妊娠を望んでいる女性にとって卵巣の病気は気になりますよね。今回解説していくのは卵巣にできる病気の一つ「卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)」です。
卵巣嚢腫のほとんどは良性ですが、放置しておくと危険な可能性もあります。ぜひ、卵巣嚢腫とはどんな病気なのか確認してください。
卵巣嚢腫とは?卵巣腫瘍と何が違う?
卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)と検索すると「卵巣腫瘍(らんそうしゅよう)」も一緒に出てきますよね。
これらは一見同じように見えますが卵巣嚢腫とは、卵巣腫瘍の一種なんです。卵巣腫瘍には大きく分けて2つあり、一つが「充実性腫瘍」。もう一つが「卵巣嚢腫」です。
卵巣嚢腫とは「卵巣内に脂肪などの液状成分が溜まってしまい、やわらかく腫れた状態」のことをいいます。卵巣嚢腫には種類があって、その種類によって溜まる液状成分は違います。(種類は後述しています。)
卵巣嚢腫の大きさはさまざまで、親指ほどのサイズである卵巣が肥大するとこぶしサイズ、もしくはそれ以上に大きくなることもあります。
卵巣腫瘍の内およそ80%は卵巣嚢腫でほとんどが良性です。しかし、まれに悪性の場合もあるので十分な注意が必要です。
腫瘍と聞くと若い方は自分とは無縁なイメージを持ってしまうかもしれませんが、卵巣嚢腫は若い方にも多く発症する病気なので気をつけてください。
たしかに、自分が卵巣嚢腫できるイメージはないなー
最近は若い人にも多く発症しているから気をつけるのじゃぞ。
卵巣嚢腫に種類がある?
卵巣腫瘍(らんそうしゅよう)の一つである卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)は溜まった液状成分の種類によって、さらに4つに分けることができます。
以下の4つが卵巣嚢腫の種類になります。(参照:みどりぎ皮ふ科婦人科「卵巣嚢腫」)
- 漿液性嚢腫(しょうえきせいのうしゅ)
- 粘液性嚢腫
- 皮様嚢腫(ひようのうしゅ)/類皮嚢腫(奇形腫)
- 卵巣チョコレート嚢腫
漿液性嚢腫(しょうえきせいのうしゅ)
漿液性嚢腫とは、卵巣から分泌される”漿液”というたんぱく質を多く含んだ粘性の低い液が溜まってできたものです。
思春期以降の10代~30代の女性によく見られ、腫瘍の中でもとくに発症頻度が高くなっています。
粘液性嚢腫
粘液性嚢腫は卵巣内に粘性の高いゼラチン状の粘液が溜まってできたものです。肥大しやすく、放置しているとかなり大きくなります。閉経後の女性に多く見られます。
皮様嚢腫/類皮嚢腫(奇形腫)
歯や毛髪、脂肪などの組織を含んだドロドロした塊が溜まって、胚細胞にできたものです。これは卵巣の両方に起こる可能性もあります。
20代~30代の女性に多く見られ、まれに閉経後にがん化することもあります。
卵巣チョコレート嚢腫
卵巣チョコレート嚢腫とは子宮内膜症の一つでもあります。「子宮内膜症」とは本来子宮の中にあるはずの子宮内膜が卵巣に発生する病気です。
子宮内膜や血液が変色することで文字通りチョコレート色になります。それが名前の由来でもあります。この嚢腫は30代~40代の女性に多く見られます。40代を過ぎてくるとがん化するリスクもでてきます。
卵巣嚢腫の症状とは?
卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)は基本的に腫瘍が小さいと自覚症状がないことがほとんどです。そのため、日常生活に支障がでず、気づかないままの人もたくさんいます。
しかし、腫瘍の根っこの部分がねじれている茎捻転(くきねんてん)を起こしていると腫瘍が小さくても急激な腹痛や吐き気を起こすことがあります。最悪の場合は破裂するかもしれません。そうなると緊急手術が必要です。
小さいときに気づけた人の多くが、別のことで内科などを受診したときです。中にはスカートやパンツのウエストがキツくなり、異変を感じて受診し、気づいた方もいます。
ただ、そうやって気づく方は少なく、ほとんどが太ってしまったという思い込みでそのままにしておく人がほとんどです。
卵巣嚢腫のほとんどが良性ですが、少なからず悪性の可能性もあります。そのため、以下の症状を確認して当てはまってることがあれば一度診てもらったほうがいいでしょう。(参照:総合南東北病院「卵巣の腫瘍」)
- 下腹部が膨らんだ感じがする
- 下腹部に痛みもしくは違和感がある
- 腰痛
- 他の臓器への圧迫による頻尿もしくは便秘
- 不正出血や無月経の生理不順
卵巣嚢腫ができる原因・発症率
卵巣嚢腫ができる原因ですが、残念ながら原因はわかっておりません。腫瘍ができる卵巣はもっとも腫瘍が発生しやすく、さまざまな種類のものができます。
卵巣は排卵が起きるたびに負担がかかり、傷つき治るというのをくり返しているのです。その結果、腫瘍ができているのではないかと考えられています。
実際に近年、卵巣や子宮などにトラブルを持った女性がどんどん増加してきています。その原因は女性の晩婚化、出産回数の減少などによって、排卵回数が増加しているからだといわれています。
原因はわからないんだ…
残念なことに考えられる原因が多すぎてわからないのじゃ。発見を早くするためにも定期的に健診に行くことが大切じゃぞ。
発症率について
卵巣嚢腫の発症率について調べてみたところ、徳島新聞が行っている健康相談「卵巣嚢胞と診断された」によると女性の発症率は生涯で5%~7%程度だと説明されていました。
徳島大学の医師が答えているので信憑性は高いと思いますが、発症率についての情報がこれ以外には見つからず、本当に5%~7%程度かどうか判断できませんでした。
卵巣嚢腫の検査内容と治療方法
何も知らないまま検査と治療に行くのは心配で少し怖いですよね。そこで、卵巣嚢腫の検査方法と治療法を解説していきます。
卵巣嚢腫の検査方法とは?
卵巣腫瘍は腹部を触診するか内診、超音波検査(エコー検査)で診断します。この検査によって卵巣の状態、大きさや形、他の部分と癒着していないかなどを診ます。
さらにMRIやCTも併用して子宮や膀胱、直腸などの卵巣周りの他臓器に影響は及ぼしていないか、腫瘍内部の確認、リンパ節は腫れていないかを観察します。それで良性か悪性かを判断します。
腫瘍マーカーという物質を測定して診断の補助に用いることがあります。腫瘍マーカーとは腫瘍が存在することによって血中に増加する物質です。
卵巣嚢腫の治療内容とは?
卵巣嚢腫の治療はその腫瘍の大きさや種類によって変わります。治療を行う腫瘍の大きさに明確な基準はないため、医師と相談して決める必要があります。
病院によって治療を行うのは5cmや7cmと違うのできちんと確認しておきましょう。病院ごとに決められた大きさを超えると、茎捻転や破裂の危険性があるため症状がなくても治療を行います。
大きさがそれよりも小さく症状がなければ、そのまま経過観察となって、何ヵ月後かにもう一度検査をすることになります。
治療方法は基本的に「卵巣内の嚢腫だけを取る」「片側の卵巣を取る」「卵巣と卵管を取る」のどれかです。
卵巣は妊娠するためにはとても大切な臓器なので、摘出方法は自分の意思を可能なかぎり反映してもらうことができます。そのため、医師と綿密に相談を重ねて決定しましょう。
手術による入院期間はどれくらい?
手術をするということになれば仕事をしている人はその分休む必要があるので、入院期間も気になりますよね。
入院期間ですがこれは病院によって違ってきます。3泊4日の病院もあれば、5泊6日の病院もあります。
私が見ているかぎりでは1週間を超える入院はなさそうでしたが、上記のように病院によって期間数がまったく違うので、どれくらいの期間、入院するのか事前に聞いてみるといいでしょう。
高額療養費制度を利用しよう
治療をするにあたって必ず確認してほしいのが「高額療養費制度」です。(参照:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆様へ」)
高額療養費制度とは、医療機関や薬局の窓口で支払った金額が、月のはじめから終わりまでのひと月で上限額を超えた場合に、その超えた金額を支給してもらえる制度です。
例:30代女性で年収約370万~770万だと上限額は「80,100円+(医療費-267,000)×1%」になります。
仮に医療費が100万円したとすれば、ひと月の自己負担の上限金額は「80,100円+(100万円-267,000円)×1%」=「87430円」となります。
窓口で払う金額は3割なので100万円の3割負担30万円になります。ひと月の自己負担額「87430円」を超えているのでその差額分が支給されます。つまり、30万円-87,430円=「212,570円」が支給されます。
ひと月の上限額は年齢や所得によって違ってため、一度自分が加入している公的医療保険に問い合わせてみてください。
公的医療保険の確認方法は保険証に表記されているものを確認してみてください。表記されているものにあわせてお問い合わせしてください。
保険証に表記されている公的医療保険 | お問い合わせ先 |
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○○健康保険組合 | 記載されている保険者様 |
○○共済組合 | |
全国健康保険協会 | |
○○国民健康保険組合 | 国民健康保険組合 |
市区町村名 | 市区町村の国民健康保険の窓口まで |
卵巣嚢腫のチェックリストで確認
卵巣嚢腫は自覚症状がほとんど現れないため、気づくことが大変難しくなっています。また、違和感があるものの放置をする人も少なくはありません。
しかし、放置しておくと腫瘍はどんどん大きくなっていきます。その結果、茎捻転や破裂となって下腹部に激痛が走り、緊急手術となってしまうかもしれません。
そうならないためにもチェックリストを使って確認してみてください。チェックリストは以下になります。
- 体重は増えていない、そこまで増えていないのに下腹部が膨らんでいる
- 下腹部に痛み、または腰に痛みがある
- 下腹部を押して触ってみるとしこりのようなものがある
- 突然、生理不順になった
- 便秘もしくは頻尿になった
まとめ
卵巣嚢腫はとても気づきにくい腫瘍ですが、茎捻転や破裂する可能性があるため早期発見しておくことが大切です。早期発見のためには定期的な健康診断が確実です。
卵巣腫瘍のほとんどが良性ですが、まれに悪性の場合もあります。また、種類によっては、がん化する可能性があるため注意しなければいけません。
症状はほとんど自覚できないのですが、大きくなってくると体重が増えていないのに下腹部が膨らんできたりします。さらに進行すると便秘や頻尿、生理不順になる可能性もあります。
その他にも腰痛などの症状もあるのですが、一つだけ当てはまっていても正直検査に行きづらいでしょう。
その場合は他に当てはまるものがないかよく考えてみてください。できれば一つでも当てはまったら診てもらうのがよいのですが、二つ当てはまったら診てもらったほうがいいでしょう。
何もなければそれで安心できますし、他の病気や何かを早期発見できるかもしれません。卵巣嚢腫が目的というよりも健康診断と思って診てもらいましょう。
- 卵巣嚢腫は卵巣腫瘍の一種でほとんどが良性
- 卵巣嚢腫は自覚症状がなく気づきにくい
- 卵巣嚢腫の原因は分かっていない
- 早期発見することが大切
- 治療をする際には高額療養費制度を利用する