妊娠中は摂取する食品、サプリメント、医薬品に特に注意が必要です。その理由として、妊娠中に摂取する栄養素は胎児に直接影響を与える可能性があるからです。
きっと元気な赤ちゃんが生まれるよう心から願っていると思います。そうであれば健康になおさら気をつけたいものです。
妊娠中に摂取するのを制限したいものの一つにカフェインがあります。カフェインは身近な食品に含まれているので、知らず知らずのうちにカフェインを摂取していたということもあり得ます。
例えばコーヒー、紅茶、日本茶にもカフェインが含まれています。チューインガムやコーラなどの清涼飲料水にもカフェインが含まれています。
ですから妊婦は特にカフェインの摂取に注意が必要になります。具体的にカフェインをどの程度控える必要があるのでしょうか。実例を交えながら正しく理解することはとても大切です。
カフェインに関する正確な知識を身につけて妊活を成功させましょう。
カフェインってなに?どんな働きをする?
カフェインと言えばコーヒーや紅茶、緑茶などに含まれる成分だということは良く知られていますが、そもそもカフェインがどんな働きをするのかというのはおそらくなかなか考える機会がないかもしれません。(参照:国立健康・栄養研究所「カフェイン」)
カフェインというと、眠気覚ましというイメージを持っている方も多いと思います。確かにその通りで、カフェインには眠気を抑え神経を覚醒させる効果があります。
具体的にはアデノシン三リン酸と呼ばれる神経伝達物質が眠気と関係があるのですが、カフェインはアデノシンの分泌を妨げることにより眠気を低減させることができます。
他の働きとして、カフェインは痛みを和らげる効果があります。例えば、解熱鎮痛剤にはイブプロフェンなどの痛みを遮断する成分が含まれますが、同時にカフェインも含んでいます。
その理由として、カフェインには血管の収縮を促進する働きがあり、痛みを抑える効果があるからです。
コーヒーや紅茶を飲むとトイレが近くなります。その理由はカフェインの利尿作用が関係しています。カフェインには腎臓に働きかけ、尿の排出を促す効果があることが知られています。そのため尿路結石などにも効果があるのです。
他にもカフェインには交感神経を活発化させる効果があります。交感神経が刺激を受けることで血管が収縮し、血流をコントロールできるようになります。つまり血流を適正に保つ効果もあるのです。
カフェインって眠気覚まししか働きがないと思ってたけど、ほかに3つも働きがあったんだ!
そうじゃよ。カフェイン=眠気覚ましをイメージする方も多いじゃろうが、実は上記のような働きももっているのじゃ。だからこそ、摂取には気をつけないといけないのじゃ。
妊娠中・授乳中にカフェインの摂取はNG?
妊娠中や授乳中にカフェインを摂取することは控えたほうが良いと言われます。カフェインにはいくつもの効能があることがわかっていますが、なぜ妊婦や授乳中の方は控えたほうが良いのでしょうか。その理由はカフェインと母体との関係にあります。
赤ちゃんができるメカニズムというのは非常に神秘的で、目を見張るものがありますが、精子と卵子が結合し受精することで胎芽が形成されるようになります。
胎芽ができるようになるまでには10週間ほどの期間がかかりますが、この間に必要な栄養素がどんどん子宮内に送り込まれます。
カフェインも例外なく子宮内の胎児に送り込まれることを忘れてはいけません。カフェインには覚醒作用があることは既に述べましたが、小さな胎児がカフェインを採るとどうなってしまうのでしょうか。
カフェインによる興奮作用と覚醒作用が同時に起こるため、胎児は興奮状態に置かれます。
本来成長には穏やかな環境が必要不可欠なのですが、それが阻害されるので避けたほうが良いと言われているのです。
妊娠中にカフェインを摂取するとどうなる?
妊娠中にカフェインを摂取した場合、どのような影響が生じるのでしょうか。このことを理解するためにはカフェインの効果をまず知ることが必要です。
カフェインには交感神経に働きかけ、血管を収縮させる働きがあります。血管が収縮することで、頭痛などの痛みが軽減されます。
妊婦や授乳中でなければこのことは悪いことではなく、むしろ頭痛を和らげるのですから、歓迎すべきことになるのですが、妊娠中や授乳中はというと状況は変わってきます。
例えば妊娠中、お母さんと赤ちゃんとはへその緒でつながっています。
へその緒を通じて母体から胎児に定期的に栄養素が送り込まれています。栄養素が適切に送り込まれるなら、赤ちゃんは健やかな成長を遂げていくわけですが、カフェインを摂取するとその状況が一変します。
血管が収縮し血流が阻害されることで、赤ちゃんへ送られる栄養がストップしてしまうのです。
そうなると胎児にはどんな影響が生じるのでしょうか。栄養がストップするわけですから、当然のこととして、赤ちゃんの成長が阻害されます。
結果的には発育障害や低体重の赤ちゃんが生まれる恐れが生じます。最悪の場合早産や死産を招くこともあるのです。
カフェインを摂取することは赤ちゃんに重大な影響を及ぼすことがわかります。このことを考えると、カフェインは避けたいと思うはずです。
他にも、カフェインは母体から胎児へ送られます。実は胎児はカフェインを排出することができないため、カフェインが溜まり続ける結果になります。
そうなると神経系を興奮させてしまうため、赤ちゃんは異常な興奮状態になり、生命の危険が生じる可能性さえあります。カフェインの恐ろしさがよく分かるはずです。
産後・授乳中にカフェインを摂取するとどうなる?
妊娠中のカフェイン摂取が危険であることは既に説明した通りです。産後期や授乳期はカフェインを摂取しても大丈夫なのでしょうか。
母乳に与える影響などを確認しておくなら、産後授乳期のカフェインコントロールに役立ちます。
まず考えなければいけないのがカフェイン摂取による母乳への影響です。赤ちゃんを母乳で育てたいと考えるママは多いと思いますが、カフェインというのは容易に体内に吸収されるため、母乳内にも取り込まれるということを覚えておきましょう。
実際にどれくらいの量のカフェインが母乳に取り込まれるのでしょうか。
カフェイン摂取と母乳に関する研究によると、カフェイン摂取による母乳への吸収率は約1%程度です。
つまりカフェインを摂取すると、その一部が血液を介して母乳に取り込まれるため、赤ちゃんがカフェインを摂取する結果になってしまいます。
カフェインの効果は大人が摂取した場合、それほど強くはありませんが、体が小さい赤ちゃんはカフェインを少しでも摂取すると、人体に計り知れない影響が及びます。
赤ちゃんに必要な睡眠がカフェイン摂取により妨げられるため、成長が鈍化する恐れがあるのです。
赤ちゃんがカフェインを摂取した場合、どれくらいの期間を経て排出されるのでしょうか。大人がカフェインを摂取したとしても、その日のうちにカフェインを排出してしまいますが、赤ちゃんはそうはいきません。
なんと排出するのに3日もの期間が必要になるのです。産後・授乳期は赤ちゃんにカフェインを吸収させないよう注意することがとても大切だということがよく分かります。
カフェインを摂取しても母乳には1%しか含まれないのに危険なんだね…。
1%というと少なく感じてしまうしまうかもしれんが、赤ちゃんはカフェインを排出するのに時間がかかるから、その1%がどんどん溜まっていくのじゃ。そのため、成長が鈍化するかもしれないのじゃよ。
妊娠中・授乳期にカフェインを摂取しても問題ない量はどれくらい?
妊娠中・授乳期のカフェイン摂取は、胎児や赤ちゃんに悪い影響を与えてしまいます。
もちろんカフェインをすべて避けることができれば一番良いのですが、知らず知らずのうちにカフェインをとってしまうということは起こり得ます。
妊娠中や授乳中の方がカフェインを摂取した場合、どれくらいの許容範囲があるのでしょうか。この点で助けになるのがWHO(世界保健機関)の基準です。
妊娠中に摂取しても問題ないカフェイン量
妊娠中は特にカフェイン摂取に敏感になる時期ですが、仮にカフェインを摂取した場合、どれくらいの量であれば母体や胎児に影響を与える心配が少ないのでしょうか。この点でWHO(世界保健機関)による調査報告を参考にしてみましょう。
WHO(世界保健機関)の調査によると、妊婦が摂取しても問題ないとされるカフェインの上限は最大で300mgです。これは最大量ですから、身長や体重によって許容量が異なることを覚えておいてください。
仮に最大許容量のカフェインを摂取した場合、どんなリスクが生じる可能性があるのでしょうか。
この点に関する追跡調査によると、1日当たり100mgを超えるカフェインを妊婦が摂取した場合、体重が少なくなる低体重児になるリスクが100mg以下の人と比較して2倍高くなることがわかっています。
これに比例する形で100mgづつカフェイン摂取量が増えると、低体重児になる確率がそれぞれ2倍を超えるようになります。
このことを踏まえて、問題ないと思われるカフェイン摂取量の最大上限は1日当たり100mgと考えるとよいでしょう。但しこれは最大であって、ここまで飲んでも大丈夫というわけではありません。
産後・授乳中に摂取しても問題ないカフェイン量
妊娠中のカフェイン摂取量の上限は既に説明した通りですが、産後・授乳期の場合、どれくらいの量であれば、カフェインを摂取しても問題ないのでしょうか。
カフェイン摂取量については個人差があるため、どれくらいまでという基準を立てにくいことをまずは覚えておいてください。
産後・授乳期のママがカフェインを摂取した場合、やはり心配なのが母乳を介して赤ちゃんがカフェインを摂取してしまうということです。
これを回避するためには、カフェインは全くとらないようにする以外に方法がありません。
ところで産後・授乳期のカフェイン摂取量に関して、公的機関はどのような見解を示しているのでしょうか。
WHO(世界保健機関)の調査報告によると、産後・授乳期のママが摂取しても良いとされるカフェイン摂取量の上限は妊婦と同じで最大で300mgです。
但しすでに出産を終えているため、胎児に与える影響と比較すると、赤ちゃんへの影響度は若干低くなります。
そのため産後・授乳期は少しならカフェインを含む飲料を飲んでも構わないのではという考えになるかもしれません。
やはり摂取は適度にした方が良いのですが、目安としては最大で100mg程度にしておくのが無難です。これを超えると、赤ちゃんの成長を妨げる恐れが出てきます。
最大で300mgやら、目安量としては100mgと言われてもわからない。どうしたらいい?
そうじゃな。含有量というのは普段あまり気にしないだろうしよくわからないだろう。次にカフェインを多く含む食品と含有量を紹介していくからそれを参考にするといいじゃろう。
カフェインを多く含む食品を紹介
妊娠中、産後期および授乳期のカフェインコントロールを適切に行うためには、カフェインを含む食品をよく選ぶことが大切です。
カフェインを含む食品を避けることで、カフェインの摂取による胎児や乳児への悪影響を未然に防げます。
カフェインという言葉を聞くとだれもが想像するのがコーヒーやお茶などの飲み物だと思います。
もちろんこれらの飲み物にはカフェインが含まれているのですが、具体的にどれくらいの量が含まれているのか、万一飲んでしまった場合、何杯までなら大丈夫なのかを把握しておくとよいでしょう。
※これから紹介していくものは食品安全委員会「食品中のカフェイン」を参考にしています。
「コーヒー」
カフェインを多く含む食品と聞いて、ほとんどの方が連想するのがコーヒーだと思います。
コーヒーはカフェイン含有量が多く、眠気覚ましとして、あるいは集中力を高めるために飲まれる方も多いのではないでしょうか。
コーヒーにはどれくらいのカフェインが含まれるのかというと、ドリップコーヒー1杯当たりのカフェイン含有量は平均で90mgと言われています。
これはいわゆるレギュラーコーヒーを指しますが、コーヒー豆の焙煎方法によってカフェインの含有量が異なります。
カフェインが特に多いのが深煎りコーヒーです。コクがあり飲みごたえがありますが、カフェインはアメリカンコーヒーの1.5倍以上含まれています。
具体的な数値で言うと、カップ1杯当たり約130mgのカフェインが含まれる計算になります。
「インスタントコーヒー」
手軽にコーヒーを飲めるので利用する機会が多いのがインスタントコーヒーです。
インスタントコーヒーはドリップコーヒーを乾燥させたものですから、カフェインはドリップコーヒー同様含まれています。ただしドリップコーヒーと比較するとカフェイン含有量は少ないようです。
インスタントコーヒーに含まれるカフェイン含有量は10g当たりおよそ60mg含まれています。
10gというのはコーヒーカップ1杯分の目安になる量で、平均するとこの程度のインスタントコーヒーでコーヒを作るのが一般的です。
飲んでも差し支えないと思われる最大量はコーヒーカップ1杯分と考えてください。
授乳中の場合も100mg以下に抑えるのが理想ですが、WHO(世界保健機関)は1日200mgまでであればカフェインを摂取したとしても健康に大きな被害が出る恐れは少ないと報告しています。
この基準で考えると1日当たりの最大量は、多くてもコーヒーカップ2杯分程度に抑えたほうが無難です。
「紅茶」
妊娠中や授乳期に紅茶を飲みたくなることがあるかもしれません。既に説明した通り、妊娠中や授乳期はカフェインをしっかりコントロールすることが大切です。
カフェインをとりすぎてしまうと、胎児に重大な影響を及ぼす可能性があり、乳児にも悪影響を与える可能性が高いからです。
ところで紅茶を仮に飲みたくなった場合、やはり気を付けなければいけないのがカフェイン含有量です。
紅茶1杯当たりのカフェイン含有量はWHO(世界保健機関)の調査によると、ティーカップ1杯(180ml)当たり30mgという結果が出ています。
妊婦の場合、1日当たりのカフェイン摂取量の最大値は100mgですから、ティーカップ2杯分の紅茶を飲んだとしても、安全性に問題は少ないことがわかります。
もちろんできるだけ取らないに越したことはないのですが、どうしても紅茶を飲みたくなってしまった場合は2杯以下に抑えることをお勧めします。
「せん茶」
食事の時やおやつ時にせん茶を好んで飲む方は多いです。日本人にとってせん茶をはじめ緑茶はなくてはならない飲み物です。
とても身近な飲み物ですが、妊娠中や授乳中の方は緑茶に含まれるカフェインに注意しなければいけません。
せん茶に含まれるカフェインの量はどれくらいなのでしょうか。
研究機関による調査によると緑茶(せん茶)1杯当たりに含まれるカフェインは20mgという数値が公表されています。コーヒーの約4分の1、紅茶の約3分の2のカフェイン含有量です。
せん茶以外にも抹茶や玄米茶、玉露などがありますが、茶葉の種類や発酵方法によってカフェインの含有量は変わってきます。
妊娠中の場合、カフェインの最大上限は1日当たり100mgですが、せん茶に含まれるカフェイン含有量を考えると一日3杯程度までであれば許容範囲です。授乳中の場合はその倍の6杯程度まで飲んでも問題ないでしょう。
まとめ
カフェインはコーヒーや紅茶、緑茶などはわたしたちの普段の生活でごく普通に飲まれているものですが、妊婦や授乳中の方は摂取に特に注意を払う必要があります。
カフェインは成人にとっては覚醒効果や鎮痛効果があるものの、胎児や赤ちゃんには良くない影響が及んでしまいます。
例えば妊娠中にカフェインを摂取すると、低体重児(未熟児)が産まれたり、ダウン症などの障害を持った赤ちゃんが産まれたりする可能性があります。
できれば健康で元気な赤ちゃんを産みたいというのがママたちの気持ちではないでしょうか。
授乳中のママたちにも同じことが言えます。授乳中にカフェインを摂取すると、母乳にカフェインが流れ込んでしまうので、赤ちゃんにはあまり良くありません。
健康を害してしまう可能性もあるので、できるだけ抑えたいと思うはずです。
記事の中でも一日に摂取できる最大容量について触れましたが、これはあくまで目安なので、体重や体質を考慮して適時調整することをお勧めします。
時にはコーヒーや紅茶を楽しみたくなるかもしれません。そのようなときはデカフェやカフェインフリータイプの紅茶を試してみるのはいかがでしょうか。
仮にカフェイン入りの飲料を飲まれる場合には適正容量をしっかり守って飲むようにしましょう。
- カフェインは覚醒効果などの働きがある成分
- 妊娠中に摂取すると発育障害や低体重のリスクが増加する
- 授乳中に摂取すると母乳へと影響し、赤ちゃんの発育に影響するかも
- カフェインはコーヒー以外にもお茶や紅茶にも気をつける