活習慣の予防だけではなく、排卵障害の改善にも期待ができます。

インスリン抵抗性がある場合は食事指導と生活習慣の改善に加えて、メトフォルミンやインスリン抵抗性の改善薬を投与することもあります。

欧米ではメトフォルミンを挙児希望に関係なく使用することがあるのですが、日本はまだ保険が適応していないことと、日本と欧米では症状などに違いがあるため、慎重な投与が望ましいことを覚えておいてください。

肥満の状態から体重の5%~7%まで減らせると排卵率と妊娠率が改善されます。そのため、肥満がある場合は挙児の希望に関係なく、優先もしくは並行して行います。

挙児の希望なしの場合

挙児の希望がない場合、月経周期の改善とがんの予防のために無月経だった1度目は男性ホルモン、アンドロゲンの作用がない、もしくは少ないゲスターゲン剤を単独で用いた「ホルムストルム療法」が行なわれます。

2度目は不足しているホルモンを補い、卵巣を休ませて規則的な月経周期に戻す「カウフマン療法」が行なわれます。それから休薬期間を時々作って、自然と排卵ができるかチェックをしていくのです。

低用量ピルを使うこともあります。欧米では一般的ですが、インスリン抵抗性の悪化やピルに含まれるゲスターゲンにはアンドロゲン作用がある製剤もあるため、注意が必要です。

挙児の希望ありの場合

挙児を希望する場合、排卵誘発を目的とした「クロミフェン療法」が行なわれます。多嚢胞性卵巣症候群に対して、クロミフェン療法は50%の排卵率と10%~20%の妊娠率を得られることに期待できます。

クロミフェン療法のほかに「ゴナドトロピン療法」「腹腔鏡下卵巣多孔術」のどちらかを行なうこともあります。

ゴナドトロピン療法

ゴナドトロピン療法とは排卵を誘発する治療法で、クロミフェン療法の単独もしくは併用療法がダメだった場合行われます。

ゴナドトロピン療法による排卵率は80%~100%、妊娠率は30%~60%を得ることができます。

ただし、双子や3つ子になる多胎妊娠、卵巣が腫大化し下腹部痛などを引き起こす卵巣過剰刺激症候群のリスクがあります。

これらのリスクを下げることはできますが、代わりに通院回数が増えます。その結果、負担になり、通院途中でキャンセルすることもありえるのです。

腹腔鏡下卵巣多孔術

この手術は電気メスやレーザーを使って、卵巣の表面に多数の穴を開けます。少し怖いかもしれませんが、効果はゴナドトロピン療法に匹敵し、さらに卵巣過剰刺激症候群と多胎妊娠のリスクが少なく済みます。

さらに、受診回数が少なく済むというメリットもあります。排卵率は70%~100%、妊娠率は40%~80%得ることができます。

ただし、やはり手術を行なうので術後の癒着など手術に伴ったリスクが存在します。効果の持続期間は1年~2年以内比較的短いというデメリットもあるので注意してください。

合併症によっては治療内容も変わってくるので、ある程度自分で決めつつも医師と相談をしながら治療内容を決めるようにしましょう。

多嚢胞性卵巣症候群を予防する方法はある?

多嚢胞性卵巣症候群(たのうほうせいしょうこうぐん)は現在、具体的な原因が判明していないため、残念ながら効果的な予防はありません。

ただ、肥満になると月経異常やインスリン抵抗性などが悪化するので、運動やカロリーの高いものばかり食べないようにするなどして、肥満にならないようにしましょう。

予防することはできませんが、早期発見することが大切です。放置をしたままだと月経異常やホルモンの異常、合併症、不妊などが悪化していく可能性があります。

早期発見することができれば、治療の負担も軽く済みますし、妊娠への負担も軽減することができるはずです。そのため、症状がすべて当てはまらなくとも気になる症状があれば病院で診てもらうようにしましょう。

予防することができないんだね…

そうじゃな。たしかに予防は難しいが早期発見することが大切じゃ。

まとめ

多嚢胞性卵巣症候群は「卵巣・月経・ホルモン」の3つに異常が起きます。アメリカでは不妊の原因として一般的ですが、日本ではまだまだ知名度が高くありません。

しかし、知名度が低いのに対して発症率は成人女性の20人に1人と高くなっています。多嚢胞性卵巣症候群を発症するとホルモンの影響から男性化が進んでいきます。

それ以外にも不妊や月経異常もあります。放置をすればするほど治療が大変になっていくので注意してください。

具体的な原因が分かっていないので予防をすることはできませんが、早期発見することができれば、治療と妊娠の負担を軽減することができます。体の異変に気づいたら放置せず、一度医師に診てもらいましょう。