女性だけに見られる病気の中でもとくに多い「子宮筋腫」を知っていますか。発症率が高いのに対して症状が現れにくく、とても気づきにくい病気です。
今回はそんな子宮筋腫の症状や原因、治療法について解説します。症状から自分は子宮筋腫ではないのか今すぐ確認してください。
子宮筋腫とは?
子宮筋腫とは子宮の色々な所に良性の腫瘍ができる病気です。この病気は女性特有の病気の中でも発症率は高く、成人女性の4人~5人に1人は子宮筋腫だといわれています。
成人女性でもとくに30代~40代に多く見られます。しかし、最近では20代で発症する人も増えてきたので注意しましょう。
発症率が高く、腫瘍と診断されると心配になるかもしれませんが子宮筋腫は”良性”の腫瘍ですので悪性とは違い、他に転移することはありませんし命に関わることもありません。
しかし、そのまま放置していると腫瘍は10kgを超える大きさになることもあるので、定期的に診察を受けておく必要はあります。
また、子宮筋腫は大きなっていくだけではなく、数は1個だけではなく数個できることもあります。大きさや場所、数によって症状が違い、人によっては自覚症状がないまま終えていく人もいるほどです。
(参考サイト:日本産科婦人科学会「子宮筋腫とは」)
発症率が高いけど気づきにくいんだね…
そうじゃ。30代~40代に多いのじゃが、最近では20代も増えてきてるから注意するんじゃぞ。
子宮筋腫の種類は「3つ」
子宮筋腫は子宮の一部にできる腫瘍ですが、子宮のできる場所によって名前が違うのです。
子宮の内側にできたのを「粘膜下筋腫」、子宮の筋肉の中にできたのを「筋層内筋腫」、子宮の外側にできたのを「漿膜下筋腫(しょうまくかきんしゅ)」と呼びます。
粘膜下筋腫について
粘膜下筋腫とは子宮の内膜に向かってできる筋腫で、月経時に出血量が多くなる、月経期間が長くなる、月経時以外でも出血するなどの症状がでます。
他の2つに比べて発症率はかなり低いのですが、小さなサイズでも症状がでやすく、発症した場合もっとも症状がでやすいと言われている筋腫です。
筋層内筋腫について
筋層内筋腫とは子宮の筋肉である平滑筋という細胞にできる筋腫で、月経量の増加や月経不順の原因などの症状がでます。
子宮筋腫のほとんどが筋層内筋腫といわれていて、およそ70%近く占めているといわれるほど、発症率が高いです。
大きさはバラバラで豆粒サイズの人から握りこぶしぐらいのサイズまでさまざまです。筋腫が小さいときはほとんど症状に気づくことはなく、大きくなってから気づく人が多いので、異常を感じたら注意しましょう。
漿膜下筋腫(しょうまくかきんしゅ)
漿膜下筋腫(しょうまくかきんしゅ)とは子宮の最も外側にある漿膜にできる筋腫のことをいいます。筋層内筋腫に次いで発症率が高いのが、この「漿膜下筋腫」です。
他の筋腫とは違って月経の増量などの症状が現れにくいため、大きくなるまで気づきにくくなっています。
子宮筋腫による症状
子宮筋腫は種類によって症状が違いますが、主な症状をまとめて説明していこうと思います。どれか当てはまるものがあれば子宮筋腫を疑ったほうがいいでしょう。
- 月経痛
- 月経量の増加
- 月経期間が長引く
- 不正出血
- 貧血
- 頻尿または便秘
- お腹のしこり
月経量の増加や期間、痛みなど今までとは違っていた場合、腫瘍が大きくなって症状がでてきているのかもしれません。注意が必要です。
貧血は不正出血や月経量の増加によって起きるかもしれません。立ちくらみをした、めまいがする、疲れやすいなどの症状がでたときは貧血を疑いましょう。
子宮筋腫は妊娠に悪影響を及ぼすかも…
子宮筋腫は命に関わることはありませんが、放置して大きくなると妊娠に悪影響を及ぼすかもしれません。
妊娠したときにはじめて子宮筋腫が発見されることもあります。反対に子宮筋腫が合併したまま妊娠が進んでも何も起こらないこともありますし、流産や早産、逆子、胎盤早期剥離なども起こりえるのです。
妊娠していないときでも子宮筋腫によって子宮の形がゆがみ、着床しづらく不妊症になるといわれています。
今は大丈夫でも後になって不妊症や妊娠に悪影響を及ぼすかもしれません。しっかりと対策しておく必要があります。
子宮筋腫って赤ちゃんにまで影響するんだね。
そうじゃ。しかも症状だけでは気づきにくいから、きちんとの症状の確認が必要じゃ。
子宮筋腫ができる原因は?予防法について
子宮筋腫ができる原因と予防法について解説していきます。まずは何が原因で発症するのか知っておく必要があります。その後予防方法についても解説していきますので、ぜひチェックしてください。
子宮筋腫の原因
子宮筋腫の原因は残念なことに現在判明していません。ただ、現状もっとも有力なのは「ホルモンのバランス」だと考えられています。
子宮筋腫は女性ホルモンによって大きくなり、閉経後になると小さくなっていくため、ホルモンと大きく関係しているのではないかと考えられているのです。
子宮筋腫の予防法
子宮筋腫は原因がわかっていないため予防をするのが大変難しくなっています。子宮筋腫は転移したり、命に関わることはほとんどないので無理に予防しなくていいでしょう。
実際に子宮筋腫ができたとしても小さければ除去はせず、経過観察するのがほとんどです。腫瘍がドンドン大きくなっている、症状が出る場合は治療をしてもらいましょう。
予防をするのは難しいのですが、すぐに診てもらうためにも「月経周期に異常はないか記録をつける」「定期的に健康診断を受ける」「不正出血などの普段と違うことが起きたら、すぐに病院で診てもらう」の3つを意識するといいでしょう。
子宮筋腫がわかる検査・診断
子宮筋腫は基本的には内診と超音波検査(エコー検査)から調べます。わかりづらいなど必要によってはMRI検査も併せて診断することがあります。
これらの診断からどれくらいの多さから大きさか、その疑いがあるかどうかについてわかることができるのです。診断から子宮筋腫がある、あるいは疑いがあると診断された場合、以下の検査どれかを行います。
- 子宮筋腫による貧血はないか「貧血検査」
- 子宮筋腫と合併しやすい子宮内膜症はないか「腫瘍マーカー検査」
- その他にないか「血液検査」
- 「子宮卵管造影検査」
- 粘膜下筋腫の疑いがあるとき「子宮鏡検査」
- がんの可能性があるとき「子宮がん検査」
- 貧血が重症だった場合、異常が出たときわかりやすい「心電図検査」
子宮筋腫の検査は主に上記の検査が行われます。あくまで医師からはすすめられるだけなので断ることもできますし、別の検査にすることもできます。病院によってはできないこともあるかもしれないので一度聞いてみるといいでしょう。
子宮筋腫は人によって様々な違いがあります。そのため、人によっては必要に応じて上記以外の検査がすすめられることがあります。できるかぎり自分の健康を第一に考えて行動しましょう。
検査方法はたくさんあるんだね!
病院によっては上記以外にもあるから、自分が気になる検査方法を選ぶといいぞ。
子宮筋腫の治療法について
子宮筋腫の治療は主に「手術」と「薬物治療」の2種類があります。治療法にはどちらが良くて、どちらが悪いというものがなく、どちらにも良いところと悪いところがあります。
それぞれの治療法について説明していきます。どちらのほうが良さそうか考えておくといいでしょう。
(参考サイト:日本婦人科腫瘍学会「子宮筋腫」)
手術
手術には2つの方法があって「子宮を全部とる手術」と「腫瘍だけとる手術」です。一見、腫瘍だけのほうがよさそうですが、子宮を全部とる手術にも良いところはあります。
子宮を全部とる手術をしてしまうと赤ちゃんができなくなってしまいますが、今後再発する恐れはなくなります。この手術は赤ちゃんを希望しない方で、全部とらないといけない方におすすめです。
腫瘍だけとる手術は腫瘍によって赤ちゃんができにくい方におすすめされます。腫瘍だけをとるので、手術後も出産をすることは可能です。
ただし、腫瘍だけをとるので再発する可能性もあるのです。他に小さい腫瘍があったとしてもとることが難しい場合はとらないこともあります。結果、何年後かにもう一度手術を受けることになるかもしれません。
基本的には子宮筋腫が大きくなりすぎている場合や出血によって貧血が悪化した、腫瘍が原因で発熱、痛みが現れる、不妊の原因になっているときなどに手術が推奨されます。
薬物治療
手術と似たように薬物治療にも2つの方法があります。1つが「更年期(閉経)と同じ状態にしてしまう薬(偽閉経療法)」です。
更年期と同じ閉経状態にすることで、腫瘍を小さくしていきます。治療薬には鼻から吸引する点鼻薬か注射の2種類となっています。
注射のほうが1回の効果が長いのに対して、点鼻薬は毎日使用しないといけません。更年期と同じ閉経状態にすることで女性ホルモンの分泌は減り、腫瘍を小さくすることはできますが、更年期の症状がでる副作用があります。
もう1つが「ピルの摂取」です。ピルを飲むことで腫瘍が大きくならず、症状を楽にすることができます。偽閉経療法よりも効果は薄いのですが、副作用はでにくくなっています。
薬物治療での共通した問題点は「いつまで飲み続けるか」です。手術だと一部をとったとしても当分のあいだ再発することはありません。
しかし、薬物治療だと摂取をやめた途端、すぐに再発をするかもしれません。そこも、考慮してどちらがよいか選択してください。
その他の治療法
手術と薬物治療以外に「UAE法」という治療法があります。UAE法とは子宮に流れている栄養血管を止めることで、子宮筋腫を収縮させる方法です。
UAE法は股の動脈から細いチューブを使うだけなのでお腹を傷つけることはありません。ほとんどの腫瘍は大幅に小さくできます。医師にどれぐらい小さくできそうか相談をしてから決めましょう。
子宮筋腫が小さくなって子宮をとる必要もないので、この治療の後に妊娠できる可能性はあります。病院によっては子宮筋腫が原因の不妊に対してUAE法は推奨していないところもあります。
ただ、良いところだけではなく悪いところもあります。UAE法は治療後に激しい痛みや熱が出ることもあるのです。
それ以外にも多量の出血、再発などの可能性もあります。治療を開始する前にどのような副作用があるのかなどきちんと医師と会話しておきましょう。
UAE法は保険適用外のため、費用が他の2つよりもかかります。詳しい費用については病院によって違うのでお問い合わせをしてみてください。
- 治療法は基本的に「手術」と「薬物療法」
- 手術は「子宮を全部とる」か「腫瘍だけをとるか」選べる
- 薬物療法は「偽閉経療法」か「ピルの摂取」選べる
- 保険適用外の「UAE法」というのもある
まとめ
子宮筋腫は30代~40代の女性に多く見られ、その数は4人~5人に1人といわれるほどです。良性の腫瘍なので転移や命の危険などはありませんが注意は必要です。
そのまま、腫瘍が大きくなると貧血や月経痛、頻尿、便秘などの症状を引き起こすかもしれません。妊活中の方だと不妊の原因にもなって注意が必要です。妊娠中だと逆子、胎盤早期剥離の原因にもなります。
早期発見するためにも不正出血など普段とは違う以上が出た場合はすぐに病院に診てもらいましょう。子宮筋腫だけではなく、他の病気の発見にもつながるかもしれません。