基礎知識

過剰摂取も不足もダメ!?妊婦は【ビタミンA】の摂取量に要注意!

ビタミンAの過剰摂取に注意しよう

妊娠中はお腹の赤ちゃんのためにも、たくさん栄養を摂りたいものです。妊娠中に必要な栄養素について調べると「ビタミンAの過剰摂取には注意」という言葉を見かけたことがあるはずです。

過剰摂取で注目されがちですが、実はビタミンAというのは赤ちゃんの成長には欠かすことのできない栄養素です。過剰摂取の危険性以外ビタミンAについて知っている人は少ないと思います。

そこで、今回はビタミンAはどういう働きをするのか、摂取量の上限はどこまでなのか、過剰摂取または不足した場合などのことについて解説していきます。

ビタミンAとは

ビタミンAを含むビタミンとは、たんぱく質・脂質・炭水化物の三大栄養素と比較すると必要な量は少なくなっていますが、健康に生きていくためには欠かせないものです。

注意してね!ビタミンのほとんどは体内で作ることができないため、食事から摂取しなければいけません。ビタミンには水溶性と脂溶性の2種類があります。

ビタミンの中でも有名なビタミンCや葉酸、ビタミンB6などのビタミンB群は水溶性になります。水溶性は熱や光に弱く壊れやすいぶん、余分なものは尿として排出されていくので過剰摂取になることはほとんどありません。

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ビタミンAやDなどは脂溶性ビタミンです。脂溶性ビタミンは水溶性とは違い、水に溶けにくいので吸収しやすくなっています。

脂溶性ビタミンは脂肪組織や肝臓に貯蔵され、体の機能の健康を保ちます。しかし、水溶性とは違い、摂りすぎると過剰摂取を引き起こしやすいデメリットもあるのです。

同じビタミンでも性質はまったく違うんだね!

そうじゃ。水溶性ビタミンは過剰摂取になりにくいのじゃが、その分吸収も難しくなっとる。反対に脂溶性ビタミンは吸収が簡単な分、過剰摂取になりやすいから注意するのじゃぞ。

ビタミンAには2種類ある!どっちを摂取すべき?

ビタミンAには「レチノール」「β-カロテン」の2種類があります。

ウナギやレバーなど動物のみに見られるのが「レチノール」です。一般的に「ビタミンA」というとレチノールのことを指しています。

人間の血液に存在するビタミンAのほとんどが「レチノール」で、過剰摂取の問題とされているのもレチノールが原因です。

ここでワンポイント「β-カロテン」は吸収されたときに体内でビタミンAに変換されるもので、プロビタミンAとも呼ばれます。β-カロテンは動物だけではなく、ほうれん草やニンジンなどの緑黄色野菜にも含まれている栄養素です。

β-カロテンはレチノールと違い、吸収した段階ではビタミンAにはならず、ビタミンAを不足したときに変換されるなど調節をしてくれます。そのため、β-カロテンならビタミンAの過剰摂取になることはありません。

  • ビタミンAには「レチノール」と「β-カロテン」の2種類がある。
  • 一般的にビタミンAはレチノールのことを指す。
  • レチノールを過剰摂取すると主に肝臓に蓄積されていき、過剰症のリスクがある。
  • β-カロテンなら過剰摂取の恐れがない。

ビタミンAの働きと役割

ビタミンAは正常な視力にする働きがあるといわれ、網膜の保護や眼の細胞に対しての光の刺激反応に重要な役割があります。

また、それ以外にも皮膚や粘膜などを正常に保つ働きがあります。皮膚や口の粘膜などを正常に保つことで、病原菌への抵抗力をつけてくれるのです。その結果、風邪などの病気にかかりづらくなります。

「つわり」などの症状で食欲がなくなっているにも関わらず、妊娠中に風邪を引くとさらに食欲が失せてしまいます。食事が喉を通らないと栄養面も心配です。

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子供の成長促進にも関わっているといわれています。最近の研究ではガンや麻疹(はしか)の予防にも効果的だといわれています。

ビタミンAは母子ともに必要な栄養素ですので過剰摂取が怖いかもしれませんが、摂取しないようにするのはやめておきましょう。

ビタミンAって過剰摂取のことばっかり言われていたから、そこまで必要ないと思ってた!

そうじゃな。たしかに過剰摂取も危険じゃが、ビタミンAも立派な栄養素の一つじゃ。ちゃんと摂取するのじゃぞ。

妊娠中の摂取量の上限は?推奨している量は?

厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準(2015 年版)の概要」によると、耐容上限量は「2700μgRE」です。

ちなみにレチノール活性当量のみとなっており、プロビタミンAは含んでいません。

推奨量は以下になります。

  • 18歳~29歳 650μgRE
  • 30歳~49歳 700μgRE
  • 妊娠後期 +80μgRE
  • 授乳婦 +450μgRE

妊娠初期と中期はまだ赤ちゃんが小さいので、プラスするほど必要ではありません。妊娠後期、授乳婦になると赤ちゃんの成長分も必要になってくるのでプラスで摂る必要があります。

ただ、これでは現状どれだけビタミンAが摂れているのかわかりませんよね。そこで、厚生労働省が発表している「平成28年国民健康・栄養調査結果の概要」を参考に大体どれぐらい摂れているのか確認してください。

  • 15歳~19歳 450μgRE
  • 20歳~29歳 459μgRE
  • 30歳~39歳 484μgRE
  • 40歳~49歳 465μgRE

女性が摂取しているビタミンAの平均摂取量は上記になります。推奨量と比べると「約250μgRE」足りていないことが分かります。

耐容上限量(2700μgRE)を超えないように、もう少し摂取量を増やしていきましょう。不足と過剰摂取は健康に悪いので、バランスよく摂ること心がけてください。

意外と推奨量を満たせている人はいないんだね。

ビタミンAは過剰摂取に注目されがちじゃが、そもそも満たすことができていない人が意外と多いのじゃ。しっかりと推奨量を満たすのじゃぞ。

妊娠中に不足するとどうなる?不足しやすい人の特徴

ビタミンAの過剰摂取は有名だけどそういえば不足するとどうなるんだろう。

ビタミンAを不足して欠乏症がでることはほとんどありません。ビタミンAはウナギやレバーなどの動物性食品、ピーマンやニンジンなどの緑黄色野菜どちらからも摂取できます。そのため、心配する必要はありません。

『「統合医療」に係る情報発信等推進事業』によるとビタミンAを欠乏する人の特徴は「早産児、発展途上国の妊娠中・授乳中の女性・乳幼児、嚢胞性線維症(のうほうせいせんいしょう)の患者」です。

早産児は生まれたとき肝臓に十分なビタミンAが貯蔵されておらず、多くの場合1歳になるまでビタミンを欠乏しています。そのとき、眼の病気や慢性の肺の病気などを発症するリスクも高くなっています。

妊娠中期/後期・授乳中の女性は赤ちゃんの成長のためと、自分の健康を維持するために普段よりも多くビタミンAが必要じゃ。

しかし、発展途上国の人たちはビタミンAを含む動物性食品の入手が難しく、欠乏しています。その結果、妊娠中や授乳中の女性が欠乏し、母子の発病率や死亡率が上昇しています。

嚢胞性線維症(のうほうせいせんいしょう)とは難病指定されている全身性の病気です。全身の分泌液や粘液が濃くなり、感染しやすくなる病気です。この病気によってビタミンAを欠乏するリスクが高くなります。

注意してね!病気や発展途上国の人は、いまいちピンとこないかもしれませんが「早産児」は誰にでもありえます。生まれてくる赤ちゃんがビタミンAの欠乏にならないように、摂取してあげましょう。

不足したときにでる症状

不足して欠乏症が出ることはほとんどありませんが、一応紹介していきます。x

  • 夜盲症(やもうしょう)
  • 眼球乾燥症
  • 感染症(特に下痢や麻疹)
  • 成長不良
  • 貧血

ビタミンA欠乏症になると上記5つの症状があらわれます。夜盲症とは暗がり、暗闇などになると視力に障害が発生し、目がよく見えなくなる病気です。

早産児もなりやすい眼球乾燥症とはいわゆるドライアイのことで、目が乾燥することによって痛みや、ゴロゴロするなどの違和感がでてきます。

ここでワンポイント感染症や夜盲症にならなくとも、不足していると貧血や赤ちゃんが成長不良になるリスクはあります。そのため、過剰摂取は心配かもしれませんが「摂取しない」というのはやめましょう。

妊娠中に過剰摂取するとどうなる?

ビタミンAは脂溶性ビタミンの一種で、過剰になった分は尿として排出される水溶性ビタミンとは違い、肝臓などに蓄積されていくのです。そのまま蓄積されていくと過剰症を招く恐れがあります。

過剰摂取には一度に大量にビタミンAを摂取した「急性」と、過剰の量を長期的に摂取し続けて起こる「慢性」の症状があります。それぞれ紹介していきます。

急性になると脳圧亢進(のうあつこうしん)という脳の圧力が上昇します。それによって起きる症状は以下です。

  • 頭痛
  • 嘔吐
  • 視力障害

脳圧亢進(のうあつこうしん)によって上記の症状がでてきます。視力障害の初期は自覚できませんが、だんだんと「目が開けていられなくなる」や「テレビなどの電気の光がまぶしく感じる」などの症状がでてくるのです。

注意してね!その結果、失明することもありえます。脳圧亢進が進行していくと命に関わるので十分に注意しましょう。

ビタミンの栄養によると慢性による症状は以下になります。

  • 成長停止と体重の低下
  • 関節痛
  • 脂肪肝
  • 甲状腺機能の低下
  • 奇形児の発生
  • 骨が弱くなるなどの骨の異常(子供のみ)

脂肪肝とは肝臓に脂肪が溜まっていく病気で、肥満になっていき動脈硬化や糖尿病などの生活習慣病を引き起こすかもしれません。

甲状腺とは首のところにあるもので、体温の調節や脳の活性化、心臓や胃腸の活性化、新陳代謝の促進などの働きがあります。

甲状腺機能が低下することによって、これらがうまく働かなくなってしまうのです。症状としては疲れやすくなったり、いつも寒くなったり、むくみやすくなったり、常に眠たくなったりします。

慢性的にビタミンAを過剰摂取すると「奇形児の発生率が上がる」だけではなく、脂肪肝や甲状腺機能の低下なども引き起こす可能性があります。過剰摂取には十分に気をつけましょう。

ビタミンAを過剰摂取すると、こんなにも症状がでてくるんだね。

すべての症状が一気に出てくるわけではないが、どれも大変なものじゃ。過剰摂取に気をつけるのじゃぞ。

ビタミンAを多く含む食材

文部科学省の「食品成分データベース」を参考に「レチノール」と「β-カロテン」それぞれ多く含む食品を紹介します。(※すべて100gあたりの数値となっています)

レチノール

  1. 豚(スモークレバー) 17000μg
  2. 鶏(肝臓・レバー) 14000μg
  3. 豚(肝臓・レバー) 13000μg
  4. アンコウ(肝) 8300μg
  5. うなぎ 8200μg

過剰摂取を起こしやすい「レチノール」は主にレバーに多く含まれています。そのため、レバーの食べすぎには十分に注意してください。

β-カロテン

  1. トウガラシ 14000μg
  2. しそ 11000μg
  3. モロヘイヤ 10000μg
  4. ニンジン 9900μg
  5. ほうれん草 7600μg

β-カロテンは調節されるので食べても過剰摂取になることはありません。ただ、妊娠中に不安なまま食べても、反対に体に悪いのでいつもどおりの量ぐらいにしておくか、少し足すぐらいにしておきましょう。

ビタミンAを摂取するには何がおすすめ?

過剰摂取が心配なビタミンAですが、何から摂るのが一番かというと「β-カロテン」です。

ビタミンAの過剰摂取による健康障害は、主にサプリメントまたは大量のレバーなどを摂取したものから報告されています。

そのため、緑黄色野菜などに含まれる「β-カロテン」の摂取をおすすめします。葉酸サプリを選ぶときは脂溶性ビタミン(ビタミンAなど)を確認してから購入するようにしましょう。

まとめ

ビタミンAはバランスが大事な栄養素です。摂りすぎも不足も、どちらもお腹の赤ちゃんに悪い影響を及ぼすかもしれません。

摂取するとき「レチノール」は過剰摂取になるかもしれませんので避けたほうがいいでしょう。ただ、レバーが大好きな人もいると思います。どうしても食べたいのであれば、我慢は余計に駄目なので、月に数回程度にしておきましょう。

レバーを食べた後は少しの間「レチノール」の量を減らすようにしてみよう。

ビタミンAに限らず、バランスのよい食事を摂るように意識して、必要摂取量を満たせるようにしていきましょう。

何度も言いますが、ビタミンAが含まれたサプリメントを服用している方は過剰摂取に注意してください。